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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第十四章 舞の頼み、そして挑戦
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第七十三羽 前夜祭

 さて、一週間後に舞と刹那が戦うことになった時、思わず私は頭を抱えてしまった。

 舞は刹那が弱いと思いこんでいるがそれは間違い。かなりなんて言葉が生易しいくらい刹那は強い。まずはそれを説明する必要がありそう。


 というわけで舞が刹那に宣戦布告した後、

「さて、来週刹那と戦うってことだから、今日は講義を始める前に刹那について説明するよ」

 いつものブリーフィングルームで舞がはーいと元気に返事を返す。

「『己を知り敵を知れば百戦危うからず』ですよね!」

 そうその通り。

 だからこれは非常に大切な話。舞にどれだけ無謀な挑戦をしたのかちゃんとわからせないと。

「まず、魔術的な面では刹那は特級のS+ランクに対して君は無免許のおそらくBランク相当。それに刹那は接近戦でも空狐よりも強い銀狐と互角に渡り合えるんだから、近づかれたら勝ち目はないよ」

 刹那は別に運とかではなく自身の力と努力で特級などの地位を勝ち取っている。それに、私との模擬線でもほぼ互角。

 さらに、いくつか勝てない要因を語る。最大魔力保有量と最大出力の差など。さらに以前、龍と喧嘩した時の話などもする。

「こういうのもあれだけどたった一ヶ月鍛えたからといって勝てるような相手じゃないよ」

 と、いうと舞はうーんと、首を捻る。

「そういえば、空狐くんがこっちに来る前ってクールな感じでしたよね」

 まあ、あの頃は気取ってたって言えるし、うう、そういえばいろいろ恥ずかしい目にも合わされてるわね。今度そこんところの落とし前つけないと。

 でも、なんで最近あそこまでへたれちゃったんだろ? まあ、それは今度考えようかな。

「とにかく、舞じゃあまだ正攻法では無理だから」

 と、言うと舞はうんと力なく頷く。

「なら、手段を選んでられないんですね」

 この時、私は気づかなかった。舞の意外な才能に……


 僕は刹那君の部屋に来ていた。理由は簡単、一週間後についてだ。

 ぶっちゃけ僕は心配していた。確かに刹那君は強い。実際手合わせしたことからそれをよく知っている。

 だが、二つほど気になることがある。舞さんの成長速度と、朱音さんだ。

 正直言って、舞さんの成長速度は非常に早い。たった一ヶ月で、あんな高出力の魔術を使えるようになったというのはとてつもない脅威だ。

 さらに、セコンドの朱音さんの存在。なんか、嫌な予感がひしひしとしてくる。

 うん、心配して損はないね。そのことは刹那くんもわかってるだろうから部屋で作戦を練ってるだろうが、僕も一緒に考えてみよう。

「刹那くん、いる?」

 さっき部屋に戻るっていってたし、ちゃんといるとは思うけど……

「おう、空狐、入っていいぞ」

 返事をもらってドアを開けて部屋に入ると刹那くんは前のめりに机に向かっていた。作戦でも考えてるのか?

 そう思って僕は彼の方に近づく。

「あのさ、今度の決闘なんだけど……」

 だが、近づくにつれてだんだん僕の言葉は尻すぼみになっていってしまった。

「問題、彼はいったい何をしている?」

 それを見かねて頭の上のイヴが僕に問題を投げかける。

「回答、机に向かって機械弄りをしている」

 僕も投げやり気味に答えてから頭を抱えた。なんだこりゃ? てっきり作戦を考えてるとばかり思ってたんだが。

 机ナンバーが振られた細かいパーツの入った袋に、工具箱が置いてあり、それを隅に寄せて刹那くんは設計図片手に半田ごてのようなものを持って作業をしていたのだった。

「なにしてるの?」

「見てわかんないのか? メカ作ってる」

 こっちに向き直ろうとせずにそばに置いてある袋から部品を取り出して作業を続けつつ刹那くんは答えた。

「いいの来週の決闘の用意しなくて?」

 僕の問いにふふんと刹那くんは笑う。

「いいか、空狐、今度の決闘に関して俺にも考えがちゃんとあるんだ」

 おお!? だからこんな余裕があるのか。僕の杞憂みたいで安心したよ。

「で、考えってなによ?」

 頭の上のイヴが刹那くんに問いかける。

「ふ、俺の考えか? それは……」

 わくわく。

「なにもしない!」

 胸を張って答える刹那くん。

 ずでんと僕たちはこけた。

「な、なにもしないって、考えじゃないわよ!!」

 すぐに頭の上に乗っていたイヴが飛び上がり怒鳴る。

 その間に僕はそばのタンスにしがみつきつつ起き上がる。

「で、どんな理由なのさ?」

 僕の問いに刹那くんは、こちらに向き直って腕を組む。そして、

「男の意地だ」

 神妙な面持ちでそんなことのたまわりやがりましたよこのやろう。


 こうして刹那くんを作業机から引き摺り下ろし正座させての質問会が始まった。

「で、どういうことなのかな刹那くん?」

 事情聴取する刑事よろしく窓を閉め、部屋を暗くし、作業机から引っ張ってきたライトを唯一の光源としてコタツを挟んで向き直りながらイヴが問いかける。

 カツどんも置いてあるが、別に刹那くんは食べない。そもそもドラマで犯人に食べさせるのはフィクションだ。本当は刑事が食べる。

「言葉通りの意味だ。あそこまで言われてただ黙っていられるか? いや、無理だ」

 反語で強調する刹那くん。

「うん、そこはわかったから。それがなんでなにもしないと直結するのかな?」

「だからこそ、俺が弱くないことを証明するためにも、なにもしない。そして、一週間がんばっていた倉田さんをあっと言わせるのさ」

 僕の質問ににっと笑う刹那くん。うーむ。

「きみ、亀とウサギの話知ってる?」

「知ってるけど?」

 そうか、知ってるか。ならあえて言わないけどウサギだよ。今の君はそのウサギだよ。頼むからこの質問の意味を察してくれ。

「ま、大船に乗った気で期待しててくれ!」

 察してもらえなかったヨ……大船だけど、底が浸水してるね。気づかないくらいゆっくりと。気づいたときはおしまいだ。

 そして、席に戻ろうとする刹那くん。僕は仕方なく用意したカツどんを食べ始めるが、

「あ、ところでお前ってさあ、性能高いけど武器一個の銀のスーツと性能は劣るけど汎用性が高い赤のスーツどっちが好き?」

 と、途中でこっちに振り返って聞いてきた。

「ん? どっちも好きだけど、なるなら僕はたっくんのほうが……ってなに作っとんじゃあ!」

 質問の意図を一瞬で理解して僕は狭い部屋の中で飛び上がる。

「レディ、エクシードチャージ」

 それに対し投げやり気味にイヴが呟く。

 そして、僕のクリムゾンスマッシュが刹那くんの背に炸裂したのだった。残念ながら灰化しなかったけどね!

鈴:「余裕過ぎるだろお前?」

刹:「ふっ、獅子はウサギを狩るにも全力を尽くすと言うが、俺はそうじゃないんでね」

鈴:「その余裕どこまで続くのかな? まあ、それは置いといて、俺はたっくんもいいけど啓太郎が好き。あいつはいいやつだ」

刹:「俺は木場と草加だな。あの二人はなかなか」

鈴:「ネタについてこれない方すいません。それではまた次回」

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