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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
彼とカレと彼女編

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40/92

40.渇いた笑顔の裏側に


「……綾希」


「……ん」


「今すぐ起きないとキスするけど、いいか? 綾ちゃん」


「……よくない」


「なら、顔を上げて机顔……っ、はははっ! やっぱ、お前最高だな! 綾希」


 七瀬が綾ちゃんとかって、なんか似合わない気がした。言われても嫌じゃないけれど、まだそれは許可したくないな。


「ってか、なに?」


 顔を上げたら、七瀬だけかと思ってたのに、ちょっと後ろの方にニヤニヤしている由紀乃と、苦笑いをしている上城くんが立ってた。


「あ……そっか」


「そういうことな。流石にここでキスはしないし。残念だったか?」


「さぁ……?」


 七瀬は由紀乃の言う通り、甘えてくるようになった。それに加えて、わたしに挑発的なことを言って来たり、やってきたり。これはどういうことなのだろう。キスのお預けをくらっているから、わたしにそれ以上の思いを抱くようになったのかな。


「あやきち~ここ、学校なんだからね? そういうのは他でやりなさい! 純な上城くんも困ってるよ?」


 由紀乃のすぐ隣に立っている上城くんは何とも言えない表情で、わたしたちのやり取りを見ていた。


「上城くん、ごめんね?」


「えっ? あぁ、き、気にしてないから」


「あやきちが謝るとか珍しい……」


「それはどうも?」


「ま、綾希が起きたことだし、行こうぜ」


 七瀬が先に教室から出て行こうとするのを、由紀乃も焦りを見せてわたしを引っ張って来る。


「そだね、さっさと外に出ようよ。ほらほら、綾希も」


「上城くん、行こう」


「……そうだね。行こうか、葛西さん」


 何かの考え事をしていたのか分からないけれど、わたしが声をかけるまで上城くんは動くことをしなかった。具合でも悪いのかな? 


「……で、どこ行く?」


「えーと、私から誘ったといて近場で済ませるのはどうかなと思うので、電車乗ります~」


「え、どこ行くの?」


「いいからいいから、あやきちはついて来るだけでいいの」


 別に電車で移動とかするのはいいけれど、一駅だけの移動は何か嫌だ。橋一本だけの距離には、思い出したくも無いアレがいるから。狭くない街でも、どういうわけか会うこともあるわけで。


 心配してたら、一駅どころか結構通り過ぎてた。それならいいや。会うこともないし、会ったとしてもどうということは無いんだけれど。


「人、多すぎ……」


「夕方だしな。そこは仕方ないだろ。綾希、ほら……」


「……ん」


 迷子になる心配もあるだろうけれど、七瀬は自然とわたしに手を差し出して来る。それに抵抗なく、わたしも彼の手を握る。彼と手を繋ぐことはとても好き。一度触れてしまえば、それ自体は難しくない。いつも繋いでいるわけでは無かったけれど、その辺で七瀬に安心を覚えているのかもしれない。


「……」


「上城くん? どうしたの?」


「いや、何でもないよ、泉さん」


「あやきち、七瀬くん。目的地、ここの中の水族館だから。ついて来てね~」


「分かった、綾希をはぐれさせないようについて行く」


「おけおけ、じゃあ行きまーす」


「おい、上城……泉さんについててやれよ」


「分かってるよ」


 何だか乗り気じゃないのかな? そんな表情をずっとしていて気になってしまう。それとも実は、わたし以上に人見知りなのかな? 由紀乃のためにも上城くんとは楽しんで欲しいんだけれども。


「……葛西さん、七瀬から離れちゃ駄目だよ?」


「ん、ありがと」


「うん、じゃあ泉さんの所に行ってくるね」


 そう言うと、上城くんは笑顔を見せてそのまま由紀乃の所へ駆けて行く。彼の笑顔は満面でもなく、何となく、何とも言えない笑顔に見えた。それが何なのかわたしには分からなかった。

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