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27 潜入

「ここが件の教団かー。思ってたよりも立派な建物だね」


メイの母親の奪還を引き受けてから数日後、俺たちはネウムの教団施設の前まで来ていた。

最近できた新興宗教と聞いていたので、もっと小規模な建物を想像していたが、この宗教施設は、白を基調とした清潔感漂う石造りの立派な建物で、テラスハウスのようだった。


「メイちゃんのお母さんは、この中にいるのよね?」


「おそらくね」


「もしここにいたとしても、綾乃さんはどの人がお母さんなのか分かるんですか?」


「メイちゃんから母親の名前や特徴は聞いたし、そこまで苦労しないと思うよ」


メイから聞いた情報では、母親の名は"ダレル"といい、髪は黒で、目は細く灰色がかった瞳に痩せ気味の体型のようだ。


「それで、どうやって入るの?」


「まさか勝手に引き受けたのにそれを考えてないなんてことは、ないですよね?」


朱夏と高宮の2人は、俺が独断で子供たちの依頼を受けたのを根に持っているのか、言葉に棘を含ませながら聞いてきた。

メシと宿を確保できたのは、お前らにとっても良かっただろ。何が不満なんだ?


「もちろん考えてるよ、完璧な潜入作戦をね。これから、私がそれをやるから2人は私の話に合わせてね」


2人は疑わしげな表情ながらも了承した。

おっ? ちょうど良いタイミングで、中から人が出てきたな。

よし! 作戦開始だ!


「す、すみません!」


「はい?」


俺は、建物から出てきた女性に駆け寄り、切羽詰まったような口調で呼び止める。


「わ、私たちを……匿ってくれませんか!? は、早くしないとあの男が来る!!」


もちろんそんな男なんていない。

ここ数日の聞き込みで、この教団には、日本でいうところの駆け込み寺みたいなシステムがあるらしいので、それを利用したのだ。

酷く慌てて、そして怯えたように装う俺とそれに合わせる朱夏たちを見た女性は--


「大変! さあ、早く中に入って! 詳しい話は中で聞きます」


そう言って、俺たちを招き入れてくれた。

よしよし、取り敢えず潜入には成功っと。



教団施設にまんまと潜入した俺たちは、外観同様、清潔感のあるエントランスで匿ってくれた女性に事情を話した。


俺たちは町の三姉妹で、父と4人、貧しいながら仲良く暮らしていた。

しかし、仕事をクビになった父は酒に溺れ、俺たち姉妹に暴力を振るい、挙げ句の果てに売春まがいのことまでさせようとした。

そんな父の横暴な振る舞いに耐えかね、この教団に逃げ込んだ……という設定だ。


それを聞いた女性は口に手を当て、眉をひそめた。

その顔には、俺たちに向けた同情の念が現れている。


「まあ……そんなことが……。こんな可愛い娘さんたちに暴力を振るうなんて、なんて親かしら。でも、安心して。ここは、とても安全な場所だから」


女性はそう言いながら、優しく俺たちを抱きしめた。

依頼とはいえ、デタラメな嘘をついているから罪悪感が……。


そんな時、「どうしたのですか?」という声とともに、大勢の女性を引き連れた男が部屋に入ってきた。

それを見た女性は「教祖様」と男の元に駆け寄り、俺たちのことを話し始めた。


「それは大変でしたね。ここは、そんな愚かな行いをする者はいませんから、安心してください」


教祖と呼ばれた男は、笑顔でそう言った。

それにしても、随分とイメージと違う教祖様が出てきたな。怪しげな新興宗教団体の教祖だから、もっと汚らしい中年のおっさんを想像してたけど……目の前の男は歳は3〜40代程度だろうか。スラっとしていて背が高く、この建物と同じく清潔感のある顔立ちだ。


「さて、早速ではありますが、教団施設の案内をさせてもらいます。貴女たちは、これからここで暮らすのですから、早く慣れてもらわないといけませんからね。それではエミル、彼女たちの案内をお願いします」


教祖は側にいた金髪の女性--エミルに施設の案内を命じ、部屋から出て行った。


「では、ここからは私が案内します。それと、私はエミル。どうぞよろしく」


「はい、よろしくお願いします! 私は綾乃です。こっちの2人は私の妹で、陽奈と朱夏です」


「「よろしくお願いします」」


「ええ。それにしても……アヤノにヒナにシュカなんて、3人とも随分変わった名前なのね」


「は、はい。よく言われます! エヘヘ」


俺は、印象を良くするためにできるだけ愛想よく答えた。第一印象は大事だからな。

見た目は美少女でも中身は男なので「エヘヘ」なんて笑うのは、抵抗があるけど仕方ない。仕方がないのだ。決して、そういうセリフを言いたかったとか、そういうのではない。


自己紹介も終えたところで、俺たちはエミルに案内されて施設を見て回ることになった。

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