閑話 舞の思い
どうもこんにちは。倉田舞です。
今日は演劇部でみんなの服のお披露目会があります。楽しみです!
そして、放課後順番に服のお披露目がされ、刹那くんと石田先輩と私が終わって、次は空狐くん。
準備室のドアが開きます。
「さあ、空狐、観念しなさい!」
「すでにしてるよ……」
ハルちゃんに連れられてとぼとぼと空狐くんが部室に入る。
入ってきた空狐くんは真っ黒なゴスロリ調のドレス姿。
空狐くんのウィッグをつけられた銀に近い灰色の髪と黒い服がどことなくコントラストを彩り、フリルをたっぷりあしらったかわいらしいデザインでした。
「はは、いいぞ空狐!」
騎士風の服を纏った刹那くんが楽しそうに笑います。
はあ、空狐くんかわいい。
昔からかわいかったからね。
私と空狐くんが出会ったのは私が六歳の頃。
お母さんが病気で倒れて、月狐さんがそのお見舞いに来た時でした。
『はい、この子が私の息子の空狐だよ』
『は、初めまして。木霊空狐です……』
月狐さんに押されて、自己紹介のために前に出てきたのは可愛かったなあ。
昔の空狐くんは大人しくてかわいくて、いつも誰かの後ろを着いてきてました。
『くーちゃんこっちこっち!』
『ま、待ってお姉ちゃん』
お母さんが入院してたから私は自然と空狐くんと一緒でした。兄弟が欲しかった私は、同い年だけど誕生日が私の方が早いからってお姉ちゃんって呼ばせてたっけ。
ちょっと無理があったけど、まるで弟ができたようで嬉しかったなあ。ハルちゃんと竜馬くんと友達になったのもそのくらいだったね。
友達がいなくて一人で遊んでばかりだった私の世界が空狐くんのおかげで広がりました。
楽しかったなあ。
そういえば、空狐くんが女の子と思われてて、竜馬くんに告白されたこともあったっけ。
それ以来長かった髪を切っちゃったのは残念だったけど。
それから空狐くんは毎年大型連休ごとに遊びに来た。私は空狐くんが遊びに来るときがすごく楽しみだった。
ただ、一時期を境に来なくなって、すごく寂しかったです。なんで空狐くん来なくなったのかな?
それから、私が高校に上がる頃に、お母さんとお父さんが事故で死んでしまいました。
ありふれた交通事故。それで二人は帰らぬ人になってしまった。
悲しかった。寂しかった。一人広い家に残されたことが余計に辛かった。
お母さんとお父さんは駆け落ち同然で私たち家族の親しい親族は月狐さんたちくらいしかいなかった。
ハルちゃんや竜馬くんも心配して色々してくれたけど、家にいるとすぐに自分が一人なんだって思わされた。
悲しくて寂しくて、私は死んじゃおうかと思ったことも何度かあった。だけど、
ある日、一本の電話がありました。
「はい、倉田です」
『こんにちは舞ちゃん』
明るい声。これって、
「月狐さん?」
『うん、久しぶり』
お母さんたちの葬式であったのは二ヶ月前だからうん、久しぶりかな。
まったく変わらない月狐さんを思い出す。くーちゃん、ううん、空狐くんはずいぶん背が伸びてかっこよくなってたなあ。
「なんですか?」
『うん、あのね、くーちゃんが常磐学園に転校することになったんだけど』
えっ? 空狐くんが?
『それでね、住む場所が見つからなくてよかったら舞ちゃんのところで住まわせてもらえないかしら?』
空狐くんがくーちゃんがうちに住む?
「いいですよ!」
私は即答していた。
それから、私はその日が待ち遠しくなった。
空狐くんとまた会える。一緒に住める。それだけで私は寂しさがなくなった。
そして、あの日、公園に行けば約束の時間より早く来ていた空狐くん。私はそれを見てすごく嬉しくて、約束より早く来てたことにやっぱりかわらないことがおかしかったです。
空狐くんは私が辛い時にいてくれた。空狐くんは私が寂しい時にいてくれた。
空狐くん。これからもずっと一緒にいてね。私を独りにしないでね。
鈴:「ひ、久しぶりに狐火投稿できた……」
刹:「ははは、今年中に終わらすのは絶対無理だな」
鈴:「言うな……」ということで、今回はメインキャラである舞に焦点を当ててみた」
刹:「空狐に対する思いの原初だな」
鈴:「本来、舞はもっと空狐への独占欲やらなんやらが強いキャラを考えてた。でも、いつの間にかこの形に落ち着いたんだよな」
刹:「ふーん、まあ、片鱗は少しだけあったと思うな」
鈴:「それでは、また次回!」
刹:「アデュー!」