表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アデルガーム物語  作者: 逆回転
第一章
4/8

未知の生物たち

(あれ?)


「きゅーん」


クマのように大きなワンコは、不安そうな顔をしながら伏せてしまった。よかった。どうやら、この未知の生物にも俺の特異体質は有効らしい。


(しかし、おかしいな?)


普段なら、目を合わせた後は「じゃれつかれる」のに、デカワンコからは少し距離を置かれている感じがする。いや、怖がられている?


恐る恐るデカワンコの近くに寄ると、震えが大きくなり、今度はお腹を見せて

降参のポーズをとった。


「きゅーん」


(ごめんなさい。あなたに害意はありません。

 服従します。だから許して(涙))


と言われている気がした。


想像以上にビビられている。


ミニチュアワンコの方を見ると、親の真似をしているのか同じく腹を見せて服従のポーズをとっていた。


(くっ!不覚にも可愛いと思ってしまった。)


(こっちも縄張りに勝手に入って済まなかった。

 危害は加えないから安心してくれ。)


というような気持ちを込めて、デカワンコを見ると、腹を見せていた状態から立ち上がり、こっちを一瞬見て「ぺこり」と頭を下げるとミニチュアワンコを口でくわえて森の奥へと消えていった。


・・・・


やはり、誠心誠意で対応すれば気持ちは伝わるものだな。怖がられていたのはどうしてか分からなかったけど・・

動物とは昔からこんな風に意志の疎通が可能な事があった。一時期我が家に居候していた「シロ」も俺の思っていた事を良く汲み取ってくれていたっけ。親友を除いて、周りの人間には一度も話した事がない。いつも動物に纏わり付かれている変な奴と思われていた事だろう。逆に言葉を喋れる人間との意志疎通の方が難しかったりする。ままならないものですな。



・・・・



さてさて。危機が去ったところで、もう一度状況を整理してみよう。あのデカワンコを見た時から心の中で警鐘が鳴っている。あんな「犬」いや「動物」が日本にいるだろうか?否。世界中を探せば突然変異で1体ぐらいは・・

で、この森はどこだ?アマゾンか?いや、アマゾンは赤道直下の熱帯雨林で常夏の筈。なのに此処は涼しく気温は15℃程度かな?という訳で、その回答は間違っている。


続いての不思議は、俺が今着ている服。さっきまで陸上のユニフォームを身に纏っていた筈なのに、夢に出てきた青年が着ていたような旅人仕様の服を着ている。靴も陸上用のスパイクを履いていたはずが、山道でも歩けそうなゴツイ靴を履いている。寝ている間に着せ替えられた?いやいや、誰に?


(きっとあれだ・・)


陸上競技場で倒れた俺は救急車で搬送される途中、臓器密売組織に襲われる。取引先の闇ブローカーに引き渡す途中(おそらく空からの輸送)に事故に遭い、未開の森に不時着。現地人が俺を発見し、ぼろぼろの服を着替えさせ、恩を押しつけるでもなく、姿を見せずに格好良く去っていった。


・・・混乱して訳の分からない妄想をしてしまった。


気づかない振りをしているが、実は「これなんじゃないかなあ・・」と思っている事がある。

今、俺の目の前に1本の木がある。そこに「青く発光」するカブトムシ大の虫が止まり、どんでもない速さで前足を使い木の中に穴を開けていく。同じ虫が何匹か同じ行動を取り、木が青く発光するという摩訶不思議な光景が目の前に広がっている。こんな虫、俺は知らない。ファーブル昆虫記にも載ってなかった。

さっきのワンコといい。未知の生態系としか表現できない。


フラフラと森の中を夢遊病患者のように歩いていくと、森の切れ目が見えてきた。どうやらここで、森は終わりらしい。木陰によって遮断されていた日光が体に降り注ぐ。


目を細めながら、眩しそうに空を見上げた俺は


「ああ、やっぱり・・」


という諦めの言葉を吐いた。


空には太陽が「2つ」見えたのだ。


ずっと否定していた可能性。

そう「ここは地球ではない」という事実。


そう諦観した瞬間、遠くから人の声が聞こえて来た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ