55.七瀬トライアングル②
昼休み、以前は七瀬とふたりだけで食べていた。だけど、今は由紀乃も加わるようになった。それもあって、七瀬も由紀乃と仲良くなった。大したことを話しているわけじゃないけれど、一緒にいるのがすごく楽しいメンバー。
「今さらだけど、七瀬くんは部活とかやらないの?」
「あぁ、俺は体育とか必ずやらなきゃいけないやつ以外は、やらない派なんだよ」
「わたしも」
「や、あやきちは体育ですらやる気ないじゃん!」
「言えてるな。それにしても泉さんは、葛西のことかなり詳しいんだな」
「いえいえ、あやきちは見てて楽しいですから」
「分かる! それは確かにその通りなんだよ」
わたしのことで、七瀬と由紀乃は意気投合してた。ふたりの共通話題が、ほとんどわたしになっていた。七瀬も由紀乃とは話しやすいらしくて、わたしがいる前ではずっとそんな感じで話をしていた。
比呂はわたしのことで七瀬と話がしづらいらしくて、昼は屋上で食べているらしい。彼は七瀬以上に繊細で、話すことにも気を使ってしまうみたいだった。そんな彼のことを何となく気になってしまったわたしは、彼の所へ行ってみることにした。
「由紀乃、七瀬……」
「ん?」
「どした、あやきち?」
「わたし、比呂のとこ行ってくるから」
「え?」
「ちょっ……あやきち?」
「ふたりはゆっくりしてていいから」
なにかおかしなことを言ったかな。七瀬も由紀乃も驚いたまま、動きが止まってた。わたしはそのまま、屋上に向かっていた。
「七瀬くん、いいの?」
「泉さん、どういう意味で? ってか、話をするくらい別に気にしないし、それ以前に俺は綾……葛西とは付き合ってないし。泉さんこそ大丈夫なの?」
「お、おう。べ、別に話くらいするよね。友達なんだしさ~わたしだって、ヒロくんとはそんなんじゃないわけだし? バイト先でも話が出来るわけですからね」
「そんなんじゃないのに同じバイト始めたくらい好きなんでしょ? 学校では何で近くに行こうとしないの? 俺は好きな奴とはどこでも一緒にいたいって思うよ?」
「あーうん……そ、そうだよねぇ。あ、あはは……明日からそうする。ううん、その前にアレだ。七瀬くんは今すぐにあやきちの後を追いたまえ! 七瀬くんがいないと、あの子はそのまま心を傾けてしまうかもしれないから……だから、頼みます」
「……まぁ、泉さんの気持ちが分からなくも無いけど、いいよ。俺が間に入る。付き合ってないけど、葛西のこと、放っておけないのはホントのことだしな。じゃあ、行くから」
「よろしくー! ……ホント、七瀬くんは嘘が下手だなぁ。それは私もか。似た者同士ってことかな」
七瀬と由紀乃がその後に何を話していたのかは分からないけれど、わたしは屋上にいた比呂に声をかけていた。彼も何でか知らないけれど、わたしに驚いてた。
「葛西さん……? え? なんで?」




