表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
隣の席のカレ編
20/92

20.熱をもらいに?


「38℃……んー、熱すぎ」


 昨日の雨は、七瀬のおかげで確かに濡れなかった。けれど、しっかりと彼から移していたようで、予想通りにわたしは寝込んだ。さすがに学校は休んだ。今頃は、七瀬は学校に行ってる頃だろうか。隣にわたしがいなくて、泣いてる頃かもしれない。


「あや、なんか買ってくるけど何食べたい?」


「氷」


「あーはいはい、アイスね。鍵は閉めてるけど、誰か来たら返事はしてね。じゃあ、寝てて」


「いってらっしゃい」


 わたしの家には、兄とわたしと両親の4人。兄はすでに社会人だけど、実家暮らししてるからしょっちゅう、顔を合わせてる。彼女いない歴何年とかで、わたしが相手してあげてる。熱を出したわたしを看たいとかで会社を休む気だったけれど、それはやめろって言っといた。


 で、結局は親に頼ることになった。誰か来たら返事してとか、寝かせる気ないじゃん。なんて思いながら、冷たいタオルを取り換えに部屋を出たら、誰か来たっぽい。


 チャイムを聞くたびに、どこかのコンビニに行った気になる。それがウチのチャイム音。その前に、鳴るだけで声が聞こえて来ない。いたずら? そのまま放置してみたら、昨日聞いた声が聞こえて来た。


「誰かいません? ここ、綾希さんの家で合ってます?」


「合ってません」


「お、その声、若干ハスキー入ってんな」


「犬は七瀬。わたしじゃない」


「ってか、開けてくれませんか?」


 なんでこんな時間に来てるの? やっぱり休んだとか。それにわたしの家もいつ知ったんだか。


「……で?」


「綾希、休んだしつまらないから、早退してきた。ついでに、課題も土産に持ってきた」


「そういう押し掛け、いらないし。家もなんで?」


「先生が教えてくれた。俺、お前の彼氏ですって言ったらあっさり」


「じゃ、後で先生を訴えとく」


 もちろん、そんな無駄なことしないけど。こんな急に彼氏なりたての七瀬が家に来て、家に上がるとか何かが間違ってる気がした。もしかして何かの陰謀があるのだろうか。


「いや、嘘だ。先生に言うハズないし。さっきその辺うろついてたら通報されそうだったから、試しに尋ねてみたんだよ。葛西さんのお家はどこですか? って感じで」


「それ、家から出たばかりの――」


「あぁ、綾希のお姉さんだろ? だから家を教えてもらえた」


「お姉さん? 七瀬って、視力いくつ? 相当目が老化してると思う」


「目はいい方だけどな。それより、何かして欲しい事ある? コンビニで適当に買って来た」


「熱をもらってくれると喜ぶ」


 熱を逃がすには寝て寝まくって、冷たいタオルとか、とにかく何かしてくれるだけでも楽。そう思ってたけど、七瀬の方が熱上げてたっぽい。


「……その行為について、言い訳は?」


「しない」


 七瀬がしたこと。それは、わたしの額に口をつけたこと。何かのシーンでそんな場面もあったけど、あんまりドキドキしなかった。


「綾希から熱もらっといた。早く治って欲しいし。お前が隣に座ってないと、俺、寂しいから」


「……どうも」


「と、とにかく、来週までには治れよ? じゃないと、困る」


「なぜ?」


「もうすぐ前期の中間だし、お前と勉強したい。またノート貸すし」


「あー……」


 そういえばそんなものがあった。七瀬は真面目と優しさの塊なんだ。これはありがたいかも。


「七瀬、ありがと」


「お、おう。じゃ、じゃあ帰るから……って、なに? 何で服引っ張ってんの?」


 その後の展開を何も考えないまま、七瀬の服を思い切り掴んでた。どうするべきかな。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ