ルナとリルと勇者もどきの1日
ミーナとアルが言い争ってる中、浩人は何も出来ずに泣いていた
その様子を見ていたルナは時を止めた
急に動かなくなった二人に浩人はビックリした
「アル!ミーナさん!2人ともどうしたの!ねぇ!」
二人に触れるも固くなっていて動かない
浩人は頭を抱え地面に座り込んだ
『滑稽だな…。ここまで未熟な人間を見ると吐き気がするわ。』
「えっ…。」
『名も思い出したくないほどだ。』
浩人は辺りを見渡した
誰も居ない
しばらくすると一部の空間が光りだしルナが現れた
「おい!こちらへこい…」
浩人は言われるままルナの元へ
《パシーン》
ルナは何も言わず浩人の顔を平手打ちした
「いたっ」
「目が醒めたか?」
「えっ!?」
「一度、私たちの空間に戻るぞ。」
そう言った瞬間光りの空間に場面が変わった
「えっ……」
リルが駆け寄ってきて浩人の顔を覗き込んだ
「大丈夫?ルナに叩かれてたね。でも仕方ないよね。」
“仕方ない…俺がダメな奴だから…”
また急にテーブルと椅子が現れた
「座れ。」
「はい…」
3人は椅子に座りリルは紅茶を入れていた
ルナは浩人を睨みつけていて何も話さない
浩人はルナが怖くて下を向いていた
リルが2人に紅茶を出しルナが紅茶をすすりながら話し始めた
「私がお前に頼んだ事はなんだ?」
「……。荷物を運ぶ事…架け橋…」
「お前がミーナに恋心を抱くな…。魔獣まで心を乱すとわ…お前にそんな魅力があるとは思えないのだかな…」
「……」
「リルもあんなに懐いた魔獣初めてみたんだよね……。あなたに何かあるのかな?」
「魔獣は恐ろしい力を持っているんだ。ミーナが死んだらどうする?長にミーナを頼むと言われたのはお前だぞ!あの子は世界を救う鍵なんだ…お前の甘い考えで消えてもらっては困る!」
「…すみません…」
「はぁー。謝って済む問題ではないんだぞ。なんでも謝れば済むと思っているのか?!今までの世界なら通用したかもしれんが私たちの世界では通用しない!」
「……」
「何も言い返さないのだな…余程の腰抜けなのだな…」
浩人の身体が小刻みに震えていた
「言いたい事があるなら言ってみよ。」
震えながら立ち上がった
「お…俺は…好きでここに来た訳じゃない…勝手に勇者とか架け橋とか意味分かんないし……何をすればいいとか言わなかったのお前らだろ!!俺にどうしろって言うんだよ……もう帰りたい…帰してくれよ…」
「それは無理だ。お前の世界ではお前の存在自体がなかった事になっているからな…」
「えっ…」
「お前は居なかった存在。あちらに戻ったとしてもお前を知っている人間はいないって事だ。親、親戚、友達、全て」
「……。じゃ俺どこにも居場所ないじゃないか…」
浩人は床に座り込んだ
「人の記憶など対した価値がないと言う事さ。現におまえも覚えていないだろ?結斗を…」
「結斗……?誰ですか?」
ルナが浩人に近づき優しく頭に触れた
その瞬間に浩人の頭の中に結斗との思い出が走馬灯のように駆け巡った
「あっ…ゆ…い…と…」
「思い出したか?お前の記憶も同じようなものさ…。」
「なんで…忘れてたんだろ…おかしな所はたくさんあったのに…家の中にも学校にも……結斗の影はたくさんあったのに……なんでー!!」
浩人は床を叩き何度も何度も叫び続けた
ルナとリルは浩人が落ち着くのを見守っていた
一時間ほどすると泣き叫ぶのは収まり抜け殻のようになっていた
余程ショックだったようでブツブツと結斗の名前を呼んでいた
「やっと落ち着いたみたいだね。ルナどうする?」
「はっきり伝えた方が本人のためだろ…結斗が今どうしてるか話すよ。」
「まぁね…でも大丈夫かな?頭おかしくなったりして!」
「その時はまた別の異人を探すだけ。」
ルナが浩人に近づき血まみれになった手を治癒魔法で治した
「浩人…結斗の今を知りたいか?」
その言葉に反応してルナの服を掴み何度も頷いた
「わかった。見せよう…」
そう言ってルナは杖を取り天井に向け振るった
振るった場所がテレビ画面のようになり今の結斗を映し出した
「えっ…」
思わず声が出てしまった
画面には結斗が次々に村を襲っている姿が移し出されていたからだ
「これが今の結斗だ…お前の知っている結斗はもうどこにも居ない…」
「……似てるだけだよ…結斗がこんな事するはずがない!結斗は誰よりも優しい奴なんだ!」
「でも今は種族など関係なしに殺して回っている……。お前の魔獣の前の主人が結斗さ…」
「えっ…だって死んだって…アル言ってた…」
「魔獣が主人と離されるのは死んだ時だから、そう思っていても仕方ない…。お前に懐いている理由も分かっただろ?まっそれだけではないけどな。」
「結斗…兄貴と同じ匂いだからか…」
「そうだ……でも私たちは魔獣が離れてくれた事に感謝している…なぜなら魔獣は世界を滅ぼすほどの力があるからだ…もし離れていなければ…この世界は消えていただろう…」
「……。だから俺が選ばれたのか…」
「そうだ…」
「止められるのも…俺…」
「血の繋がりが大切なんだ…結斗を正気に戻すのにはお前が必要なんだ…」
「……。俺が断ったら?」
「お前たちの父親を連れてくるまで…」
「ふーん。そして母さんは俺たち全員の事を忘れるんだ…」
「あぁ…」
「ふざけるな!俺たちの人生だぞ!なんで訳わからない世界のために犠牲にしなきゃならないんだ!お前らは俺たちに何かしてくれんのか?!ただお前らの世界に放り投げただけだろ?!偉そうな事ばっかり言いやがって…」
「……お前たちの父親が私たちの師匠なんだ…師匠は居なくなってしまい…世界は荒れた…私たちでどうにか出来る話じゃなくなっているんだ…だから師匠の息子に助けを求めたが…結斗は…悪に染まってしまった…私たちの責任だ…」
「………」
「だが…私たちに出来る事は限られている…本当にすまない…」
「……父さんが師匠…この空間を作った…」
「あぁ…そうだ…。普通の人間に魔力はない…お前が魔力を使えるのも師匠の息子だからだ……魔獣の事も話しておこう。魔獣は、この世界の王になるであろう人間につく…王たる資格がない人間は即座に殺される…それが掟だ…魔獣がお前に懐いたという事は王たる資格があるという事だ…」
「…俺には無理だ…俺にそんな器はない…」
「魔獣が間違っていたのかもしれないな。こんな弱々しい人間を選ぶとはな…」
「俺はただアルが大好きなだけで王になるとかよく分からない…でもアルと一緒に居たい……。」
「……。お前のような人間がなれる訳はないだろうからな。安心しな。でも、この闘いが終われば魔獣とは一緒には居られない。」
「えっ……」
「王が決まれば魔獣は全て私たちの管理下に戻る。王のみが魔獣を従える事ができるんだ。」
「王にならないと…アルとは一緒に居られないのか…」
「そういう事だ。あと魔獣以外に忠告だ…ミーナへの恋心を捨てろ…」
「……」
「結斗の娘だからな。」
「えっ!?」
「親戚…ってやつだな。そしてミーナの村を襲ったのも結斗だ。」