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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
彼の心、わたしのこころ編

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48/92

48.そうじゃ……ない。


「比呂との秘密……秘密でもない。七瀬。七瀬もわたしに秘密がある。違う?」


「俺が? 綾希に隠し事なんかしてないけど、何かあったのか?」


 体育祭の時、比呂とコンビニに買い出しに行った時、七瀬の元クラスメートが近くまで来ていた。その事を七瀬に言わなくてもいいことだからと、比呂と秘密を共有した。だけど、そんなことは問題じゃなくて……ただの元クラスメートがどうして会いに来るのかが気になってた。


「体育祭……比呂と一緒にいた時、七瀬は一緒に来てくれなかった」


「いや、それはだって、沙奈とか他の女子に説明をしてたし……なんだ、俺がいなくて寂しかったのか? それならそうと――」


「それだけじゃない。七瀬に会いに来てた人、いた。アレは彼女?」


「もしかして、珠洲菜すずなのことか? あいつ、学校にまで来てたのかよ。マジか。ん? あいつのことを疑ってる? あいつは前の学校の時の同級生で……」


「あり得ない……ただの同級生が、別の学校にまで来て会いに来るなんて。七瀬、あれは彼女?」


「ちげーし。そうだったとしても、もう終わってるし今は綾希だけしか好きじゃない。綾希、お前……俺のこと、信じてないのか? だから比呂と仲良くして、俺には教えないような秘密を作ってたりしてたとか、そういうことなのかよ」


 そうじゃない、そうじゃないのに。どうしてすぐに比呂のことを出すの? わたしは聞いているだけなのに。違う……嫌だ、こんな、このままじゃ……七瀬と離れてしまう。どうして、どうして……?


「……綾希、俺、先に教室戻るから」


「……」


 もうすぐ昼休みが終わる。だけど、信じたくないことばかりでこの場から動けなかった。元カレと別れた時にすら泣かなかったのに、何だか涙が出ていた。止まらなくて、止められなくて……立ち尽すしかなかった。昼休みが終わる予鈴が鳴り響く中、ここにはわたし一人だけが立っていた。


「あれ? 葛西さん、どうしたの? もうすぐ昼休み終わるけど……え」


「比呂、どうして……?」


「え、何が? えと、と、とりあえず、具合悪いなら保健室に行った方がいいよ。俺、付き添うから」


「ひとりにして……」


「いや、さすがにそれは心配だから。あの、保健室の前で俺は戻るから。だから、行こ?」


 あぁ……どうしてこうなったんだろ。聞き方が良くなかったのかな。でも、彼女だから、だから気になったのに。聞いても七瀬ならそんなには怒ることなんて無いと思っていたのに。たすく……行かないで、離れないで……嫌だよ。

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