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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
ラブ・カルテット編

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54.七瀬トライアングル①


「葛西、これ、課題のやつ。写し終わったら机の中に入れとけばいいから」


「分かった」


 朝、教室に入るとすぐに七瀬がわたしの所にやって来た。やって来て話すこと、それは頼んでも居なければ頼んだ覚えも無いのに、課題のノートを貸してくれてそれをわたしが写して返す。そのやり取りだった。実のところ、彼とわたしのコミュニケーションはほぼほぼ、これだけだった。


 その光景に由紀乃と比呂、そして沙奈だけは見飽きたようにしてスルーしてくれていたけれど、ウザいほどに納得の出来ない奴がいた。転入直後はウザさの鳴りを潜めていたのに、馴染んで慣れて来たのか、わたしにしつこくするようになっていた。


「綾希、あいつはお前の何だ?」


「そういうあなたは誰ですか?」


「本当にひどい奴だな。そんなに俺が嫌いか? 仮にも元カレなんだぞ?」


「仮であって、本物でない」


「いやいや、それはちげー。ゆずくんに教えてくれませんかね?」


「ゆずくんとはどこのどなた?」


「オ・レ!」


 分かっているけれど、こんなのをまともに真面目に相手していたら、完全に相手の思うつぼ。それくらい、この男はお調子者だから。ホントに、どうしてこんなのと3年以上も付き合っていたのか、未だにわたし自身に問い詰めたい問題。


「何か?」


「あいつ、七瀬って奴! 何でお前にノートを貸してんだ? ってか、お前って勉強してこない女子だったのかよ。課題くらい、自分でやれよ! 中学ん時は真面目系だったはずだぞ?」


「中学? すみません、記憶にないです」


「はぁ? じゃあ俺との思い出も無いとか言い出すんじゃ……」


「ないです」


「この野郎……」


 野郎ではありません。なんて返しをするのはこの男を調子づかせるだけ。いちいち突っかかって来ては、最後まで答えを求めて来る男。それが元カレのさとるという奴だった。中学はそういう細かいとこまでは見ている余裕は無かったのかもしれない。それがコイツを調子づかせた。


「おい、ゆずりはだっけか? お前、女子に向かって野郎は無いんじゃないのか?」


「出やがったな、この七瀬野郎!」


「七瀬だけど、何か用か?」


 朝から騒がしくてウザい男が、何でか知らないけれど七瀬に突っかかっている。周りの女子は最初こそ心配して、注目をしていたけれど、ゆずの正体が分かったらしく七瀬にだけ応援の視線を送るようになっていた。


「お前、コイツを甘やかすんじゃねえよ! 第一、課題ってのは自分の力でやるもんだろうが! なんで、甘やかして貸したりしてんだよ。理解出来ねえぞ」


「俺が好きでやってることだ。それ以上でも以下でもない。それを関係のない楪につべこべ言われたくはないな」


「あー分かった。お前、コイツ……綾希のことがまだ好きで、ヨリを戻したいとか思ってんだろ?」


「……」


「あ、もしかして当たった? 今日はツイてるな!」


「それはお前の方だろ? いつまでも葛西にしつこくしやがって、彼女の気持ちを考えろ! だからフラれるんだよ!」


 あー……言っちゃった。いつもなら、割と冷え冷えとした態度で返事を返していた七瀬なのに、何でか分からないけれど、今日は機嫌でも悪いのかな。


「くっ……この野郎……」


「おい、HRはじまんぞ。席に戻れよ」


「ちっ、分かったよ。七瀬、お前に綾希は渡さねえからな!」


「笑わせてくれるね。面白くないけど」


 渡した覚えも無いけどね。あぁ、やっぱり、七瀬がいいな。前よりも教室の中ではわたしに気持ちとかぶつけて来ないけれど、でも何となく分かる。大事にされてる気がする。外の七瀬も悪くないけれど、学校の中の七瀬も、何だかすごく格好いい。余裕がある感じがするし、きちんと見てくれている気がする。


「葛西、気にすんなよ」


「ん、ありがと」


「うん、じゃあ、また休み時間とか昼にな」

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