27.三人目の男
「あやきち、クラTのデザインどれがいい?」
「派手な方じゃない方」
「だと思った。でも、派手な方に票集まってるから決まったら、そっちを着てね」
「努力する」
「うし、じゃ、またね」
もうすぐ髪が湿ってじめじめする時期。そんな時期に体育祭をやるとか、本当にだるい。幸いにして、実行係とかでもないわたしは、来たことに対する質問に答えたりするだけでよかった。
「綾希にも女子の友達が出来たみたいだな。あやきちか~それもいいな」
「だめ」
「早すぎだろ! まだ決めてなかったのに」
「由紀乃だからいいのであって、七瀬はだめ」
「ケチいな。あ、今日も一緒に帰るだろ?」
もちろん黙って頷いた。
「たまには川沿い歩いてみない?」
「泳ぐ?」
「泳がねえし、無理だし。面白いなお前」
「分かった、歩く」
席が隣で、学校で話してることと言えば、ほとんど放課後のことばかりだった。 わたしも七瀬も帰宅部だから、帰りも同じは当たり前。
「じゃあ、綾希――」
「輔、放課後暇?」
「暇じゃねーし。暇でも無理だ。てか、何か用かよ?」
「声かけただけやし。綾希と一緒に帰るん?」
「悪ぃかよ?」
「いや、別に~ま、今のうちに綾希と仲良くした方がええよ。輔のライバルが増えそうやしな」
「あ? どういう意味だよ?」
「夏に分かるし、楽しみやね」
わたしの存在を無視して、七瀬にケンカ? を売りに来ていた沙奈。何か言ってたけれど、何だったのだろう?
沙奈に色々言われて機嫌悪くしてた七瀬だったけれど、帰る頃にはご機嫌になってた。手を繋ぎながら、ふたりで川沿いを歩く。ただそれだけのことなのに、すごくうれしい時間。
「なあ、綾希……体育祭が終わったら、どこか行かね?」
「川で泳ぐ?」
「川で泳がねーし! 海なら泳ぐ」
「考える」
「考えといて。でさ、綾希は――」
七瀬が何か言おうとしたら、橋の上からなんか声が聞こえた。
「綾希ーー!! 久しぶり! 俺だよ、俺!」
「ん? 誰だあいつ……」
あー、何でこんなところで会うかな。七瀬との時間をぶったぎるとか、やっぱり嫌い。
「そっちに行くから、そこで待っててくれよな」
「……」
「綾希、あいつ誰?」
川沿い歩いて、まさか会うなんて全然思ってなかった。あぁ、嫌だな。話したくないな。七瀬、七瀬がいるのに何でかな。




