5.春眠妨害への反抗心
春といえば別れと出会いの季節。わたしは別れをすでに済ませてしまった。自分からだったけれど、直後はさすがに落ち込みもした。落ち込んで沈んでゆく前に、新たな男子ふたりと出会えたのは多分幸いだった。
隣の席に七瀬輔。廊下側席に上城比呂。ふたりの内、何となくのきっかけが出来たのは、七瀬。良いか悪いかって言われれば良かったけど、この季節のわたしは近くの男子よりも、春眠が優勢。
「何でそんなに寝れんの?」
「眠いし、春だから」
「分からなくも無いけど隣になったし、話をしようぜ?」
「……後でならいくらでも」
「いや、今じゃないと合わねえし」
隣の席になった新たな男子の七瀬。今のとこ、春眠がわたしの癒しになっていて、他の女子より若干冷めてる感じで返事を返している。ダークだったわたしの気持ちも、今は眠ることを最優先にしていた。
「俺と話がしたいんじゃなかったのか?」
「それ、誰情報?」
「葛西の友達」
「あーうん。それ、誤情報だから。夏まで保留でよろしく」
「――待てねえよ」
彼氏が今すぐ欲しいとか思ってたらこんな返しはしないけど、隣の七瀬に今すぐどうこうとか、そんなのは無くて、なんかちょっと分かんなくなってた。だから、春眠ということにしてた。
「妨害よくない」
「……悪ぃ。じゃあ、黙っとく」
「ありがと」
ようやく静かになって深い眠りにつこうとしたけど、さすがに顔を机に伏したまま寝ると、この前みたくなりそうだったし、また七瀬をツボらせるのは何となく嫌だと思って、首を動かして顔を横に直すことにした。
この時、一瞬だけふいに瞼をうっすら開けていたのが、かえって良くなかったかもしれなかった。
「……なにしてんの?」
「面白いから眺めてた」
なんか気配を感じていて、ばれない加減で瞼を開けていたのにどうしてかな。ってくらいに、見られてた。
「寝顔フェチはさすがにひく」
「ちげーし。てか、机顔引退すんの?」
「する。もうしない」
「残念。それだけじゃないからいいけど」
「てかさ、人気は一日限りだった?」
「そうじゃねえけど、そんなもんだろ。情報聞き出したら、後は普通にその辺の男と同じになるんだろ?」
その辺の男って、クラスの男子って意味だろうか。わたしは何も七瀬から聞いてないけど、最初に聞き出せることってそんなものだと思う。そう思ってたけど、沙奈の姿を探してみたら彼女は、廊下側の方にばかり行ってたみたいだった。
「その辺の基準なんて知らないけど。わたしは七瀬のこと知らないし」
「だから、話がしたいって言った。てか、起きたなら……」
「うん、もうすぐ三限だから」
「マジかよ……」
ホントに、タイミング悪い。この場合、寝てたわたしが問題だったけど。隣だしぶっちゃけ、いつでも話なんて出来ると思うけどね。タイミングが合えば。
「はぁ~~……難易度たけぇ」
何かのゲームでも夢中なのかな。なんて思いながら、昼になるまで睡魔との戦いが始まっていた。