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54 人生初カジノ、初ルーレット!

「「「はぁぁぁぁぁ!?」」」


三人の少女の絶叫が、街に響き渡った。


「うるさいよ、どうしたの?」


「どうしたのじゃありませんよ! それと、綾乃さんの演技やめてください!」


やはり、高宮は、俺が綾乃の演技をすることが許せないようだ。

男の口調はナンパ男共にマイナス評価かと思って、演技したんだけど……。


「そんなことより、どうして急にあいつらについて行こうなんて言い出したのよ!?」


ああ、そのことか。

そんなの決まっている。


「金だよ金。あいつら相当な金持ちみたいだからな。上手くやれば、俺たちが払うべきところをあいつらに払わせることができるかもしれないだろ?」


俺は至極当然という感じで答えた。

もちろん、ボンボン共には聞こえないように、だ。


旅行初日から思わぬ出費が出てしまったんだ。

節約するチャンスがあるなら、それを生かさなければならないだろう。

主に、ヤエの食費とか食費とか食費とか。


だが、残念なことに、俺の意図は、少女三人に十分伝わらなかったらしい。

朱夏たちは、俺に対して、まるで道端に吐き捨てられたガムを見るかのような、絶対零度の視線を向け、口々に、


「最っ低ー」


「クズ中のクズですね、あなたは」


「見下げ果てたぞ、アヤノ」


などと、非難した。


フン、なんとでも言え。

お前らがいくら非難しても、俺の考えは揺るがない。


「……さ、行こっか!」


「「「絶対イヤ!!!」」」


「な、なあ……あの娘たち、すごい嫌がってるみたいだけど……?」


ち、強情なやつらめ……。

お前たちのせいで、あんなにしつこかった男共が萎えてき始めてるじゃないか。


「大丈夫。よく言うでしょ? イヤよイヤよも好きのうちってね!」


「そう……なのか?」


「そうなんです!」


「そうは見えないけど……」


「ああ、本気で嫌がってるように見えたんだが……」


マズイな……男たちが躊躇し始めてる。

向こうから網にかかった財布……もとい、金を逃してたまるか!


……しょうがない。

こうなったら、朱夏たちの態度を軟化させる切り札を使うしかない。


そう考えた俺は、


「ヤエ!」


一人目のターゲットの名を叫んだ。



それから数時間後、俺は、ナンパ男の一人に連れられ、顔なじみだという高級カジノを訪れていた。


いや〜、それにしても、簡単に事が運んだもんだな。


「あ、あの……」


ヤエは、俺が食べ放題と口にした瞬間、こっち側に寝返ったし、高宮も、俺が綾乃になりきってお願いすると、演技だと分かっているはずなのに承諾した。

綾乃ラブな高宮には、中身が別人でも綾乃のおねだりには、逆らえないらしい。


「ねえ、アヤノちゃん……」


あとは集団心理を利用するだけ。それだけで朱夏もこっち側だ。

全員が納得したところで、それぞれ分かれて行動することになった。


ヤエは、当然食事。

朱夏は、アクセサリーをプレゼントすると息巻く男に連れていかれ、高宮は、街の観光スポットを廻るそうだ。

そして、俺はカジノだ。


まあ、これで自分の金を出さずに遊べる訳だ。ケケケ。

おっといかん、邪悪な笑いが。


「おい、アヤノちゃん!」


「ああもう、さっきからうるさいな! 何だよ!?」


ルーレット台を眺める俺の横で、ごちゃごちゃと騒いでいるナンパ男。

人がギャンブルに興じているというのに、何と無粋なことか。


「ひっ! い、いや、まだやるのかなぁ……って」


何を言いだすんだこの男は……。

ここに来て、まだ30分と経っていないのに。


「もちろんやるよ? まだ始めたばかりだからね」


「そ、それはそうなんだけど……始めたばかりなのにもう1000万負けてるんだよ?」


俺がさも当然のように言うと、男は青ざめ、オロオロしだした。


まったく、たかが1000万程度で狼狽えるなんて、情けないぞ。


「安心してよ。次で負けをチャラにして、さらにお釣りが返って来るぐらい勝ってやるから!」


「そ、そのセリフ五回は聞いたぞ!?」


ええい! 細かいやつだな!


俺は、なおも何か言いたげな男を無視し、ルーレットに戻った。


まあ見てろ。ちゃんと勝算はある。


今までのは、あくまで練習していただけにすぎない。

そして、負けた中で、俺は、ディーラーとウィール(回転盤)の癖を掴むことに成功した。

それはつまり、どういうことか……もう俺に負けはないということだ。


俺は、バケツに残ったチップ全てを赤の30、その一ヶ所に置いた。


「さあ勝負!」


「お、おい、賭けすぎだ、考え直してくれ! ストレートアップなんて、当たるはずが……」


「うるさいな! こうしないと今までの負け分取り返せないんだよ!」


まだナンパ男は何か言いたげだが、もう遅い。


ディーラーがボールを回転盤に投げ入れ、回りだす。

そして、ボールのスピードが徐々に緩んでいき……。


「「ああああああああああ!?」」


そんな絶叫が、カジノに響き渡った。



「くそ、結局7000万近く負けてしまった……」


デレニスの屋外、そこで、俺は、一人毒づいていた。


一世一代の大勝負。

その結果は、予想した赤の30とは反対方向の、黒の29にボールが止まるという散々なもの。


そのあとも順調に負け続け、気がつけば、負け分は、俺の所持金が綺麗さっぱり消し飛ぶほどの額に達していた。


ナンパした女に、1000万単位の金を消し飛ばされた男は、身体が真っ白に変色し、呆然と立ち尽くしてしまった。

さすがに悪いと思った俺は、ナンパ男に一言「ごめんね?」と謝り、逃げ……もとい別れ、カジノを後にしたのだ。


まあ、このことは、悲しい事件ということで忘れてしまおう。

……はい、忘れた。


それにしても、思ったよりも早く終わってしまったな。

朱夏たちも戻って来てないし、どうしようか……。


手持ち無沙汰になった俺は、せっかくなので一人、デレニスの街を廻ってみることにした。


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