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立ち上がる勇気  作者: 月島裕
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真実と残酷

ポケットの中で休んでいるアルの様子が気になり気付かれないように覗いてみると思ってた以上に魔力を使っていたようで息が荒くなっていた

浩人はアルの頭を撫でながら早く良くなるように願った

すると浩人の手がまた光出しアルの全身も光始めスヤスヤ眠りだした

その姿をみて一安心しルナに連絡した

『無事、旅立ったのだな。』

「ライルっていう人が皆を迎えに来てくれて。カラスに乗っていったよ。」

『そうか。魔獸の様子はどうだ?』

「さっきは辛そうにしてたんだけど俺が触れたら落ち着いたようで今は普通に眠ってる。」

『……。浩人にも治癒魔法が使えたんだな。』

「よく分からないんだけど……手が光だしてって感じだよ。」

『…。母親もこちら側の人間なのかもしれないな……。お前も結斗も魔力が混ざり合ってる様な違和感はあったが……そんな事は稀なはずなんだが……。』

「稀?」

『両方に違う力があったとしても一つしか受け継げないものなんだ…。だから混ざり合う事はほとんどないんだよ。より強い方を受け継ぐからな。やはり一度、元の世界に戻った方がいいのかもしれないな………。』

「より強い方を……。えっ戻れるの?」

『あぁ。確認してきてほしい事があるんだ。お前には酷かもしれないが……。』

「なんだか怖いんだけど……。」

『…。とりあえず、こちらに来てくれ。』

木々の間が光だした

浩人は光の空間に入っていきルナとリルの待つ空間へと移動した

「お帰りなさい浩人!」

「ただいま…でいいのかな?女の子の様子は?!」

「リルが頑張って治しておいたよ!まだ眠ってるけどね。魔力の回復には少しかかりそうだよ!吸いとられてるみたいだから。」

「マリの奴が魔力を吸いとったみたいでな。もう少し見つけるのが遅ければ死んでいたかもな…」

「良かった…間に合って……。てかマリってすごくない?皮被ったり、魔力吸いとったり。」

「すごいって言うか……。怖いよね!私だったら絶対しないやり方ばっかりだし!」

「だから破門にしたのもあるんだけどな。やり方が残虐なんだ。」

「だよな……。俺もやりたくないわ……。」

「師匠…お前の父親が拾って来たのがマリなんだ。初めは普通の魔力の弱いエルフだったんだが…急激に魔力が強くなり残虐な事をし始めた…私たちはマリと何度も話し合ったが折り合いがつかず破門にしたんだ。」

「………。」

「最初は普通に優しい子だったんだけどね…。マリがおかしくなった時には師匠も居なくなってたし……。」

「師匠が居なくなるのと同時に魔力が強くなった…今まで考えた事はなかったが…マリは師匠の魔力を吸っていたのかもしれない。それで元の世界に戻って師匠の所在と母親の所在を確認してきてほしいんだ。」

「分かったよ……でもあっちとの時差があるんだよね?」

「そうだ。長くは居られない。1日が限度だ…。」

「……1日で分かるかな…」

「母親は家に居るはずだろ。父親も夜には居るはずだろ…」

「居るか居ないか……居なかったら…こっちに居るって事だよね…」

「そうだ…。魔獸はあっちでは普通の動物の姿になるが話は出来るから何かあれば魔獸を通して連絡してくれ。」

「分かったよ。」

その瞬間、光出し目を開けていられなくなった

「ヴっ…」

眩しい光が落ち着き目を開けるといつもの本屋の前に居た

“あっ女の子を助けようと飛び出した場所だ”

不思議な感覚で道を見つめていた

【浩人ボーっとしてる時間はないよ。早く行かなきゃ時間がなくなっちゃう!】

「あっそうだった。ってアルめちゃくちゃかわいい!」

魔獸はしまリスになっていた

【なんでか尻尾の長い生き物になってたよ……】

「しまリスだね。かわいいよ。」

【いやだよ……。それより早く浩人の家に行こう!】

「あぁそうだな!ここから5分もあれば着くよ!アル…」

【どうしたの?】

「こっちに戻ってこれたけど…母さんは俺の事覚えてるのかな…知らないって言われたら?!怖いな……」

【ルナがちゃんと元に戻しておいたって!だから浩人を転生させるのに時間かかったみたいだよ!】

「そっか良かった!早く帰ろう!」

話を聞いて安心したようで走り出した

浩人の世界では居なくなってからまだ1日も経っていなかった

家の玄関の前で立ち止まりドアノブを握りしめながら願っていた

“父さんも母さんもいますように!”

するとドアが開いた

「わっ!ビックリさせないでよ!早く家に入りなさい!中々帰って来ないから様子見に行こうと思ってたのよ。」

「あっゴメン。ボーっとしてて……。」

家に入りソファーに座った

「はあーやっぱいいなー。」

「何?なんか学校で嫌な事でもあったの?あんた、いつもすぐ部屋に行くのに今日はソファーに座って話するし…。それとも体調悪いの?」

「違うから!父さんは?」

「やっぱり体調悪いんじゃない?!」

「なんで?」

「家は母子家庭でしょうが!頭でもぶつけたじゃないの?!」

「えっ…………。」

浩人はビックリして固まってしまった

“父さんが居ない存在になってるって事は…父さんもあっちの世界に行ってるって事”

「浩人?どうしたの?!あんた今日なんか変だよ!?少し横になりなさい。ご飯出来たら呼ぶから!」

「う…ん」

浩人は言われるまま部屋に行きベッドに横になった

【浩人、大丈夫?】

「大丈夫だよ。なんとなくだけど分かってきたような気がする…」

【………。】

「アルもルナもリルも気付いていたんだろ?マリが現れた時点で……。」

【半信半疑かな…そうじゃなきゃいいなって思ってた事だったから。】

「そっか……。でも母さんがこっちに居てくれて本当に良かった…。俺は迷ってしまうから…」

【浩人……。】

「父さんがマリと組んで村を襲ったんだろう。ルナの話だと父さんが居なくなるのと同時に魔力が強くなったって言ってたから…父さんがマリに魔力を与えたんじゃないかなと思ったんだ……そして母さんもあっちの世界に行って父さんを手伝っているんじゃないかなとも思ってたんだ……俺…母さんが敵になってしまったら嫌だから…」

【……。とりあえず状況は分かったからルナたちに伝えてみるよ。】

アルは水晶玉を出してルナに連絡し事情を説明していた

浩人は父親が居なくなっている事にショックをうけている様子だった

ボーっと窓の外を眺めていた

“父さんが敵…結斗は違う…でも…結斗と父さんが会ってしまったら………。結斗は父さんを憎んでいる……俺はどうすれば……。”

【浩人!浩人!】

「あっごめん。なにしたの?」

【ルナが戻って来てって。あっちに戻って浩人のお父さんを探してほしいんだって。】

「あぁ……。」

【浩人……。僕らの世界に戻りたくないの?】

「いや…父さんと戦うとかなったら俺…勝てないと思うんだよね…親と戦いたくはないよね…」

【そうだよね……でもね…。】

「どうしたの?」

【ルナたちに言うなって言われたんだけど…あっちの世界が壊れたら浩人たちの世界にも何らかの影響が出るんだって……】

「それでルナたちは必死で俺に言ってきたのか……分かったよ……帰ろう!」

【うん!ルナお願い!】

そういうと辺りが真っ白になり急に輝き出した

「浩人お帰り。よく帰って来てくれた…礼を言う。」

「こちらこそありがとう…ルナ…リル…アル…もっと強くならなきゃな。てか何日居なかった事になってるの?」

「13日間。アリッサも回復したぞ。」

「助けて下さってありがとうございます。おかげで元気になりました。」

「いや、お礼言われるような事はしてないよ。俺はルナとリルの所に送っただけだし。」

「それでも…貴方に会えてなければ私は死んでいた。本当にありがとう。感謝の気持ちとして受け取って下さい。」

「でも………」

「受け取って下さい。」

アリッサの押しに負け浩人は渋々受け取った

綺麗な色合いのブレスレットだった

すぐに腕につけ

「本当にありがとう!すごく綺麗だし気に入ったよ!大事にするね!」

「喜んでくれて良かった。」

二人は顔を見合わせながら笑っていた



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