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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
彼の心、わたしのこころ編

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47.元カレと今カレの距離感


「綾希、課題やってきたからノートを俺に」


「……ん」


 わたしのすぐ前の席になった元カレだった男が、予想とは別に七瀬にもわたしにも絡んで来なかった。七瀬はわたしの表情を隣で見ていたこともあって、元カレの顔すら見なくしていた。


 1限を終えた後の休み時間になると、他の女子たちがアレの所に群がったおかげで被害は無かったし、静かな時間を過ごすことが出来た。


 けれど、とにかくすぐ前にいる。その事実だけは覆すことが出来なくて、わたしは机に伏して眠ることも出来ずにいた。


「綾希、お昼に行こう」


「ん、分かった」


 学食カフェで七瀬と向き合って話していたら、由紀乃が声をかけてきた。


「あやきち~~、聞いたよ! ゆず君って、あやきちの友達なんでしょ? 何で話、しないの?」


「違う」


「んん? 聞き違い?」


「アレとは無関係」


「……あ、あぁ~そっか。何となく理解できてしまった。そか、元カレだったかぁ」


 由紀乃にはすぐに分かられてしまった。そのことを遮るように七瀬は由紀乃に声をかけた。


「泉さん、綾希に何か用があったんじゃないの?」


「あ、でした。えと、一部の子達とゆず君とで週末にオール行くことにしたんだけど、それの誘いに」


「オール?」


「悪いけど、俺は騒がしいのは好きじゃない。綾希とその辺を歩くだけでいい。泉さんは、上城を誘ってみたらいいんじゃないかな?」


「もちろんそのつもりなんですけど、比呂くん、最近バイトで忙しいみたいなんですよね」


「なに、あいつバイトしてんの? 最近話してなかったから聞いてないけど、気分転換的な感じなのかもな」


「……んん? なに、七瀬?」


 どうしてか分からないけれど、七瀬がわたしを一瞬見て来た。比呂のことで何か気になることがあるのだろうか。思い当たるのは水族館に行ったときにキスされそうになったことくらい。


 そのこともあって、七瀬はますますわたしを離さなくなってた。そこにきて、元カレのさとるが転入して来た。七瀬は、今以上にわたしへの想いを強くしていくのだろうかなんて思ってしまった。


「いや、何でもない」


「七瀬くん。それにあやきちも、オールは行かなくていいけど、またみんなでどこかに行きたいよね? 比呂くんの都合とか聞いて、また行こうよ!」


「あぁ、それはまぁ……綾希が平気なら行くよ」


「ん、問題ない」


「オッケーだね! それじゃ、夏祭りとか花火とかの時にでも行けるようにしとくね。じゃ、あやきちと七瀬くん、またねー」


「……あいつ、しょうがない奴だよな。泉さんの気持ちとか、分かってないだろ」


「まだ由紀乃も、比呂も話してないし……」


「綾希も泉さんも名前呼びに変わってるけど、あいつがそう呼んでいいとか言ったの?」


「ん、言ってた」


 名前呼びで七瀬は、そのことをあまり気にしていないなんて言っていたけれど、やっぱり気になってたみたいで、そこから思い出したように比呂とわたしの秘密について聞いてきた。


「綾希。あいつと秘密にしてることって何? 大したことじゃないって聞いてたけど」


 実際大したことないし、問題にもならないことだったけれど、七瀬に会いに来ていたあの人のことをわたしはちょっとだけ気になってた。偶然に出会っただけの子。彼いわくただの元クラスメートということ。


 それなのに、わたしは七瀬に問い詰めるような感じで思わず聞いていた。そんなに重く受け止めていたわけじゃなかったのに。そして疑ったわけでもないのに……彼に聞いたその一言が、彼の想いとわたしの気持ちを少しずつ離していくことになるなんて、この時はまだ思っていなかった。

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