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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
隣の席のカレ編

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14/92

14.移すと治るって言うから。


 何となく気にし始めて来たかもしれない。嫌いじゃない七瀬。隣の席ってだけで、話をしてきた彼。春眠で、惰眠をむさぼってきただけのわたしの何が良かったのかは結構、疑問だけど。


 それでも、やっぱり机顔がきっかけだったのは事実かもしれない。そんな思いを持ち始めたわたしは、家できちんと眠ってから学校にたどり着いた。教室に入って、席についたわたしに彼は声をかけてきた。


「う~~……おはよ~……」


「うー? 七瀬どしたの?」


「なんか頭が痛くて。風邪ひいたかも」


「え、大丈夫?」


「ぉ~~……」


「え、死んじゃうの? 家に帰った方がいいと思う。それか、保健室……」


「死なねえし。綾希は今日も冴えてんな。頭いてえ」


 何だろ、何か、助けないと駄目っぽい気がする。でも保健委員でもないし、肩を貸すほどの力持ちでもないし、どうしよ。


「なになに、どしたん?」


 頭の中でどうすべきなのかを考えていたら、教室に入って来た沙奈がすぐに席に近付いてきた。


「七瀬、風邪っぽい」


「やばいじゃん! 綾希、支えられるんなら七瀬の左腕乗せて。ウチは右を貸しとくから」


「ん、分かった」


 何事が起きたのかってくらいに、クラスのみんなが騒ぎ出した。女子ふたりに支えられながら、背の高い男子が苦しそうにどこかに連れて行かれてしまう。そんな感じ?


「ん~~いや、自分で歩く」


「無理すんな。ウチらで支えてるし、転ばさないから意識落としといていいって」


「落とさねえし……綾希、平気か?」


「ほとんど沙奈が支えてるし、全然平気」


 そこそこ苦しそうな七瀬を保健室に連れて行き、教室に戻ろうとしたら何でか、沙奈はそのまま保健室に残ろうとしてた。なんか、嫌な感じがした。沙奈はわたしに何も言わなかったけれど、気になった。


「七瀬平気なんかな……休み時間、どうしよっかな」


「……」


 わざとっぽいのは何でかな。今までずっとそんな言葉を気にすることは無かったのに。


「教室戻って、先生にいっとこ! 先、戻るから。綾希も追いついてきといて」


「うん、分かった」


 明らかに保健室の七瀬を意識してる沙奈。それが、何でなのかすごく気になってしまった。変な感じがして、沙奈が教室へ向かうのを見送ってから保健室に足を向けていた。自分でも何でなのか分からないけど。


「失礼します……」


 朝すぎたのか、保健医の人はまだ来てなかった。適当にベッドに寝かせてしまっていた七瀬を見る為に、白いカーテンを勢いよく開けてみた。


「……ん? なんだ、綾希?」


「風邪は?」


「さぁ。横になったら楽っぽい気はする」


「寝れば何でもよくなるし」


「それもどうかと思うけど、綾希見てればそうかもしれないって思う俺は、毒されたのかもしれないな」


 惰眠すぎても具合悪くするけれど、今のとこ元気だからその辺を納得したっぽかった。


「そろそろ戻っていいよ。HR始まるだろ」


 昔、わたしの兄にやったことのあることを、何故か七瀬にしていた。どうしてこんなことしてるんだろう。嫌いじゃないから出来ることなのかもしれなかった。


「……あ、綾希、な、なにしてんの? おま、それ……てか、え?」


「何だっけ、移したら治るってやつ。だから、やってみた。治った?」


「治ったら綾希はやばいだろ。一瞬で風邪治せたらどれだけ、移したって感じだ。いや、お前、何してんのマジで……」


「口をつけた」


「分かるけど。おま、それ、おかしいって。好きでもない奴にするのは違えし。だと思わね?」


「違うかも」


「だろ? 勘違いするから、マジで……」


「好きかも」


「は!? ガハッ……喉やべえ。なんつった? 好きかも? 昨日と違うぞ……」


「比呂に告られたら自覚した。七瀬が好きかもって」


 大したことしてないし、大したこと言ってないのに七瀬の咳がひどくなってしまったところで、誰かが保健室に入って来てた。


 それが、たぶん始まり。わたしの自覚の始まりと、彼女の。

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