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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
隣の席のカレシ編

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28.ヤキモチと戸惑いの中で


 なんでこんな所で会うかな。よりにもよって、七瀬といる時に。フラれたのに何で嬉しそうにしてるのか、意味不明なんだけど。


「綾希~~! 俺だよ。俺!」


「詐欺?」


「やっぱりお前だ。返しが秀逸だしな! ここで会えたのもやっぱ、運命的な何かが途切れてないものなのかもしれないなー」


 話し方も声も何もかもが嫌いすぎる。何でこんなのと付き合ってたんだろ。


「綾希、コイツってアレか?」


「……ん、アレ」


「コイツか。こういう奴か、それなら良かった。何も心配することなんてないな」


 七瀬的にたぶん、すごく嫌なタイプだと思うし、上城(わいじょう)くんとは全然違うから、絶対友達にならなさそう。騒がしいしウザいし、読まないし。


「綾希、別の道を歩くか」


「分かった、付いて行く」


 そんな感じで、そこにいる男なんていないみたいに相手にしてないみたい。それでいいと思う。


「……って、こらー! シカトすんなって。綾希の隣のお前、何だよ?」


「はぁ~~……何って、お前こそ何なんだよ! 俺は綾希の彼氏(おとこ)だけど?」


「彼氏? へぇ~?」


 何でこんなに喧嘩売るつもりなの? やめてよ、もう関係ないじゃん。


「悪いけれど、七瀬はわたしの好きな人。あなたとは何の関係もないし。ここから帰ってくれると喜ぶから」


「そういうことだから、俺らはあんたと関係ないんで」


「いや、ある。お前、七瀬って言うんだろ? 最近、綾希と付き合い出したっていう。別にそれはいいけど、夏までに終わらせてくれる? 夏休み終わったら、俺と付き合うから」


 何で七瀬のこと知ってるの? なに、夏って……まさか、沙奈が何か言ってたアレのこと?


「フラれた奴が何を言っても無駄。その理由すら気付かないで、また付き合えるとでも思ってる辺りが終わってる。七瀬は俺だけど、知らないお前に呼ばれる必要を感じない。夏とか訳わかんないことを、勝手に言うのやめてくれる? 綾希を困らすなよ」


「理由なら知ってるけど? 綾希は俺と距離が……ってか、同じ学校じゃないから別れただけ。たかだか、向こう岸の距離だぜ? それが同じになればそういう心配とかいらなくなる。そういうわけだから」


「ホントにそれだけだとでも? あなたとは何も全然、関係ない。七瀬を困らせないでくれますか?」


 話もしたくないし、無駄だし。同じになるとかホントにどうでもいいし、もう嫌だ。


「お前、綾希困らせんなよ。とにかく、お前と俺らは無関係なんで。行くぞ、綾希」


「……ん、行く」


 そもそも立ち止まって話をする意味もないし、聞く必要も無かった。だから、七瀬はわたしの手をほんのちょっとだけ強く握って、その場を離れてくれた。さすがに強引に追っては来なかったけれど、わたしと七瀬に対して何か吠えてた。


 川沿いを歩くのは別に良かったことだけど、考えてみればあいつの学校は橋を渡った先。あいつの家ごと離れた訳じゃなかったんだよね。


 橋一本くらいの距離だと、そこを歩くときもあるってことは考えてもいなかった。それにしたって、何で会うかな。あんなのと付き合っていた事実を消滅させたい。


「綾希、あいつが振った元カレなんだろ? アレは最悪だ。あんな奴、気にしなくていい。俺が守るから」


「ん、ごめん」


「と言うかあんな奴、綾希と合わないだろ」


「ん」


「心配するなよ? な?」


「……うん」


「綾希は俺から離さないし、夏がどうとかよく知らないけど気にするなよ」


 優しい七瀬。こんなに優しいのに、何で不安がよぎるんだろ。名前で呼ぶことはいつだって出来るし、隣の席だし。離れることなんて無いのに。今さら、ホントに冗談じゃない。


「ま、とりあえず体育祭も近いし、それに集中しようぜ」


「うん、七瀬がね」


「っておい、お前もな」


 振った相手が来たところで何も関係ないし、何てことは無いよね。夏までとかじゃなくて、ずっと一緒だから。七瀬とはずっといたいから。

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