マカロ村の異変
マカロ村に近づくにつれ異臭が広がってきた
【鼻がおかしくなりそうだよ…】
アルは鼻を押さえながら言った
「アル俺のポケットの中に入って!少しはましだと思うから!」
【うん。】
アルをポケットに入れ覚えたばかりの魔法を使い自分の周りに魔力の塊を作った
【浩人いつ覚えたの?】
「ルナとリルに叱られた時に色々な魔法を教えてもらったんだ。すぐ役に立つのだけ!」
【そうだったのか。浩人!気をつけて…何か近づいてくる!】
浩人は身構えて周りを見渡し木の陰に人が居るのを見つけ様子を伺いながら近づいていった
近づいてみると手に火傷をした女の子が座っていた
恐る恐る声をかける
「大丈夫?」
「!!」
フラフラになりながら立ち上がり身構える
「大丈夫。何もしないから!マカロ村の人?」
黙って頷き倒れてしまった
「大丈夫?ねぇ君!」
【浩人。ひどい怪我だよ…早く治療しないと大変だよ…】
「そうだね。でもここら辺は異臭が酷いから離れた方がいいね。」
【さっきの水辺まで戻ろうか。】
「でも他に怪我してる人いたら助けなきゃ。マカロ村が襲われてるのは確かだし……」
【うーん。双子を呼んでみたら?】
「そうだな!」
鏡を叩き呪文を唱えるとルナが現れた
『どうした?何かあったのか?』
「マカロ村が襲われてる。この子は逃げ出して来たみたいなんだけど…怪我が酷くて…」
『その子を鏡の前へ。』
鏡の前へ置くと吸い込まれるように消えた
「えっ!」
『リルが治癒魔法で手当てをしておく。浩人は悪いがマカロ村に行ってくれ。ここから、そう遠くないから被害を確認してくれ。私たちも今見ているんだが確認出来なくてな……』
「分かったよ。また連絡する。」
『気をつけて。』
「うん。」
ルナに女の子を任せ浩人とアルは村へと急いだ
シールドの様に魔法が張り巡らしてあるはずが消えているようで
村の入り口に着くと悲惨な風景が広がっていた
あちこちの家が燃えて原型を止めていなかった
周りを見渡すと村の人たちが惨殺され道の真ん中や家の入り口付近で亡くなっていた
「ヴっ…」
浩人は吐きそうになるのを必死にこらえた
まるで地獄絵のように血だまりがあちこちに出来ていた
村を襲った奴等の姿はなかった…
【浩人、大丈夫?】
「なんとか…ヴっ…誰かいないか探さないと…」
【僕も手伝うよ。】
「この匂いはアルには毒だからポケットの中に居て。そこから探してて。」
【でも……】
浩人は手に手袋の様に魔力を纏わせ崩れた家の瓦礫を避けながら生存者がいないか探し始めた
道に倒れてる人も生きていないか確認しながら回った
「はぁ…はぁ…はぁ…」
【大丈夫?】
「大丈夫。でもちょっと休憩する…」
【はい。水】
「ありがとう。」
ゆっくり水を飲みながらも周りを見渡している
そして一点を見つめ続ける浩人を心配したアルが話しかける
【どうしたの?】
「なんか…あそこが気になっちゃって…」
そう言って浩人は石碑の近くに近づいて行った
「……やっぱり…なんか変だな…」
【どうしたの?】
浩人は何も言わず石碑を押したり、揺らしたりしていると石碑がゆっくり動いた
石碑を退かしてみると階段があった
「アル!階段があったよ。降りてみよう。」
【でも大丈夫かな…襲った連中が隠れてたら?】
「その時はその時だよ。怪我した人たちがいたら助けなきゃ。」
ゆっくり下へと降りて行くと暗がりで何も見えなくなった
「アル。暗くて何も見えないね。」
【大丈夫。これを使って!】
そう言ってアルが火の塊を出した
「すごいね。ありがとう!」
アルは喜んでポケットの中でバタバタ羽を揺らしている
火を頼りに奥へと進んで行くと行き止まりなっていた
「やっぱり村の人たちいないのかな…はぁ…」
壁に寄りかかると岩が動いた
「えっ!!」
岩の奥から人の話し声が聞こえてくる
「人が居るみたいだよ!」
【嫌な気配はしないから大丈夫だと思うけど…大丈夫かな…】
「行ってみよう。」
静かに岩を動かして中の様子を確認すると怪我をした人たちがたくさんいた
「大丈夫ですか?」
「誰だ!お前は!」
「あいつらの仲間だな!俺たちを殺しに来たんだな!!」
そう言って怪我した身体を引きずりながら立ち向かってきた
「俺は貴方たちを助けに来ただけです!信じて下さい!!」
「止めなさい。」
後ろの方に居た老人が一声かけると襲って来ようとしていた人たちが静かに手に持っていた凶器を下に置いた
怪我の痛みが酷いのか、そのまま床に座り込んだ
「君はどこから来たんだ?よくこの場所が分かったな。」
「俺は異世界から来ました。ルナとリルに頼まれて来ました。」
「そうか…」
また後ろの方から泣き声が聞こえてきた
近づいて行くと小さい子が怪我をしていて意識が朦朧としている
母親は子どもを抱きしめ泣き続けていた
その姿を見て浩人は苛立ち、憎しみ、悲しみが込み上げ
子どもの手を握り締めた
“ダメだ…死なないでくれ……”
その瞬間、子どもの手から全身にかけ光だした
光に包まれた子どもを抱き抱えていた母親も怪我した部分だけが光だし傷が癒えていき子どもも目を覚ました
「お母さん…」
「ラリー!良かった…本当に良かった…」
母親は強く子どもを抱きしめ次は嬉し泣きしていた
浩人もその様子を見て喜んだ