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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
彼とカレと彼女編
35/92

35.さり気の無い優しさに


 七瀬と一緒に外へ出たわたしは、敵と化したおなクラ女子たちから、一斉に睨まれたり攻撃を受けるかと思ってた。だけれど、特に大きなことは起きなかった。由紀乃いわく、上城(わいじょう)くんが女子たちをなだめてくれたのだとか。彼も七瀬と同じくらいに、女子人気が高かったから何となく納得出来た。


「あやきち、クラTの資金が戻って来た! それ使って、打ち上げしよう!」


「んん? なぜ?」


「ほら、一応、勝った祝い的な何かってことで」


「おめでと?」


「そう、それ! で、七瀬とサボってたあやきちはコンビニ行って来ること! よい?」


「分かった。でも一応、サボりじゃなくてけが人だから」


 わたしとふたりでサボってた? 七瀬はと言うと、沙奈を筆頭に、女子たちに囲まれて質問攻めにあってた。さすがにあの状況から抜け出せない。だとすると、コンビニに行くのはいいけれど他の男子に手伝ってもらうしかない。由紀乃は係か何かですぐにどこかへ行ってしまったし、誰かいないのだろうか。


「葛西さん、七瀬が大変みたいだね。俺、手伝おうか?」


 由紀乃以外の女子を知らないし、他の男子ともほぼほぼ、話をしたことのないわたしにとって、ここで声をかけてくれた彼は、救世主とかヒーローとかそんな感じに思えた。


「うん、お願いする」


 残念なことに、学校を出て直ぐの所にはコンビニは無くて、少し歩かないと無かった。だからこそ、コンビニ袋を持ってもらおうとしていたのに、七瀬には頼めなくて代わりと言うと失礼だけれど、上城くんが名乗りを上げてくれて素直に嬉しく思えた。


「大変だったね、七瀬と」


「ああいう所、七瀬の悪い所」


「はは、だね。あいつ、いい奴だけどちょっとした所が気が利かないっていうか、あいつは良くても葛西さんには大変だってところを気付けない鈍さがあるんだよね。だから、ごめんね」


「なぜ謝るの?」


「友人だから、一応ね」


 上城くんは、七瀬とはまた違った感じの優しさがある。話し方も、沙奈といた時は自分じゃないなんてことを言っていたけど、どうやらホントだった。今の話し方なら、柔らかい感じだから女子にはいいかもしれない。由紀乃にもチャンスがありそうな気がする。


「……さん、葛西さん?」


「あ、なに?」


「なんか考えてたの? それなりに歩くし疲れるけど、膝はもう平気?」


「平気だから」


「まぁ、そうじゃないと俺、悪者にされて七瀬に怒られてしまうよね。膝を悪化させてどうするんだよ! って感じで」


「七瀬はそう言うと思う」


「俺さ、かなり後悔してるんだ」


 上城くんとふたりで話をすること自体、久しぶりかもしれない。彼はわたしをいいなと思ってくれていた。だけど、わたしは断った。好きとかそんな言葉では無かったにも関わらず、全然興味が無かった。


「後悔?」


「最初から、本当の俺を出して葛西さんに話しかけていれば、今と状況が違っていたかもしれないなって。それが、そのことがあって、七瀬に……」


「七瀬に?」


 首を傾げながら、上城くんの言葉に耳を傾けていたせいか、音に気付かなかった。


「葛西さん、ごめん!」


「――え」


 気付いたら彼に腕を掴まれて、歩道の内側に引っ張られてた。何かが自分たちを横切ったと思っていたら、ながら運転してた自転車の人がわたしに気付かずにそのまま、通り過ぎてた。


「ふー危なかった。ホント、多いよね……って、あ――」


「……あ」


 引っ張られてそのまま、上城くんの体に近い所にまで接近してた。七瀬よりも、背がそれほど高くない彼の顔が、間近にあった。これはさすがに驚いた。


「ご、ごご、ごめんっ!!」


「危なかったから、平気」


「と、とりあえず、もうすぐコンビニに着くから、気を付けて歩こう」


「はい」


 何てことを言いながら、上城くんの足取りはとてつもなく早歩きになってた。焦らせてごめんなさい。

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