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キミのその手に触れたくて  作者: 遥風 かずら
隣の席のカレ編
1/92

1.始まりは別れのコトバ


「……別れたい」


「分かった」


「うん、ごめんね」


綾希(あやき)が決めたことに、文句なんて言えないし」


「……ん」


「一応、聞くけど何で?」


「何となく」


「そか」


 高二の春、中学の頃から付き合って来た彼氏と別れた。理由なんて特に無かった。でも、しいて言えば同じ学校じゃないから、それが何か辛くなった。彼は電車で川を一本渡った先の学校に通ってる。


 中学から付き合って来たけど、意識したことあっただろうか。思春期の付き合いって、そんなもん。そんなもんだから、たかが川を挟んだだけの距離ですら遠く感じてしまった。


 このことを友達数人に話すと、「遠距離っぽくていんじゃない?」なんて聞こえて来たけど、何か多分違くて。別れる時、何も言ってくれなかったのが悲しかった。ただそれだけのことが理由だった。


 そんな彼のことを自分からフッておいて、春からダークなわたしが続いていた。


「おはよ、綾希。まだ落ち込んでんの? ヨリ戻せば?」


「や、いい……」


 教室の中で日当たり良好な窓側の一番後ろの席で、顔を机に伏しながら生返事するわたしに、沙奈さなは呆れた感じで声をかけてる。伸ばしに伸ばした長い髪だけは、吹き込んで来る風を浴びてなびいていた。


「めんどい女子やなぁ。てか聞いた?」


「なにが~?」


「クラスに編入してくるっぽい」


「何者?」


「男子一名、や、二名だったかな」


「うそ、どこから!」


 思わずすごい勢いで顔を上げてしまった。


「そこまで知らないけど、なに? 期待しちゃう?」


「これって、チャンスですよ? 沙奈さん」


「ですよね、綾希さん」


 すごいバカっぽいやり取りをしてるけど、わたしも沙奈も期待に満ちていた。同じクラスなら、寂しい思いをすることなくて付き合い続けられるんじゃないかと、単純に夢を見ていた。


「とりあえず、二人ならどっちかに期待しとけばいんじゃない?」


「まだ分かんないけどしとく」


「あたしも混ざってイイすか?」


「沙奈って、男より運動部じゃなかった?」


「いい男なら別っしょ。応援するからさ、混ぜよろしく!」


「どうなるか分かんないし、それは別にいいけど」


 春に彼と別れてダークなわたしは、春から編入してくる新たな出会いに何となくの期待をして、始まりそうな恋の意識に予感を感じていた。

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