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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
隣の席のカレ編
5/92

5.春眠妨害への反抗心


 春といえば別れと出会いの季節。わたしは別れをすでに済ませてしまった。自分からだったけれど、直後はさすがに落ち込みもした。落ち込んで沈んでゆく前に、新たな男子ふたりと出会えたのは多分幸いだった。


 隣の席に七瀬輔ななせたすく。廊下側席に上城比呂わいじょうひろ。ふたりの内、何となくのきっかけが出来たのは、七瀬。良いか悪いかって言われれば良かったけど、この季節のわたしは近くの男子よりも、春眠が優勢。


「何でそんなに寝れんの?」


「眠いし、春だから」


「分からなくも無いけど隣になったし、話をしようぜ?」


「……後でならいくらでも」


「いや、今じゃないと合わねえし」


 隣の席になった新たな男子の七瀬。今のとこ、春眠がわたしの癒しになっていて、他の女子より若干冷めてる感じで返事を返している。ダークだったわたしの気持ちも、今は眠ることを最優先にしていた。


「俺と話がしたいんじゃなかったのか?」


「それ、誰情報?」


「葛西の友達」


「あーうん。それ、誤情報だから。夏まで保留でよろしく」


「――待てねえよ」


 彼氏が今すぐ欲しいとか思ってたらこんな返しはしないけど、隣の七瀬に今すぐどうこうとか、そんなのは無くて、なんかちょっと分かんなくなってた。だから、春眠ということにしてた。


「妨害よくない」


「……悪ぃ。じゃあ、黙っとく」


「ありがと」


 ようやく静かになって深い眠りにつこうとしたけど、さすがに顔を机に伏したまま寝ると、この前みたくなりそうだったし、また七瀬をツボらせるのは何となく嫌だと思って、首を動かして顔を横に直すことにした。


 この時、一瞬だけふいに瞼をうっすら開けていたのが、かえって良くなかったかもしれなかった。


「……なにしてんの?」


「面白いから眺めてた」


 なんか気配を感じていて、ばれない加減で瞼を開けていたのにどうしてかな。ってくらいに、見られてた。


「寝顔フェチはさすがにひく」


「ちげーし。てか、机顔引退すんの?」


「する。もうしない」


「残念。それだけじゃないからいいけど」


「てかさ、人気は一日限りだった?」


「そうじゃねえけど、そんなもんだろ。情報聞き出したら、後は普通にその辺の男と同じになるんだろ?」


 その辺の男って、クラスの男子って意味だろうか。わたしは何も七瀬から聞いてないけど、最初に聞き出せることってそんなものだと思う。そう思ってたけど、沙奈の姿を探してみたら彼女は、廊下側の方にばかり行ってたみたいだった。


「その辺の基準なんて知らないけど。わたしは七瀬のこと知らないし」


「だから、話がしたいって言った。てか、起きたなら……」


「うん、もうすぐ三限だから」


「マジかよ……」


 ホントに、タイミング悪い。この場合、寝てたわたしが問題だったけど。隣だしぶっちゃけ、いつでも話なんて出来ると思うけどね。タイミングが合えば。


「はぁ~~……難易度たけぇ」


 何かのゲームでも夢中なのかな。なんて思いながら、昼になるまで睡魔との戦いが始まっていた。

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