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29 ネウムの正体

「貴女たち、さっさとこの教団から出て行きなさい」


「えっと……」


「聞こえなかったかしら? 貴女たち、さっさとこの教団から出て行きなさい」


答えあぐねている俺に、ダレルは能面のような表情を崩さず、録音された音声のように同じトーンと語句で言った。

とてつもなく不気味だ……。


「い、いえ、聞こえなかったんじゃなくて意味が……」


「意味? そのままの意味よ。貴女たち姉妹は、ここにいるべきじゃないの」


「…………」


なんだろう、無表情なのに有無を言わせない凄みを感じる。

俺がダレルの威圧感に気圧され、何も言えないでいると、後ろから「綾乃、どうかしたの?」という声が響いた。


振り返ると、美人三姉妹の三女こと朱夏と高宮が不思議そうな顔をして駆け寄ってきた。

突然の2人の乱入にもダレルは動じず、表情も崩さない。


まるで無機物のような異質さを気取ったのか、朱夏はダレルを睨み、警戒したような素振りをした。


「……こんなところで2人して何していたの?」


「…………ちょうど3人集まったことだしもう一回言っておくわ。貴女たちはここにいるべきじゃないの、早くここから去りなさい。それが貴女たちのためよ」


そう言うとダレルは、こちらの返事を待たず、別の部屋へと歩いて行った。


「……どういう意味?」


状況を飲み込めていないのか、朱夏と高宮の2人は、怪訝そうな表情をしている。

ごめん、俺にもよく分からん。


ダレルの後ろ姿を見ながら、彼女の言ったことを反芻してみたが、なぜ俺たちをここから追い出そうとしたのか、その意味を理解することはできなかった。



その夜、俺は未だに昼間のことを考えて、眠れずにいた。その横では、次女と三女がスゥスゥと寝息を立てる音が聞こえている。


そんな時、部屋の外から何やら人の声のようなものが聞こえてきた。時刻は……深夜2時くらいだろうか。


こんな時間にどうしたんだ?

そう思った俺は、人の声の正体を確認するために外に出た。

薄暗い廊下を目を凝らしながら進むと、その音は一つの部屋から聞こえているようだった。

しかしその部屋は、普段祈りの儀式に使われる広間のような場所なので、こんな深夜に誰かが使っていることは考え難いのだが……。


部屋の近くに近づくとより音が鮮明に聞こえてきた。その声は、女性の艶かしい嬌声のようであった。


いやいやいやいや、何かの聞き間違いだろ!?

俺は、急いで扉に顔を近づけ、耳を澄ました。

それは音の正体をしっかりと確かめるためであって、断じて女性のエロい声を聞きたかったわけではない!


「んっ……ああっ! んん……」


ふお〜〜〜〜〜〜!!!!!?

何ですか、何なんですか!? こんなトコで何やってんですか!? 中の人!?

けしからんですよ、けしからん!

これは、もっとじっくりしか……もとい、観察しなければ!


俺は扉から顔を離し、少し開いてみる。

中では、どんな人が1人で身体を慰めているのか、あるいは2人でやっているのか。そんなイケナイ妄想が膨らんでいく。


うん、気持ち悪いのは分かってる。でも、冴えない童貞高校生だったやつは、美少女に憑依してもそれに抗うことなど、できはしないのだ!

ふへへへ! 失礼しまーす!

俺は、心の中でそう宣言すると、そーっと中を覗いた。


室内では、俺の想像通りの桃色空間が広がっていた。

俺の視線の先では、信者の女性が一糸纏わぬ姿で恍惚とした表情を浮かべ、喘ぎ声を上げていた。さらに、何かヌルヌルした液体を身体に塗られていて、大変よろしい。


うおおおお!! すげ〜!

興奮していた俺だったが、部屋の奥を見た時それは一瞬で冷めた。

部屋の奥では、ネウム教団のトップである教祖が椅子に鎮座していた。その顔は、普段の爽やかさは鳴りを潜め、不快に感じるほど下卑た笑みを浮かべて、身悶えする信者たちを見下ろしていた。


……なぜ教祖がここに? そもそも、この部屋では何が行われているんだ?

教祖の姿に冷静になった俺は、そんな疑問を頭に浮かべていると、後ろから「こんなところで何をしているの?」という声がした。


「……っ!?」


驚いて振り返ると、ダレルが冷たい視線を俺に向けていた。


「ダレルさん!? あの……あれは……?」


「……見てしまったのね」


俺の様子を見てため息をつくダレル。

ダレルはこのことを初めから知っていたのか?


「なぜあの人たちはあんなことを……? 教祖はなぜあそこに……?」


「詳しくは教えられないわ。けど、これだけはハッキリ言える。……このままなら貴女もあそこにいる女たちのようになるわよ」


ダレルはそのまま俺を腕を引いて寝室に連れて行き、半ば強引に部屋に押し込んだ。ドアを閉める瞬間に「ああなりたくなかったら、早くここを出なさい」とだけ言って。


あれは何なのか。信者たちはどうしてあんな風になっていたのか。あれに教祖はどう関わっているのか。

……など、分からないことが多すぎる。


先ほどの光景が何だったのか頭で懸命に咀嚼してみるが、全くもって理解できなかった。

ただ、これだけは言える。


この教団は……『行き場の無い女たちの楽園』などではないということだ。


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