目が覚めると
ゆっくりと目を開ける。
空には木々の合間から、青空が広がっていた。
雲一つない快晴だ。
どうやら俺は地面に横たわっているらしい。
段々と思考がはっきりしてきた。
さっきまで見ていた夢は何だったのか?夢にしては随分と生々しかった。
まるで、自分自身が体験しているようで、某アニメに出てくる「シンクロ率」で言えば400%を超えている感覚だった。
まあ、それは置いといて・・
置いといちゃダメな気もするが、置いといて・・・
現状を確認しよう。なるべく早急に。
俺はインターハイの決勝で走っていた・・・うん。間違いない。
トップでゴールをきって、電光掲示板を見て、ガッツポーズ・・・そうだよ。俺、9秒台出したんじゃん!色々あって喜び損なっちゃったな。明日のスポーツ新聞の見出しは確定だな。
なのに・・・
「ぐるるr・・・・」
獣の鳴き声が聞こえる。うん。目が覚めたタイミングから獣臭いなと思ってたよ。
「よっと」
寝転がった状態から、勢いを付けて飛び起きる。
正面を見ると、犬を「かなり」大きくした生物を俺が見て威嚇していた。
(なんで、森の中で、こんなデカイ犬に襲われているんだ?)
どうやって競技場から、森に移動したのか全く分からない。
分からないが、取り敢えずこの状況をなんとかしないと、俺の命がやばそうだ。
それにしてもデカイな・・・四つ脚状態で立っているのに、俺と体長が変わらない。土佐犬のようにガッシリした体格でドーベルマンのような姿と表現すればいいだろうか?こんな犬種みたこと無いな?RPGに出てくる敵キャラと言われた方がしっくりくる。首筋を噛まれたら、ひとたまりも無いだろう。
(ん?)
デカワンコの後ろを見ると、そのミニチュア版が木の陰に隠れている。子供か?・・・ということは、こいつらの「縄張り」に突然入ってきた俺を排除しようとしているのか?そりゃあ悪かったよ。でも、こっちも気がついたら此処にいたので勘弁して貰いたい。
俺は思考を巡らせながら、デカワンコの目をじっと見つめる。野生動物(?)と目を合わせる事は一般的にどうなのか俺には分からないが「経験則」から目を合わせてみた。
すると、今まで威嚇してきたデカワンコが一瞬「ビクッ」として、目に敵意以外の感情を見せた。
(これはもしかして・・)
自分で言うのも何だが、俺は動物に好かれる体質だ。中学生の時に拾ってきた白いワンコも、人間不信なのか家族の誰にも触れさせなかったのに、俺にだけは心を開いてくれた。
動物園では、檻の中から逆に動物に観賞されたり、猫が大量に生息している島に降り立った時は、自分が「マタタビの生まれ変わりなんじゃ?」と思うくらいに群がられた。
(物心ついた時からって訳じゃなく、中学生ぐらいからなんだよなー。)
何を言っているのか、良く分からないかもしれないが、基本的に動物とは仲良くできる自信がある。その自分でも良く分からない特性が、このデカワンコにも効いているのかもしれない。オオカミや狐等の野生動物や、熊等の大型動物に試した事が無いので、何とも言えないが・・
弱気はいけない。よし!そーゆー事にしておこう。そーしよう。
俺は更にデカワンコの「目」を「じー」と見つめてみた。
すると、デカワンコの脚がガタガタと震え出したと思ったら
「きゅーん」
と、その姿からは想像できない声を上げて、ペットのように伏せてしまった。
(あれ?なんか想像と違う・・・)