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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
隣の席のカレシ編

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26.優しい理由を聞きたくて


 七瀬の手に初めて触れてる。何をするわけでもなく、ただ手を掴んでるだけ。手よりも先に色んな所に触れちゃってるけど、何でこんな簡単なことが出来なかったんだろ。腕を伸ばせばいいだけの距離なのに。


「なぁ、綾希。聞いていい?」


「嫌です」


「何も言ってないって! なんつうか、お前……」


「……ん」


「素直じゃないよな。それが綾希らしいんだけど、もっと好きになっていいか?」


「なっていい」


「いちお、聞くけど俺だけが好きってわけじゃ無いよな?」


「七瀬しか好きじゃない。七瀬しか好きになれない」


「そ、そっか」


 隣の住人がここまでわたしに好意と優しさを出して来るのは何でなんだろ?


「七瀬」


「……ん?」


「優しい理由を聞きたい」


 編入してきて、たまたま隣が七瀬でわたしは彼の横で寝ていただけ。机顔だけでこうまで好かれるものなのかと、ちょっと疑問。


「机顔がそんなに受けた?」


「そりゃあ、傑作だったぞアレは。教室の中にいる女子連中って、それこそ俺が編入して来たばかりの時は、おかしいくらい色んな事聞いて来て、興味持ったかと思えば好意は持たれてなかった。それに俺は騒がれたり騒いだりするのは好きじゃない。でも、お前は他の女子と違ってた。隣になったのに、話かけるどころか寝てたしな。起きたかと思えば、変な寝癖てか、机の痕なんか付けてさ。面白いって思った」


「課題とか身代わりしてたし、何でそこまで?」


「隣に座った時から、可愛いって思ってた。だから、嫌だったけどあいつ……沙奈に頼んだ。きっかけ作ってくれって。そしたら、作れた。後はもう、必死ってか、綾希と話したくて頑張った」


「七瀬、お手」


「は? お前、前から思ってたけど俺のこと、犬扱いしてんの?」


「従順だし、優しいし、可愛いから」


「お前だけだし。俺が優しく出来るのって、綾希だけだから。だから、それが理由な」


 なるほど。わたしだから、か。なんて従順な七瀬。自分じゃ面白いなんて感じたことないのに。偶然なのか何なのか知らないけれど、きっかけは机の痕がついた顔ってことなんだ。


「席替えしたらどうする?」


「交換してもらう。まだ数か月あるだろ? その前に体育祭な」


「あー、ガンバレ?」


「何も決まってないのに応援とか、そういうとこお前らしいわ。とにかく、俺が綾希に優しい理由は……綾希だから。綾希にだけ優しくしてるだけだから。他に何もないし、それでいい?」


「よく分かんないけど、分かった」


 何にしても優しい七瀬。理由なんて別にいらなかったけれど、言われるとなんか嬉しい。


「おまえなぁ……ま、とにかくそういうことだから」


「そういうことにしとく」


 ここまで言われても、わたしの態度とか言い方とか急には変われないわけで。でも、七瀬の前でなら変わっていきたいかもしれない。このままずっと好きでいたい。なんか、七瀬じゃないと駄目っぽい。

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