表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略対象の事情。  作者: 冬晶
ハルド・ファエラという攻略対象
37/83

斜陽の対談 3

 

「待って。」

「はい、いつまでも。」

「そんなのってないよ。」

「私もさすがに心折れたからね。」


 おかげでトゥルーエンド攻略に取り掛かるまでに時間を要しました、と死んだ目でルミィが語った内容は、なるほど恐ろしいものだった。しかしちょっと唐突すぎやしないかこれは。いや確かにレーティングはAじゃなかったけれども、まさかそんなショッキングな展開があろうとは想像もしないでしょうよ…


「でも、実際のところフィーのストーリーから若干そんな気配はあったんだよ。」


 マナキミの隠しキャラは二週目以降一定ステータスでルート解放というのは知っていたけれど、ルミィによればその設定ステータスはフィー、ハルド、ディンの順に高く、だから自然とその順番でルートが解放されていくのだそうだ。


「フィーがあんな口調なのは、父親が原因っていうのは割と序盤の友情イベントで分かるでしょ?」

「そうだね。自分を抑えるきらいがあって、だから能力階級が9より上がらないって話だった。」


 そのせいで上位の治癒魔法がうまく扱えないのがゲームでのフィーという人物だ。けれどその問題は彼との友情イベントを進めていくと解決する。父親と折り合いをつけ、本来の能力を開花させるのだ。入所当初私はそれを…言い方は悪いが利用するためにフィーに近付き、早い段階で能力を開花させようとした。これがなかなか上手くいかず、まああれそれとごたごたを起こしたりしたのだけれど、それは今は置いておこう。


「うん。フィーのストーリーはそれを主軸に恋愛イベントが追加されていく形で進んでいくの。フィーがああなったのは、フィーが母親に似てたから。そして早くに妻を亡くした父親から、呪いみたいに“お前は母親そっくりだ”って言われ続けてきたから。意識的に父親の望む姿になろうとして口調を女性に寄せて、無意識下で母親になかった治癒魔法の能力を抑えていたから。」

「、それは、」


 今のフィーの過去と同じだった。最初知ったときは、いくら設定に正当性を持たせるためだとしてもなかなか重いんじゃないかと、世界のつじつま合わせに若干引いたものだが、そうではなかったのだ。


「父親と決別するのがノーマルエンド。和解するのがトゥルーエンド。友情イベントだけだと詳しい話は聞けないけど、たぶん決別してるんだと思う。」

「そ、うなんだ…」


 最初から、この世界はそうなる様になっていた。そう流れるように組まれていた。原作から、楽しいきれいなだけの世界ではなかったのだ。

 であるならば。あれは、決別だったのだろうか。だとすれば、もっといいやり方があったのだろうか。私のしたことは、また私は、選択を間違えたのだろうか。


「…今の自分があるのは、助けてもらったからだって。」

「…え、」

「フィーがね、言ってた。私が不自然にハルドを避けてたから、怒られたんだよ。」


 “アンタが何を思ってあの子を忌避しているのかアタシには解らない。理由があるのだろうけど、話もせずにあの子の人間性を疑っているって言うなら、本当に怒るわよ”ってね。あれは結構迫力あったなぁ。そう言ってルミィは肩を竦めた。


「そ、か…」


 不意にじわりと心が温かくなる。良かった、と、思っていいのだろうか。くすぐったいような、照れ臭いような、それでもやはり後ろめたいような。解らないけれど、きっと、この前の警告は、私自身を案じてのことでもあったのだろう。そう思うとやはり嬉しい、と、そう思った。


「…でも、私はどうしても、ハルドと距離を置かなくちゃいけなかった。」


 さわりと風が吹く。陽はいよいよ傾き、褪せた色の空はもういくらもしない内に東からゆっくりと紫に染まっていくだろう。揺れる山吹は空気に溶けていくようで、伏せられた目は、その表情は、彼女を一層儚く見せた。


「ハルドは孤児だった。どういう経緯でかはわからないけれど、裏路地で倒れていたところをディンに拾われて、ファエラの養子になって、ディンの部下として…ううん、思い通りに動かせる駒として、育てられた。トゥルーエンドで自分の意思を優先してヒロインを選ぶんだけど、その後どうなるのか、そこまでは書かれてない。でも、スタッフロールの後ろに帰還道中の絵が流れていなかったから、その後は本当に無かったんじゃないかって言う人もいた。」


 ハルドの過去やディンとの関係は、ぼかされつつもストーリー内で語られるのだそうだ。


「…ディンルートが解放される条件は、高いステータスと、もうひとつ、絶対に必要なものがあるの。それはハルドとの恋愛イベントの最初、出会いのイベントを起こすこと。」


 ディンのトゥルーエンドを目指している途中で死んでしまった。だから、そこから回避策を考えることはできない。そもそもがルート解放できるほどステータスが上がるわけがないだろうと思っていた。けれど、ゲームでは入所当時8であるはずの能力階級が実際入ってみれば階級10で。高学部進学の際“危険性から階級Jに格上げする”と通達が来るはずがそれも無く。しかし、だからと言って婚約解消という目標がある以上手を抜くということもできず。なればとれる道は自立エンドしかなかったのだと、ルミィは語った。


「…誰か他の攻略対象のエンドに向かわなかったのは、なぜ?」


 問えばとうとう、ルミィはその顔をくしゃりと歪ませた。


「二つの条件を満たすとね、その時誰か他のルートを進んでいても、ディンルートに切り替わってしまうんだ。そうなると当然愛情度が足りなくなって、ノーマルエンド確定。だから、ハルドからの好感度も最低に近付けたかった。」


 ネットでは、バグ技なんかで不正をするユーザーに対する戒めも込められているんじゃないか、って言ってる人もいたね、とルミィは無理やり笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ