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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第十六章 美狐さんのいる日々
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第八十二話 美狐のいるデート風景?

 喫茶店で、僕は胸焼けを起こしそうになっていた。

 いや、だって美狐さんスイーツばかり注文するのだもの。

「次はこのケーキとパフェをお願い」

 ついに全てのスイーツを注文する。周りで見ている人たちも純粋に驚いたり、僕と同じ気分なのか口を押さえている。

 僕だって甘いの好きだけど、流石に美狐さんほどじゃない。

 さっきから飲んでるお代わり自由のコーヒーが甘い気がする。にまったく砂糖入れてないのに。

 てか、肥りませんかそんなに食べて?

「あ、空狐、私はこのイチジクのタルトお願い」

 普通のフォークを使いながらイヴがそんな注文してくる。これ見てよく食べられるね……


 喫茶店を出てからも美狐さんは寄り道をし続けた。

 スポーツセンターにあるパンチングマシン。美狐さんは拳を振りかぶり、思いっきり拳を叩きつけた。

 結果、ミットの支柱が折れ、マシンの画面に突き刺さる。

「パンチングマシンがッ!」

 どんだけバカ力?!

「脆いわね」

 それだけですか!? あと強い。強すぎるよ!

 さらに、バッティングセンター。大リーガーよろしくバットを突き出すホームラン宣言。

 そして、飛んでくるボールを全てピッチャー返し。余さずバッティングマシンにぶつけて壊す。

「ああっ! バッティングマシンが!」

 壊れたら次のマシンに移るというのを続けてマシンはあと二つ。そして、ついにまた一台を破壊する。

 あまりの出来事に野次馬は全員あんぐりと口を開いている。

「あと一つで全て破壊ね」

「狙って当ててたの!?」

 いや、僕だってあれくらいの球は見えてるから打てるけど、こんなの無理!!

 爆発しそうな店員から逃げるために、最後のバッティングマシンに移ろうとした美狐さんをなんとかスポーツセンターから引きずり出す。が、次に向かったのはゲーセン。

 まずはクレーンゲーム。

「これで全部」

 と、最後の人形を取る。ぜ、全部一回だけで?!

「ちょ、これは多過ぎ!」

 あ、でもなのちゃんの人形は貰っていこ……ぶふ!?

 だぶりの人形を持っていこうと思ったらデコピンされた。

「これは私の」

 さいですか……

 くそ、なにか彼女を止める方法は……そこで目に入ったのはある体感ゲームの躯体。そうだ!

「美狐さん、あれやりましょう! あれで僕が勝ったら刹那くんのところに行きますからね!!」

 ふっふっふ、あのゲームの名前は名作アーケードゲーム、ウォーズリンク。

 僕はあのシリーズの大ファンで、かなりやり込んでいる。自分で言うのもあれだけど、上級者を名乗っていいと思う。

「いいけど」

 あっさり美狐さんは頷く。よっしゃあ!

「じゃあ、始めましょう!」

 僕は意気揚々とゲーム機に乗り込んだ。


 十分後、結論から言えば僕は負けた。

「僕のスサノオが……」

 がっくり地に手をつく。

 僕が選んだのはスサノオ参式。扱い易い万能機のスサノオ壱式を上級者向けにした機体。

 近距離に特化させた結果、中距離武器と格闘にクセがあるものの、うまく扱えればかなり強いんだけど……

 対して、美狐さんが使ったのはムラマサ。これまた中級者以上のクセのある機体。

 重武装、高機動を両立した結果APが最弱クラスになった機体で、当たらないように戦わないといけない。

 そして、美狐さんはこれをすごく上手く使った。

 見事なヒットアンドアウェイでこっちのAPを削る。僕が仕掛けたオプションの地雷を避ける。奥の手のキャストオフでの高速形態もまったく歯が立たなかった。

 てか、絶対に初心者じゃない。あんな流麗なカットバックやデルタターン(どっちも上級テク)はやり込んでいるとしか思えない! くそ、まったく戸惑わずに操作している時点で気付くべきだった!

「さあ、もう少し付き合ってもらうわよ空狐?」

 すっごく、すっごくいい笑顔でそう告げられた。もう好きにして……


 それからも、美狐さんは脱線した行動が続いた。

「はぁ、いい加減行きましょうよ」

 散々遊び回って今は中央公園にいる。僕はベンチで一息ついて売店で買ったタピオカジュースを飲む。うまいよねタピオカ。ナタデココに並んで好きな触感だよ。

 美狐さんがソフトクリームを舐めながら――

「はいはい、わかったわよ」

 と生返事を返す。本当にわかってくれたんですか?

「てか、何で僕は律儀には付き合ってんだろう?」

 今更疑問が湧き上がる。案内するとは行ったけど、ここまでする義理はないんじゃないのか?

「旅は道連れ世は情け、そしてあんたは私の下僕」

 ……をい。

「いつ下僕になったのさ!」

 つい声を荒げてしまう。初対面なのに下僕にされる覚えはない!

 舞さんなら下僕になっても……アホか僕!!

「ソフトクリーム飽きたから、飲み物と交換ね」

「そこはスルー!?」

 ずいっとアイスクリームを突きつける美狐さん。

 つーっと、コーンの縁に溶けたアイスが今にもこぼれようとしている。

 しかたないなあ……呆れておとなしく受け取り、ソフトクリームを舐める。

「間接キスね」

 美狐さんのニヤニヤとした笑みにぶーっと吹き出す。は、謀ったな!?

 だが時既に遅し、美狐さんも口をつけて僕が飲んでいたジュースを流し込む。勢いよく流れ込んだからか、美狐さんの口の端から僅かに漏れた滴が彼女の白い喉を伝っていく。

 もうツッコム気力もなくアイスクリームを口の中に放り込む。そしたら……

「空狐くん……」

 驚きに再び噴き出しかけて、なんとか飲み込む。

 振り向くと、そこに……

「ま、舞さん」

 どこか、光の灯らない目を僕に向ける舞さんがいた。


鈴:「コメントが欲しい」

刹:「いきなりか」

鈴:「というわけで、美狐編第二話です!」

刹:「いきなり話題変わったな」

鈴:「舞も出てきたし、これからどうなることか」

刹:「まあ、空狐ご愁傷様ということで……」


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