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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
彼とカレと彼女編

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43.ヒミツのコトバ


 さすがに行列が出来ている所からは外れて、七瀬とわたしと比呂は順路の間にあるスペースに避難した。比呂は黙っているし、七瀬は無言の重圧みたいなものがあるし、どうなるのかなんて分からなかった。


「お前、綾希に何しようとしてた?」


「……」


「――っ」


「お前に関係ない。俺が葛西さんに言おうとしただけで、お前に言われるとか意味不明」


「っざけんなよ? どさくさ紛れでキスしようとしてただろ? 訳も分かってない綾希にそんなことするなっての! 告白するつもりで泉さんの誘いに乗って来たってのはバレバレなんだよ。抵抗しない綾希にそんなことするなよ、マジで! ってか、告白するなら今やれよ。そんで、諦めろ」


「比呂。わたし、七瀬が好き」


「いや、綾希に言ったんじゃなくて……比呂? それはともかく、そういうことだからお前も何か言ってくれ」


 あぁ、そっか。七瀬って、下の名前で呼ばれたいけど呼ばれないから気にしてるんだよね。比呂って言葉に反応するあたり。


「悪いけど、俺と葛西さんとでお前に秘密にしてることあるから、それだけでも彼女と繋がりを持ってるし諦めるとかないから。って言うか、俺帰る。具合悪いし、泉さんにはそう言っといて」


「お、おいっ! 秘密って何だよ?」


「さぁな」


「比呂、帰るの?」


「うん、ごめんね。泉さんには後で謝るから、だからごめん」


 比呂はひたすら謝りながら、下の階に下りて行った。由紀乃、楽しみにしていたのに。どうしてかな。


「綾希、お前……もう少し、疑うとかそんな気持ち持ってくれないとマジで困る」


「んん?」


「俺もまだしてないのに、あいつにキスされそうになってたんだぞ? 自覚あるのかよ、マジで……」


「何か動けなくて、でも、七瀬が来てくれたから」


「それはそうだけど、好きでもない奴に迫られて動かないとかキツイぞ」


「嫌いじゃない」


 好きでもないけれど、嫌いってわけでもなくて。だからそんなに焦りもしなかったのかもしれない。


「お前それ、俺に言ってることと同じじゃねえかよ。それじゃあ、いずれ好きになるかもしれないってことに聞こえる。勘弁してくれよ本当に。って言うか、あいつとの秘密ってなに? 俺に言えないことをあいつと共有してるってことだろ?」


「あ、うん。それは別に大したことじゃなくて、体育祭の時に――」


「あっ! あやきち、七瀬くん! ここにいたんだ? いつまでも来ないから心配したじゃん! って、比呂くんは?」


「具合悪いからって、帰った。ごめん、泉さん」


「あ、そうなんだ。それって、七瀬くんが判断したんでしょ? だったらそれで問題ないよ。無理矢理誘ったわけだし、移動もそうだし人混みにも疲れたと思う。ふたりにもごめんね」


「平気」


「いや、いいよ。泉さん、とりあえずせっかく来たし、回ろうか」


「ん、回る」


「ありがと! じゃあ、あやきちは七瀬くんから離れないように付いて来てね。それじゃあ、行きますか」


 言いかけたら由紀乃が来たから結局言えなかったけれど、七瀬は気にしてないよね。実際、大したことではないのだから。


「……綾希、俺から離れるなよ。ヒミツが何かは知らないけど、お前を渡すつもりないから」


 さすがにもうここではぐれるわけにはいかないので、七瀬の手をしっかり握って離れないようにした。彼も、わたしの手を強く握り返していた。それ以外の意味も込められているようにも思えたけれど、比呂をのぞいて、3人で水族館を楽しんだ。


 七瀬が気にしていた、比呂のことを嫌いじゃないという言葉。それは、七瀬に言ったこととは違う。嫌いじゃないけれど、好きでもない。わたしの中心は七瀬で出来ているから。それは言えなかったけれど、ほんのささいなことを、七瀬が気にし続けることなんてないと思ったから、その後は何も言わなかった。


「七瀬だけだから」


「俺もだから」

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