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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
彼の心、わたしのこころ編
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46.夏と暑苦しさとオトコ


 七瀬と比呂が編入して来た春はクラス中の女子が期待に目を光らせて、あわよくばそのまま……なんてことを思ってた子もいたとかいないとか。わたしはどっちにも属さずに、ただただ春眠の惰眠を貪ってただけ。


 つまりおなクラの女子たちにとっては、眼中外。そういえば後ろの方で眠ってたよね。くらいの存在だった。それなのに、割と目立つ沙奈と友達だったこともあって、存在自体は認識されていた。その沙奈と何気ない日常会話で、いい男が来たら混ぜよろしく! などと言ってたのを気にしなかったのがいけなかった。


 今ではクラスイベント以外では常に敵対視されるようになってた。沙奈は手に入れるものは手に入れて見せる。そんな堂々とした宣言で、七瀬を奪おうとしていた。けれど、七瀬は最初から嫌がっていた。彼は想像以上に、大真面目男子で優しくて、一途すぎて……今ではわたしの彼氏になってた。


 七瀬のことを全て知ったわけじゃ無い。だけど彼の一途な気持ちは何となく伝わって来てて、その気持ちに応え続けていきたいって思うようになりつつあった。それなのに、どうしてこんな夏になりたてでアイツがウチの学校に来てしまうの? ヒドイよ……


「いっや~~楽しみやね」


「なにが?」


「またまた~~! 綾希はチャンスやん。ヨリ戻せるし」


「ヨリ?」


 どこ情報なのかは知らないけれど、沙奈は夏にアレが移って来ることを何故か知っていた。そしてそれを元にして、七瀬に接近するようになった。アレが同じ所に来て距離が縮まっても、もうそんな想いは生まれて来ないと言うのに。


「えーと、夏に編入生っていうのも驚くかもしれませんけれど、ウチのクラスに隣接区から移って来た男子を紹介しますね。どうぞ、入って」


 信じたくも無かったし、見たくも会いたくも無かった。どうして来れるの? そこにずっと通っていればいいのに……何で?


 教室に入って来た男子に、女子たちは黄色い声を上げた。あんな奴に上げなくてもいいのに……どうしてなのかな。


「えーと、こっちの学校から推薦で行ける大学があったので、前の学校から移って来ました。で、自分の名前は、楪了ゆずりはさとるって言います。前の学校では、ゆず。と呼ばれてたのでこっちでも気軽に呼んでください」


「じゃあ、楪くんの席はもうすぐ席替えになるけれど、葛西さんの一つ前に座ってくれる?」


「……」


 先生も敵だった……。よりにもよって何で前なの? ウザいことを絶対言ってくるに決まってる。最悪な夏が始まってしまった。

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