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17 俺が望だと幼馴染に納得させる方法は……

タイトルを変更しました。詳しくは、活動報告にて。

朱夏は、困惑していたが、やがて俺の言葉の意味を理解したようで、目を見開き、怒りを露わにする。


「……ねえ、何言ってるの? 人が死んでるのよ? それなのにそんな訳の分からないこと言って……バカにしないでよ!!!!」


ビリビリと衝撃波を発していると錯覚するほどの怒鳴り声。

怒り狂う朱夏に気圧された俺は、声が喉につっかえて出てこなくなってしまう。

だが、朱夏は、そんな俺を無理やり起こし、さらに胸ぐらを掴み、再び怒鳴る。


「わざわざそんな冗談を言いに来たわけ!? どうせあんたも他の連中と同じなんでしょ!? 望が死んだことなんてなんとも思ってない……。もう……出て行って! お願いだから1人にして!」


怒りながら、涙を流し始めた朱夏は、そう俺に懇願する。胸ぐらを掴んでいた手には、もう力は入ってなかった。

朱夏の本音……というか、本気の怒りを受けた俺は、頭が真っ白になり、うまく考えがまとまらなかった。

しかし、朱夏のある一言が俺に言葉を発する機会をくれた。


「ちょっと待った朱夏。"なんとも思ってない"てなんだ? ま、まさかとは思うが、俺が死んだことは、あいつらの間で、サラッと流されたのか!?」


「気安く呼び捨てにしないでよ! ……そうよ。あいつら、あんたの意識が戻らないことばかり心配して、望が死んだことなんて初めから無かったことみたいにしたの! あんな奴らだったなんて……」


朱夏は、涙を拭いながら、溜め込んでいたものを吐き出すかのように、強い口調で答えた。


……嘘だろ、おい。俺って死んだ時もそんな扱いなのかよ。

1万歩譲って、この国の奴らがそういう姿勢なのは、諦めがつく。奴らにとっては、どうでもいい出来損ないよりこの国の命運を握る勇者の方が大事だろうからな。


だが、クラスメイトが同じ態度だったのは許せん!

少なからず同じ時間を過ごしてきた人間に対して、その扱いというのは、人としてどうだろか。

今すぐ奴らの所に行って、爆発魔法を撃ってやろうか。それか、一層の事、魔族に寝返るのもありか。


「……ちょっと! 黙ってないで、なんとか言いなさいよ!」


「……はっ!?」


暗黒面に堕ちかけていた俺は、朱夏の声で正気に戻される。

危ない、危ない。なんか、踏み入れてはいけない所に足を踏み入れていた気がする。


溜め込んだ怒りを少し発散したのか、朱夏は少し冷静さを取り戻していたようだ。

涙で目を腫らしてはいるが、先ほどのように怒りを露わにはしていない。


そんな朱夏の様子を見て、俺は、もう1度、ここに来た目的であることを明かすことにした。


「さっきは、いきなりあんなこと言ってゴメン! でも、あれは嘘じゃない。俺が死んだ後、この国が崇める女神のベルザに会ったんだよ。そこで、強制的に魂を綾乃の身体に転移させられて、こういう状態になってしまったんだ。信じてくれ!」


俺の告白に、朱夏は未だ半信半疑な様子で、赤くなった目でこちらを睨んでいる。


「……嘘。そんなことあるわけないじゃない。もし、仮にそうなら、あんたが望っていう証拠を見せて」


「し、証拠!? え、えっと……」


答えあぐねている俺の様子を見て、朱夏は、やっぱりという表情を浮かべた。

一応、こいつを納得させる証拠は、あるにはある。あるにはあるが……。


「やっぱり無いんじゃない。はぁ……、もういいから出ていっ……」


「ある! あるにはあるが……言っても怒らないか?」


「はあ? あるなら早く言いなさいよ。別に怒らないから」


よし、怒らないという言質は取った。これで心置きなく証明できる。


「お前さ……高1の頃、知らないおっさんに援交を持ちかけられたことを、クラスの女子には彼氏に迫られたとか嘘ついて自慢してたよな? 本当は、ビビってすぐ逃げたくせに。よくもまあ、あんな嘘言えたよな」


「……えっ!? ち、ちょっと何言って……」


酷く狼狽えているみたいだな。

俺が俺自身であることを証明するための証拠とは、本人と俺しか知らない、朱夏の恥ずかしい過去の話のことだ。

こんなことを綾乃が知っているわけないのだから、立派な証拠になり得るだろう。

でも、高校の時の話だと弱いか。まだまだ続ける。


「中2の時に、急に赤い眼帯着けて、『我が名は"紅き焔纏し舞姫(ファイヤーダンサー)"』とか名乗ってたよな。漢字は無駄に凝ってんのに、読み方はファイヤーダンサーってのは、どうなのよ?」


「……は……は……」


よしよし。大分効いてるな。

これでトドメだ。


「お前が小学生の時の将来の夢って……漫画家だったよな? 前に見せてくれたからよく覚えてるよ。確か、ガチガチの少女漫画で、主人公の女の子の名前がしゅかで、恋人の名前が昔好きだった近所の……」


「うわあああああああ!?!? 死ねえええええ!!! あんたなんか死んじゃえええええええ!!!!!」


自身の黒歴史の数々を発表された朱夏が突然発狂した。そして、俺に向かって突進し、さらに、俺の首を絞めてきたのだ。

首を絞める朱夏の目は、殺意の光が爛々と輝いていた。


や、やばい。こいつ、本気で殺る気だ。このままじゃ確実に縊られて終る。なんとか説得をしなければ。


「ぐっ……お、落ち着け朱夏……。お、俺を殺しても……お前の過去は消せないぞ? く、黒歴史として受け入れるしかないだろ……?」


「う、うるさい、うるさい、うるさい、うるさい!!! 今すぐ死んじゃえ!! いや、アタシが殺す! あんたを殺して、アタシも死ぬ!!」


俺の極めて理性的な説得も、怒りと羞恥で我を忘れた朱夏には、火に油を注ぐだけと言う結果に終わった。

だから、ちょっとは落ち着けよ!


ここから、怒り狂った朱夏を再度説得し、平静を取り戻させるのに数時間費やした。

朱夏と会話ができるようになった頃には、太陽はほとんど沈むかけていて、薄暗く感じた部屋は、本当の闇に包まれていた。


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