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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
ラブ・カルテット編

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56.七瀬トライアングル③


「比呂、何でひとりなの?」


「え、いや……」


 七瀬と友達じゃなかったのかな。それとも席が離れて、そこには沙奈がいるから近付きたくなくなったとか、そういうことなのだろうか。


「前も言ったけど、俺も七瀬以上に本当は騒ぐのが苦手なんだ。だからだよ。別にあいつのことがどうとか、葛西さんがどうとかそういうのじゃないよ?」


「由紀乃とは食べないの?」


「うん、まぁ、何て言うかまだそこまで踏み込めないんだ。俺の問題でもあるんだけどね」


 そうなんだ。じゃあ、由紀乃への気持ちはあるってことなのかな。


「葛西さんこそ――」

「前から気になってたけど、どうして距離取るの?」


「え? だって、七瀬……」

「んーん、七瀬関係なくて、比呂はわたしと仲良し。違う?」


 何となくだけど、七瀬がわたしを名字呼びにしたのとは意味が違くて、比呂はずっとわたしとの距離感が開いたままなのがどうしても気になった。それって、やっぱり告白のことが関係しているのかな。


「気は使うよ、それはね」

「名前に意識いらないし。だから、綾希と呼んでいいから」


「そ、そっか。仲良し……そう言われればそうだよね。あいつ……沙奈と違って話出来てるし、可能性も残ってるかもしれないし」


「……?」


「ううん、気にしないでいいよ。えっと、綾希さん……で、いい?」


「ん、いい。これでもっと仲良し」


「は、はは……だ、だよね」


 七瀬がずっと気にしていた名前呼び。でも、そんなことに意識なんてする必要はないわけで。でも、今の彼はあえて、わたしの呼び方を使い分けしている。


 今は七瀬と付き合っていないけれど、呼び方を分けている。そのことに何かの考えと想いがあるのかどうかは、わたしにも分からない。名字でも下の名前でも、彼に呼ばれて嫌だと思ったことは無いのだから。


「綾希さん、その、今は付き合ってないって……それはあの……」


「……ん」


「チャンスがあるってことなのかな?」


「よく、分からない。でも、たぶん?」


「あ、あのさ、俺は綾希さんともっと、仲良くなりたいって思ってるんだ。だから、その……誰とも、七瀬とも付き合ってないなら、俺と付き合ってくれないかな?」


 比呂もわたしとの距離を感じて寂しく思っていたのかな? そういうことならそうしよう。


「もっと仲良く? それなら付き合――」


「綾……葛西!! もうすぐ昼が終わんぞ」


 時計塔を見上げたら、もうすぐ予鈴が鳴る時間になってた。そのことを教えに来てくれたのかな。


「あ、ホントだ。七瀬、ありがと。じゃあ、わたし先に行くから。比呂、またね」


「……う、うん。またね、綾希さん」


 やっぱり七瀬も比呂と話がしたかったのかな。こんなギリギリの時間になってまで屋上に来るなんて。わたしと沙奈の関係と違って、男子の友達は違うものなのかな。なんか、羨ましいかも。


「綾希さん……? へぇ? 上城わいじょう。お前、今、あいつに何を言わせるつもりだった?」


「さぁね。お前こそ、何でここに来た? 別れたくせに何で綾希さんの傍にいようとする? あいつと変わらないんじゃないの? 元カレって言ってるさとるって奴と」


「お前に話すことじゃねえし。それに俺は葛西につきまとってなんかいない。だからあんなのと同じにされてもな。友達だし、同じクラスの女子と話くらいはするだろ? お前こそ似たようなもんじゃないのか? それとも、意味すら分かってなかった葛西と付き合えるもんだと思ってたのか?」


「それこそ七瀬には関係ないことだけどな。俺はお前と違う。少なくとも、悲しませて疑わせて、泣かせたりなんかしない。綾希さんに話してないんだろ? 元カノとのこと。俺と彼女がお前に隠してたことなんて、所詮はそんなもん。だけど、お前って元カノのことをはっきりさせてねーじゃん。だから綾希さんを不安にさせたんだよ。言っとくけど、そういう半端な気持ちしてんなら俺が綾希さんと付き合うから」


「うるせーな……悪ぃけど、お前にはぜってぇ、渡せねーよ。想ってる子のことを放置しとく奴に、あいつは渡さない」


「何のことだか知らないけど、はっきりさせてないと説得力ないな。じゃ、俺は行くし」


「……」


 七瀬と比呂とわたしと由紀乃。4人の関係が彼たちの想いとともに、変わって行く予感がした。

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