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36 女神様再び

念願のランクを手に入れた俺たちは、ゴブリンなどの下級モンスターが対象の討伐クエストをこなし、2〜3日分の宿代と食費をあっさり獲得した。


今日もクエストをクリアし、日が沈みかけた頃に、活動拠点にしたサトスへとルンルン気分で帰ろうとしていた。すると、なぜか強烈な眠気襲われ、それに抗うことができずに俺は意識を手放した。




「はっ……!?」


目を覚ました俺は、ここが眠りにつく前の景色と異なる場所だと気づき、辺りを見渡し確認した。

いや、確認する必要ないか。一度しか訪れたことがないのに、やけに明瞭に記憶させられたこの場所のことなど。


「もうここには来るつもりはなかったんだけどなぁ……」


そう1人呟き、憂鬱な気分に襲われる。

現在俺がいるのは、いつだったか命を落とした俺が飛ばされたあの場所。漂白され無駄なものが何一つない神秘的ながらも寂しさを感じる空間だ。


そして、そこには当然ヤツの姿もある。


青紙碧眼の……見てくれだけならまごうこと無き美少女であり、どんな大悪党の心ですら浄化させてしまうのではないかという程の神々しいオーラを放っている、"女神ベルザ"。


しかし、彼女の性格には大いに難があるのが特徴だ。それは、容姿に良いところを全て持っていかれたかの如くであり、「女は容姿ではなく性格」という主張の証拠としてベルザを出したら、それには相当な説得力が生まれる程だ。


そんなベルザは、憂鬱な顔の俺とは対照的に満面の笑みを浮かべ、以前は無かった純白のイスに座していた。


「一体何の御用でございましょうか? 俺、今回はまだ死んでなかったはずですが……」


ベルザの態度にイラっときた俺は、嫌味ったらしく訊いた。

しかしベルザは、それを意に介していないのか、余裕な顔のまま、なかなか口を開かない。


ホントに何なんだ一体……早く帰りたいから、用があるならとっとと言ってほしいのだが。

さらにしばらく間を置いてから、ようやくベルザは口を開いた。


「たいした用はないです!」


……さてこの女神、どうしてくれようか。殴るか、蹴るか、剣か、魔法か……どれが一番ヤツを苦しめられる……?

おっといかん、危うく女神に闇堕ちさせられるところだった。


しかしまあ、どうしてこいつは、こうも俺に殺意を抱かせることに長けているのだろうか。

もしかして、何か理由があってわざと嫌われようとしているのか? ……いや、そんな必要は、こいつには無いから天性の才能だろうな。くたばれクソ女神!


「……じゃあ何でここに呼んだのか教えろクソ女神」


「く、クソ……!? フフフ……そんな口、他の神に聞いた瞬間に殺されてましたよ? でも私は優しいですから、謝れば許してあげます。さあ、謝りなさい」


そんなプルプル震えながら謝れと言われてもな……謝るつもりなんかさらさら無いし。


「そういうのいいから、何で呼んだのかサッサと教えろよ」


「ぐっ……このっ! …………はあ、はあ、まあ良いでしょう。貴方をここに呼んだのは、神代綾乃の身体に憑依して少し経ったので、その様子を見るためですよ。何か異常があったら困るでしょう?」


それは大した用なのでは?


「あーそうですか。で、異常は見つかりましたかねぇ?」


「……いえ、特には。ただ一つ挙げるなら、貴方には私に対する信仰心が欠如していることですかね」


んなもん最初からねぇよ。


「んなもん最初からねぇよ」


「な、なんですって!?」


おっと、思わず本音が……。

それにしてもベルザは何を驚いているのか。こいつと俺の今までの関係を見れば、信仰心など生まれるはずのないことは、火を見るより明らかなはずなのに。


「あいっかわらず神に対する礼儀がなってませんね! ……召喚した時、全員に私への信仰心を植え付けるべきだったでしょうか?」


プリプリと怒った後に、小声で不穏なことを呟くベルザ。

あなたのそういう所がダメなことにそろそろ気づきましょうよ。まあ、この女神(仮)には無理な話か。


「そんなことより、もう用は済んだだろ? そろそろここから帰してくれませんかね? 女神様(笑)と違って、俺は忙しいんでね」


「そ、それだと私が暇を持て余しているみたいじゃないですか!!」


アレ、違うのか?


「私も色々することはあるんですからね! その忙しい時間の中から空きを見つけて、貴方を呼び出したというのに……その言い方はなんですか!?」


「あーハイハイ、ごめんなさーい。これ以上忙しい女神様(笑)の手を煩わせるのも悪いので、元の世界に帰してもらえません?」


「女神に対してなんて口の聞き方……!! …………ふぅふぅ、分かりましたよ」


ベルザは、唯一の長所である整った顔を歪めながら、魔法を唱え陣を展開させた。


はあ、ようやく帰れるのか。

安堵する俺にベルザは不敵な笑みを浮かべた。

な、何だ?


「フフフ、貴方には魔族討伐の使命があるので帰してあげますが、ちょっとした天罰を用意してあるので楽しみにしていてください」


は、何だそれ?

天罰だと? なぜ俺がそんなものを受けなければならないんだ。


「おい、どういうことだベルザ!? 天罰って何だよ!?」


「アハハ、女神に対して舐めた口をきいたことへの罰ですよ! 内容は帰ってからのお楽しみです!」


ベルザが笑った直後、魔法陣から光が展開され、それが俺を包み込んだ。


「ふざけんな!! ……お、おいちょっと待てよ! ……ベルザァァ!!」


「さよなら〜」


「覚えてろ、このクソ女神がぁぁああああ!!!!!!!」



「んん……」


眠りから覚めた俺は、ベッドに寝かされた状態だった。

ここは……サトスの宿屋か? しばらくの間、拠点にしていたのですぐに理解できた。


横のベッドに目をやると、朱夏がスヤスヤと寝息を立てている。だが、高宮の姿は無かった。

おそらく、意識を失った俺を朱夏たちがここまで運んでくれたのだろう。窓から外を見ると空には太陽の姿はなく、かわりに月が辺りを照らしていた。


……それにしても、ベルザの言っていた天罰とは何なのだろうか。

そんなことを考えていると、姿の見えなかった高宮が戻ってきた。


「あ……綾乃さん、起きたんですか? いきなり倒れるからびっくりしましたよ」


「ああ、ごめんね、心配させて。2人が運んでくれたんだよね? ありがとう」


「いえ……あの、綾乃さん」


「どうしたの?」


「私に何か隠してませんか?」


突然そんなことを言われ、頭に疑問符が浮かぶ。

高宮の目には、俺が何かを隠しているという確信を持っているように見えた。


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