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立ち上がる勇気  作者: 月島裕
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結斗の心意

浩人は魔具を持ち上げたり片腕づつ持ってみたりを繰り返しながらミーナの後を付いて行く

ミーナは浩人の変わりように不思議な違和感を感じていた

“魔獣が怒らない聞き方をすれば大丈夫じゃないかな…”

そう思いながら浩人に声をかける

「あの……」

「?どうかしたの?」

「なんか…さっきと雰囲気変わったように思うんだけど……何かあったの?」

「あぁ…ちょっと反省して…リルとルナにも怒られたし…」

「そうなんだ…」

「なんか変かな?」

「いや全然!さっきより話やすい」

「なら良かった!ちょっと休憩する?疲れたでしょ?」

「あっはい。」

近くの岩にミーナを座らせ浩人は水を汲みに行った

“それにしても怒られたぐらいで別人みたいになるものなのかな…不思議な人だな…”

浩人は少し離れた川に水を汲みに行くと川の近くに結斗が立っていた

咄嗟に木の影に隠れ

“なんで兄さんがここに居るんだ…。ミーナの所に早く戻らなくちゃ!”

急いで戻ろうと振り返った瞬間、目の前に結斗が現れた

「久しぶりに会ったのに挨拶もなしか?」

「……兄さん」

「ミーナと一緒に居るみたいだな。あの子は元気か?」

「たぶん…知り合ったばっかりだから…」

「そうか…お前はなんでここに居るんだ?」

「魔女の村に向かってたんだ…疲れただろうから休憩しようと思って……」

「そうか……。浩人…俺の邪魔だけはするなよ。」

「………。」

「…聞いてるんだろ?俺が何をしようとしてるのか…あの双子には全て見えているはずだからな。見えているのにな。」

「……。俺は自分の信じる事だけをする。」

「俺の邪魔するって事か?」

「…分からない……」

「はぁ…ならこれは警告だ。俺の邪魔はするな。弟だろうが容赦はしない。」

「……。父さんが俺たちを助けに来ないから?それとも大事な人を殺されたから?」

「…。両方だ…。」

「兄さん…ちゃんと話してくれなきゃ分からないよ。父さんの事だって…」

「父さんは俺たちを見捨てたんだよ…俺は話を聞いて孤独になった…それでも、この世界を救えたら帰れるって言われて俺なりに頑張ってきた。ある日マリーンと出逢った。彼女と居ると全てを忘れられた。本当に…全て…。彼女との間に子供が産まれて俺は独りじゃなくなった。幸せな時間はあっと言う間に壊された……。マリーンは死んだ…。全てを投げ打ってここに来たのに…この仕打ちはなんだ!!お前に分かるか?!あの双子に頼まれて村を離れた途端にマリーンは殺された!!あいつら全部見てたくせに俺に何も伝えなかった。あいつらは俺から全てを奪ったんだ…あいつらの大切なモノを俺は全て壊す!!」

「……全部じゃないよ。俺もミーナもアルもいるよ。」

「……ミーナ……。」

結斗は手で顔を隠した

「兄さん…。」

そう言って近付こうとした

その時辺り一面真っ白になった

「来たか……」

光輝く場所にルナの姿が現れた

『結斗、お前は間違っている…私たちは故意にマリーンを見殺しにした訳ではない。』

「今更、何を言ってるんだ!お前たちは何も言わなかっただろ!挙げ句、浩人まで連れてきやがって!俺からこれ以上何を奪う!ミーナを浩人に合わせて何を企んでるんだ!!消えろ!」

結斗が炎の塊をルナに向けて放った

『結…斗…』

ルナは消えた

「ふざけやがって…」

結斗は怒りに震えていた

浩人は優しく結斗の肩に手を置き《トントン》と叩いた

「ありがとう…浩人…」

「兄さん…俺は何があっても兄さんを悪い人間だとは思わないよ。兄さんには俺たちがいる。もう独りだ、なんて思わないで。」

「ありがとう……。でも後戻りは出来ない…俺も自分の信じる道を行く。お前たちと道を違えたとしても…。だが一つだけ頼みたい事がある。」

「…何?」

「ミーナを頼む。あの子を危険な目に遭わせないでくれ。あの子まで失いたくない……出来れば元の世界に2人とも連れて帰りたいのだが…俺にはまだ、そこまでの力はないからな…。」

「大丈夫だよ!俺が命に替えでも守るよ!」

「待っていてくれ。俺が2人を元の世界に連れて帰ってやるから。それと双子には気をつけろ…ミーナを近寄らせるなよ…」

「…分かったよ。」

話を終えると結斗は炎の渦と共に消えた

「兄さん…」

しばらく結斗の消えた場所を見つめていたがミーナの事を思い出し水を汲みミーナの元へ急いで戻った


ミーナも心配していたようで石の周りをウロウロしながら浩人の歩いて行った道を見つめていた

浩人の姿を見つけて安堵したように駆け寄ってきた

「どこまで行ってたの?遅いから心配してたんだよ…。」

「あっゴメンね…結斗に偶然会って…」

「……。結斗って異世界から来た?」

「そうだよ。ルナも出て来てもめてた……」

「私のお父さんなんだ……。元気だった?」

「知ってるよ。元気そうだったよ!君の事心配してたよ。」

「……。そっか……」

ミーナは地面に座り込んで手で顔を覆った

泣いているようだったが浩人は何も言わず隣に座って空を見つめている

しばらくすると落ち着いたようで話始めた

「ゴメンね…。私お母さんの事は覚えていないんだけど小さい時はお父さんがよく会いに来てくれてたんだ…。最近は会いに来てくれなくて寂しかったんだ……。私、村の人たちからも嫌われてたし……。お父さんに会えるのが本当に楽しみで…会いたいな…」

また涙を流しうつ向いていた

浩人は何も言わずミーナを抱きしめた

「えっ…」

ミーナはビックリして浩人の腕を振り払い

「やめてよ。慰めてほしい訳じゃない!お父さんに会いたいだけなんだから!連れてきてよ!」

父に会いたい思いが怒りを駆り立てる

浩人は悩んでいた自分たちの関係を話すべきか

それを言ったとしたら何かが壊れてしまうのではないかと

アルも結斗の所に行ってしまうんじゃないかと

泣き崩れたミーナを見て決心がついた

「結斗!!見てるんだろう!ミーナに会ってやれよ!ミーナがどうなってもいいのか?!」

「あんた頭おかしくなったんじゃないの!?叫んだぐらいで来る訳ないじゃない!!」

「結斗!!兄さん!!」

「!!!!」

ミーナはビックリして固まっていた

しばらくすると西の方から炎の渦が近づいてきた

「兄さん。」

炎の中から結斗が現れた

「………。」

結斗はミーナを見ると気まずそうに背中を向けた

ミーナはたまらず結斗に抱き付き泣きながら「お父さん!お父さん!」と繰り返している

結斗もたまらず振り返り抱きしめた

その姿を浩人は目に涙を溜めながら見つめていた


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