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23 サトスの町、冒険者ギルドへ

「ほらほら、こっちだよ〜!」


「このっ……! 待ちなさい!」


町の路地に、からかうような子供の声とそれを追う朱夏の声が響く。

事情を知らなければ、子供同士の可愛らしい遊びに見えるかも知れない。追いかける少女の方に怒りがこもっていなければ、の話だが。

そんな2人の後を追うのは、俺と高宮。


「あんたたちも! もっとしっかり追いなさいよ!」


朱夏が振り返り、こちらにまで不機嫌な声を飛ばしてくる。


「はあはあ……な、なんでこんなことに?」


高宮が息を乱しながら、そんなことを言った。

同感だ。俺たちは、普通に町を訪れただけだ。なのになぜ……なぜ子供と追いかけっこをしているのか、未だに分からない。



「ふぅ、なんとか到着したね」


「はぁ〜、疲れた〜」


「そうですね。結構歩きましたし」


サトスの町に辿り着いた俺たち一行。エリックによるとサトスは、小規模だが人々で賑わう活気の良い町らしい。

門番のいない木製の門をくぐり抜けると、言葉通り、多く人々が行き交う町の様子を見ることができる。


「おお、結構人がいますね!」


「そうね。買い物とかも困らなさそう」


朱夏と高宮が感心したように言う。派手な修羅場を展開した2人だが、樹海での遭難がきっかけ……かどうかは分からないが、どうやら打ち解けたようだ。

いや〜、本当に良かった!

あのまま修羅場が続くとか地獄以外の何物でもないからな。


「じゃあ、まず何をしようか?」


「うーん……そうですねぇ……」


「んー……」


2人は、腕を組んで考え込む。そして--


「お腹も空いたし、ご飯からにしない?」


「確かにお腹空きましたね。綾乃さん、そうしませんか?」


時間も昼ごろだし、昼食にはぴったりの時間帯だな。


「うん、じゃあそうしようか」


昼食を摂ることにした俺たちは、早速、良さそうな店を探すことにした。

そんな時、ふと思ったことがある。


「ねぇ、2人とも。お金は?」


「「えっ?」」


俺の質問に2人は、素っ頓狂な声を上げた。

ま、まさかとは思うが…………。


「ふ、2人とも…………?」


もう一度聞いてみる。頼む! 持ってると言ってくれ!


「綾乃さん、持ってないんですか!?」


高宮は、質問には答えず、蒼ざめた顔をして悲鳴をあげた。

朱夏は黙って、下を向き項垂れている。

なんてこったい。


「だ、だって、急に飛ばされたから……あらかじめ持っておくなんて状況じゃなかったし……」


「「………………」」


2人は、この世の終わりに直面したかのような表情をして、押し黙る。

そういえば、2人も俺と同じ状況だったね。仕方ないね。


ともあれ、これは最悪の状況だぞ。全員無一文じゃん。

3人旅は、無一文からというなんとも前途多難なスタートだった。


……さて、ほんとにどうしよう。このままじゃ、飯どころか野宿もあり得る。

町の中なのに、野宿するなんてことは避けたい。

でも、いきなり金を作るなんてなぁ……。

この世界は、魔物を倒して、金が手に入るなんて都合の良いシステムは無いし……。


……あっ、そうだ! もしかしたら、この世界にもあれはあるかもしれない。


「よし! 行こう!」


「えっ……? どこに行くんですか?」


「冒険者ギルドに!」


「「冒険者ギルド!?」」



俺の予想通り、町の中心から少し離れた場所に、冒険者ギルドという看板のついた二階建て程度の大きさの建物があった。

あ〜、良かった〜。これが無かったらどうなっていたか。

しかしまあ、冒険者カードだったり冒険者ギルドだったり、この世界は、本当にゲームに似てるな。


「綾乃さん……冒険者ギルドって何ですか?」


安堵する俺の服の袖を少し引っ張り、高宮がおずおずと尋ねた。

おっと、高宮は冒険者ギルドを知らなかったのか。でも、ゲームとかやってない人は、知らないのが当たり前か。


「冒険者ギルドはね……」


俺は、高宮に冒険者ギルドについて知っていることを教えた。

冒険者ギルドとは、冒険者たちが集う施設のことだ。ここで、冒険者登録をしたり、クエストを受けたりする。あと、ギルドに酒場が併設されていることも多いな。

この世界のやつが俺の知っているやつと同じというわけでは無いと思うが、大きく外れてはいないだろう。


説明を終えた俺は、意気揚々と冒険者ギルドの扉を開け放った。



冒険者ギルドの内部は、俺が想像していたものとそれほどの違いはなかった。

受付とカードの発行機や掲示板などがある冒険者ギルドのテンプレのような内装。もちろん、酒場も併設されていて、冒険者風の男女数人が席に座って、談笑する様子が見受けられる。


おお!? これだよこれ。まさに冒険者たちが集う場所って感じがするな!


俺は、内心感激しながらも表情には出さず、中に入る。

すると、席に座っていた冒険者の1人が立ち上がり、声をかけてきた。


「オイオイ、お嬢ちゃんたち。ここは、お前らが来るようなトコじゃねぇぞ? とっとと、おウチに帰んな! グハハハハハハ!」


冒険者の男が大笑いすると他のやつらもそろって笑い出した。

これもお約束みたいなイベントだな! 生で体験できるとは思わなかった。

ふと、一緒にいた2人の方に顔を向けると、2人はムッとした顔をして男を睨んでいた。

ああ……この感動をこの2人と共有するのは無理そうだなー。残念。


「悪いけど、私たちは立派な冒険者なんだよね。町を襲った凶悪な魔物も斃したこともある。見かけで判断するなんて、三流のすることだよ?」


俺は、絡んで来た男にそう言い放った。

酒場で絡んできた相手に言い返す……これも鉄板だな!

いや〜、こういうの一回やってみたかったんだよ! 初めて異世界に来て良かったと思えた瞬間だったな


顔を真っ赤にして反論しようとした男を無視し、俺たちは掲示板へと向かった。

ゲームだと、ここにクエストの内容が書かれた紙とかが貼られてあって……あった!

さて、どれにしようかな。


「綾乃さん、このクエストって何ですか?」


クエスト用紙を確認している俺に、高宮がそんなことを質問した。


「町の人とかが自分では解決できない問題を依頼して、それを冒険者が受ける……それがクエスト。依頼を達成できたら報酬としてお金が貰えたりするの」


「ああ、それでここにきたんですね」


「そういうこと」


ここで、簡単なクエストを受けて、金を貰えば、無一文状態は、避けられるからな。


「ねぇ、綾乃。こういうのって、どれを選んだらいいの?」


今度は、朱夏がそう聞いてきた。


「う〜ん、まあ最初だし、条件付きじゃないのを選んだらいいと思うよ」


「条件っていうのは?」


「例えば、指定されたレベル以下だとそのクエストを受けられないとか、そういう条件」


「ふーん、そんなのあるんだ」


説明しながら、この世界に条件付きクエストがあるのか確認してみると実際あった。

今回は、こういうのは無視して簡単そうなのを選ぶつもりだ。

……おっ、「森のゴブリン退治。条件なし」か、これなんか良さそうだな。


俺は紙を取ると、早速、受付に持っていく。


「このクエストを受けたいんですけど」


「はい。では、冒険者カードの提示をお願いします」


カードを渡すと受付のお姉さんは、気まずそうな顔をした。

ん? どうかしたのか?


「誠に申し訳ないのですが……あなたたちは、このクエストを受けることはできません……」


「「「………………えっ?」」」


俺たちは、そろってそんな声をあげた。


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