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46 なんというテンプレ展開……

「おい、女!」


声のする方へ顔をやると、そこには骨がいた、

いや、骨ではない。よく見ると人間の男だった。

皮と骨しかないほど痩せているが、身なりは良いから貧民というわけではなく、単なる体質だろう。

どういう訳か、この男の姿を認めた町の人々が、逃げるように去って行く。


痩せた男はそれを気にする様子はない。後ろに厳つい男2人を引き連れ、陰気な雰囲気を放ちつつ、ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべているだけだ。


「お前だよ、お前! そこの長い黒髪の女!」


はて、誰を呼び止めたのかしら? と、周りを見回す俺を指し、痩せ男は、途端にイライラした様子で叫んび始めた。


多分、知り合いではないのだが、いきなり何の用なんだ?

その品定めするかのような視線が、非常に腹立たしいのだが……。


「ふむ……やはり、このぼくにふさわしい容姿をしているな」


「合格だ」と、どこまでも上から目線の態度。

ふと、側にいた3人の少女に目を向けると、イラっとしたように顔を引きつられせていた。

その気持ちは俺もよく分かる。


「喜べ! 連れも含め、全員ぼくのの(めかけ)にしてやろう」


「えっ、イヤですよ。何言ってるんですかあなた」


「な、なな、なんだと!?」


男は拒否されたことが衝撃だったようで、目を見開き、口をパクパクさせた。


いやいや、知らない男にいきなりそんなこと言われても断るに決まってんだろ。

たとえ上から目線でなくとも、綾乃の中身は俺なのだから、100%成功しないけどな。男からのプロポーズなんて、まっぴらごめんだ。


「何驚いてんのよ。あんなので首を縦に振るとでも思ってんの?」


「……キモいです」


「貴様ごときが妾に求婚じゃと? 冗談も大概にしておけ」


「なっ、なっ……」


俺の拒否を皮切りに、朱夏たちも口々に拒絶の言葉を放った。

同時に4人に玉砕した男は、言葉に詰まり、怒りと羞恥で顔を真っ赤に染めていた。


「ぼ、ぼくはこの町一番の富豪、グラシアル家の息子、ユリスベルだぞ!? 一介の冒険者風情が……ぶ、無礼しゃないか!!」


骨男はキーキーと耳障りな声で、喚き散らしている。

まったく、やかましいやつだな。


おそらく富豪の息子というのは、身なりからして本当なのだろう。

それも、かなりの権力やら影響力やらがあるようだ。

「面倒事に巻き込まれるのは、ごめんだ」とばかりに、道行く人が知らんぷりを決め込んで、俺たちを避けているのがその証拠だ。


まあ、権力があるとしても、俺たちの答えは変わらないが。


「はぁ、はぁ……まあいい。特別にもう一度聞いてやろう。ぼくは優しいからな」


ひとしきり喚いたあと、骨男は平静を取り戻して、そんなことを宣った。

お前が本当に優しいのなら、もう解放してほしいのだが。何度聞いても、結果は同じなのだから。

しかし、俺の心の声は届くことなく、男は、またも傲慢なプロポーズを敢行してきた。


「下賎な女冒険者どもよ! ぼくの妾になるがいい!」


「結構です」

「諦めなさい」

「キモいです」

「往ね」


「「「………………」」」


再度玉砕し、硬直する骨男。

いや、なぜ固まる!? 負け戦確定なのは、火を見るより明らかだろ!?


それに、なんなんだよこの茶番。

ホラ見てみろ、さっきまでシカト決め込んでた町人たちも、お前の滑稽な姿に、クスクス笑ってるぞ。

こっちまで恥ずかしくなってきたから、そろそろ解散しませんか?


「ゆ、許さん……ぼ、ぼくにこんな恥を……」


恥かいたのは、お前自身のせいだろ。

しかし、プライドを傷つけられた男は止まらない。


「おい! あの生意気な女どもに、自分たちの立場を分からせてやれ!」


怒りで顔を赤く染めながら、背後の男2人に命令を下す骨男。

それを受けた男2人組は、ニヤニヤしながら前に出た。

すると、男2人を目にした町人が驚きの声をあげた。


「お、おい。あいつら……凄腕冒険者のトニーとローガンじゃないか!? なんで、あんなやつと一緒に?」


「あいつらは金に目がないからな。大方、金に目が眩んで、用心棒でもしてるんじゃないか?」


ほう、この2人、けっこう有名なんだな。

確かに2人とも筋骨隆々で、しかも威圧感たっぷりの厳つい顔をしているな。


「で、ダンナ……こいつらをたたき潰しゃいいのか?」


「顔と身体には、できるだけ傷をつけるな! あとでぼくが頂くんだからな! 傷をつけずたたきのめせ!」


「随分と難しい注文だな……多少の傷は勘弁願いますぜ?」


「あ、ああ、分かってる。は、早くやれ!」


骨男に催促され、トニーとローガンは、こちらへと顔を向けた。難しい注文と言いながら、2人は余裕綽々といった態度を見せている。


「悪いな、ねぇちゃんたち。これも仕事だからよ……恨むんなら自分の運の無さを恨みなぁ!」


そんなテンプレ台詞ともに2人は、俺たちに向けて突進してきた。

女相手だから、力で押せば勝てると踏んだのだろうか? まあ、普通ならそれでいけるかもしれないな……"普通なら"な。


「さあ、覚悟しな……ひぎゃああああ!?」


「「「…………!?」」」


男の1人が絶叫をあげ、地面に倒れ込んだ。

きっと普通の人には、男がなんの前触れもなく、急に倒れたように見えただろう。

もちろん、何もせずに倒れたわけではない。


男たちが突進してきた時に、俺が雷魔法の"ライング"を無詠唱で、かつ"透明化"のスキルを付随させて撃ったのだ。


試験的にやってみたのだが、上手いこといったようだ。攻撃を見えなくするのは、かなり使えそうだから今後も使えそうだ。

……死んでないよな? 凄腕冒険者と聞いたから、全力で撃っちゃったんだけど。

……あっ、動いた。どうやら息はしてるみたいだ。


「ト、トニー!? ちくしょう!!」


相方を失ったもう1人の男……ローガンだったか? は、いきり立って力任せに殴りかかってきた。

俺は、それを軽くいなし、ガラ空きの腹に拳をたたき込んだ。


「ぐふっ!?」


攻撃をまともに受けたローガンは呻き声を出して、トニーと同じように地面に突っ伏して、気を失った。

ほとんど初めて肉弾戦をしたが、綾乃の身体は、これも問題なくこなせるようだ。


「ば、ばかな……ひ、ひぃぃぃぃぃぃ!!!!」


頼みの綱の用心棒をアッサリと倒された骨男は、情けない声をあげ、脱兎のごとく逃げ出した。


「あ、ちょっと待て!」


俺は未だに気を失っている男2人を掴み上げると、逃げる骨男に向けて投げ飛ばした。


「ひぎぃっ!?」


それは見事に命中し、骨男は絶叫とともに倒れ、動かなくなった。

こんな道の往来に、大の男2人を放って置かれたら邪魔になると思ったのだが、障害物の数が増えただけだったな。


ま、何はともあれ、これで解決? だろう。


「おーい、終わったぞ」


俺が朱夏たち3人に声をかけると、


「ああ、うん。……そういえば、今のあんたは勇者だったわね」


「まったく、幸月くんのせいで、綾乃さんの凄さが消えちゃうじゃないですか!」


「ゆ、勇者? 今の戦い方のどこが勇者なんじゃ?」


などと、好き放題言い始めた。

俺が追い払ったのに、なんでこんなこと言われてるんだ?

とりあえず--


「お前ら、夕飯抜きな」


「「「ごめんなさい、ふざけ過ぎました!!!」」」



コルの町の公衆浴場。

夕食を終えた後、そこで入浴していると、先に上がったはずの朱夏と高宮が慌てた様子で入ってきた。


そんなに慌ててどうしたんだ?


「た、大変です綾乃さん!」


「ヤエがいなくなったわ!」


「な、なんだって!?」


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