表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
隣の席のカレシ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/92

25.少しの変化と、七瀬の手


「おめでとう! 綾希。俺のおかげで赤点免れたな」


「感謝」


「――ってか、真面目系女子だとばかり思ってたのに、お前寝てばかりだったんだな。マジで俺に感謝してくれていい」


 七瀬のおかげで、中間は赤点を回避出来た。確かに七瀬の言う通り、わたしは真面目そうに見えてた女子。彼と話すようになる前から、席でずっと春眠の惰眠だったから決して点はよろしくなかった。


 それでもおかげでいつもよりいい点を取れたから、七瀬とふたりで近くのカフェに来ていて祝われてた。


「何が欲しい?」


「んあ?」


 こういう時、大抵は見返りで何かを求めて来るというのが、元カレで得た男の知識。だから、きっと七瀬も何かが欲しいと言うと思って聞いた。


「あー、テストの礼ってやつ? んー……言われるまで気付かなかったな」


「あ、そうなの? じゃあ、いい……」


「よくねーし。ご褒美見せかけといてお預けくらうとか、かわいそうだと思わねー?」


「ん、かわいそうな子犬」


「子犬……? よく分かんないけど、考えるからちょっと待って」


 何だかんだで、すごい嬉しそう。何にもすごいものなんて贈れないんだけど。


「綾希、俺のことを名前で呼んで欲しい!」


「七瀬」


「ちげー! いや、名前だけどそうじゃなくて、たすくって呼んで欲しいな、と」


「あれ、呼んでなかった?」


「いや、それはあいつだろ……」


「あーうん。考えとく」


 沙奈が輔とか、比呂とか、下の名前で呼んでた。彼女はそういうことに意識してないと思うし。まぁ、友達なら意識も何もないけれど。でもまだ、七瀬の方がいい。


「そ、そか」


「わたし的に、七瀬って呼びたい。その方が好き」


「そ、そっか、好きならそのままでいいや」


「……わたしも七瀬から欲しい」


「じゃあ、一杯分奢る」


「違う」


 なんか、一緒にいて傍にいるのに、全然触れてない。唇とか、肌は触れてるのに。すごい近いのに、どうしてそれが出来てないんだろ。こうして話してる時の距離はすごい近いのに。


「じゃあ、なに?」


「手……」


「手? あー握手か! いいよ、ほい」


「……帰る」


「あれ、何でキレてる? 握手じゃないの? って、あ……」


 すごい簡単なはずなのに、何で分かんないかな。たぶん、無理っぽい。だから帰りたくなって、七瀬を置いて店を出て来た。隣の席なのに、家にも来たのに、何でかなぁ。彼氏なのに……何で分かんないかな。


「綾希! 先、行くなよ~」


「そう言いながら追い越して、そのままどこかへ行くの?」


 走って来たらしい七瀬。ゆっくり歩いてたわたしを追い越して、振り向きざまに右手を掴んできた。


「いや、悪ぃ。お前、どこか行きそうだから、掴んどく」


「ん、それでいい」


「走って来て疲れたし、しばらくこのままな」


「どうぞ」


 なんか、ようやく七瀬の手に触れた気がする。いつもじゃなくていいけど、やっぱり嬉しいし。


「綾希の手、冷たいけどなんかいいな」


「七瀬は温かい、違う。生ぬるい?」


「お前、素直じゃねえな。ま、いいけど。この後、どうする?」


「家庭訪問に来ていい」


「いや、それはまた今度でいい……その辺、歩くってことでよろしく」


「……ん、分かった」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ