表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
隣の席のカレ編
10/92

10.近付くカノジョとわたし。


 七瀬は意外すぎるほど真面目男子だった。しかもわたしの名前で課題ノートを提出してくれるとか、どれだけの優しさで出来てるのだろうってくらい、彼はすごく優しかった。さすがに悪いと思って、わたしから放課後の誘いをすることにした。


「んと、七瀬に付き合って欲しいんだけど、行ける?」


「……待った。どういう意味か聞いていいか?」


「外に付き合えるかどうかを聞いてるけど……」


「あー……だよな。いや、分かってたけど。それって、今日のことで合ってる?」


「合ってるけど、なに?」


「いや、何でもないけど。綾希から誘って来るとか、現実かどうか疑った」


「課題ノートのお礼」


「それか。それのことなら素直に付き合う。サンキュな」


「なにが?」


「気にすんなよ」


 むしろお礼をするのはわたしの方なのに、七瀬っていつもわたしにお礼してる気がする。何となくそれを言われると嬉しい感じがした。たぶん、七瀬の口癖かもだけど。


「んじゃ、放課後な。っつっても、隣の席にいるけどさ」


「うん」


 放課後になって、七瀬は先に教室を出て行ったみたいで追いかけたら、外玄関で立ってた。


「一緒に行けば良かったのに、先に待ってたのはなんで?」


「いちお、気を使った。綾希って、あんまり気にしないのな」


「ん……?」


 七瀬の気遣いって、恐らく教室の中での視線だと思うけど、少なくともわたしと七瀬のことを、そんな目線で見てる女子はいないと思う。一番後ろでいつも寝てるから、たぶん存在感無いだろうし。


「気にしてる?」


「そりゃあまぁ、する」


「沙奈に比べたら目立たないし、気にしなくても平気だと思う。比べ所が違うけど」


「あいつはあざとい。でも、綾希はそうじゃない」


「よく分かんないけどありがとう。で、合ってる?」


「多分な」


 って感じで会話してても、何の気配も感じられないだろうし、周りから見てもそんな関係で見られてないだろうなぁ。弾んでそうで弾み損ねてるコミュニケーションって感じだと思う。


 だけど、七瀬の顔を少しだけ見上げたら、機嫌は良さそうだった。何か嬉しい事でもあったのかな。七瀬は、わたしよりも背が高い。と言うか、平均より高い方だと思う。だから、彼を見る時は首を動かす必要があって、そんなに見ることは無かった。


 歩く速度は、合わせてるのか知らないけれど、腕を伸ばせば手が届きそうな距離感だった。伸ばせば届く。この距離が縮まってくれば、何かが変わる可能性はあるのかもしれない。


「んじゃ、綾希の奢りだから付いてく」


「ん、分かった」


 どこに行くかとか何も決めていないまま、通りを歩いているわたし。その後ろを、きちんと付いて来ている七瀬。背は高いけど、やっぱり子犬っぽい。何となく可愛く思えた。


 人通りが多い道に出て、信号待ちをしていたら向こう側で誰かが手を振っていた。わたしの知らない誰かだったけど。信号が変わったと同時に、笑顔の彼女がわたしの方に……もとい、彼の元に向かって来ていた。


 驚く以前に、完全スルーはどうなんでしょうか。そんなことを思いながら、振り返って七瀬の方を見ることにした。何となく、焦りを見せていたような気がした。もしかして、彼女なのかな? 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ