永日の演習 6
リド戦以降苦戦することも無く、さくさくと試合をこなして今はお昼休憩。カフェテラスでもいいけれど、せっかくだから外で食べようと言ったルミィに賛同して、ランチボックスを持って植物園の辺りまでやってきた私たち。
いつものガゼボまで行く時間があればそうしたかったのだけれど、ガゼボのある温室庭園群は教室棟を挟んで競技棟の反対にあるのだ。そこまで時間をかけられないという事で、競技棟にほど近いこの場所に決めたのである。
「せっかくだからって意味が分かんないんだけど。」
「良いでしょ別に。こういう一日行事の時に友達と外でご飯食べるのが憧れだったの!」
「友達ねぇ…」
「ルカは居てくれなくていいんだよ?」
「はぁ?言っておくけどお前に付き合ってるわけじゃないからね?」
なんか子猫がじゃれ合っているように見えるのは私だけかな。違うよねフィーも同じ顔してるもんね。
植物園に植えられ育てられているのは、主に薬の材料になる植物たち。医務室のスタッフが主に世話をしているため、その休憩に使われているのかベンチやテーブルがいくつも置かれている。
そんな円テーブルのひとつを借りているのだが、当然のように私の右隣に座ったルカと、左隣に座ったルミィがいつの間にか私を挟んで言い合っているのだから不思議だ。配置的には向かい合っているはずなのに。
「へぇ?ふーん、そう、そうね。ごめんね?ハルドとの仲を邪魔しちゃって。」
「なにその下手な含み笑い。仲が良いのに問題でもあるわけ?」
「う、な、ないけど…」
「けど?」
「…ナイデス。」
おや、口ではルミィはルカに勝てないようだ。しゅーんとしおれてサンドイッチをもそもそ頬張るルミィに思わず笑みがこぼれる。ふと目があった向かいのフィーも微笑ましいものを見るような顔をしていて、互いにくすりと笑みを交わす。
「…フィーたちまで笑う…」
「あらごめんなさい。二人が可愛らしくて思わず。」
「ちょっと待ってなんで僕まで含まれてるの。」
「ああ。ルカにも仲の良い友達が出来て良かったよ。」
「ケンカ売ってる?」
じとりとルミィが咎めればフィーが悪びれも無く肩を竦め。聞き捨てならないとルカが食い付くものだから、楽しくなってわざとらしく言えば割と本気の声が返ってきた。わあ怖い。
「とんでもない事でございます。」
「うっわあ腹立つ。」
わーこのれんこんのマリネおいしいなー水気のあるものを詰められるのも作ってすぐ提供できる学食ならではだよねーなんて考えながらルカに返す。腹立つとか言ってるけど声が全然怒ってないので無問題無問題。そもそもこのボックス自体が割とカッチリしたつくりで仕切りごとに保温保冷できるところがすごいよね。これも卒業生の案だったりするのだろうか。
「…ルカとハルドも仲が良いわよね。」
そう言えば、といった風にフィーが呟く。
「うん?そうだね。というより遠慮がないのかな。弟だし。」
「兄だよ。」
そこだけは昔から譲らないよねルカ。精神的なものを含めたら私が余裕で姉でしょうに。と思ったのが伝わったのか、私のボックスからチキンベニエが一切れ消える。あああちょっとこら公爵嫡子としても君が主張するところの兄としてもあるまじき行為だよひとの食べ物横取りするなんて!
「…ふたご?」
そんな中でフィーが呆然と呟くので、こくりと首肯する。そうすると彼は目を見開いて、
「グレイスコール?」
ほとんど唇だけでそう言う。私?と自分を指すと頷くので、そうだよと肯定する。ファエラへは養子に入ったのだと添えれば、フィーは何とも複雑な顔になった。うーん?フィーは身分とかにそこまで固執するタイプじゃないと思っていたのだけれど、違ったのだろうか。それともやっぱり公爵家は別枠扱いなのかな。
「少なくとも今はファエラだから、気にしないでほしい…と言っても気になるかな。」
「…たぶんお前の考えてる方向で気にしてるんじゃないと思うよ。」
考え込んでしまったらしいフィーにそう言うと、ベニエを飲み込んだルカが同情をにじませた声で言う。どういうこと。やっぱり詳しくは教えてくれないらしい。ルカとフィーの間で通ずるものがあるのだろうか。おとこのこってわからない…ことりと首を傾げれば、ルミィがきょとんと眼を瞬かせるところだった。
◎ベニエ:衣揚げ
言ってしまうと西洋風天ぷら。
フランス料理などで温前菜として出されたりする。




