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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第十四章 舞の頼み、そして挑戦
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第七十話 準備開始!

「じゃあ、行ってきます」

 僕がそう言って家を出ようとしたら、

「あ、空狐くん」

 舞さんに呼び止められた。振り向くと寂しそうな彼女の表情。ちょっと胸が痛む。

「なんですか?」

 少し、舞さんは悩んでから聞いてきた。

「あのね、今日、何の日か覚えてる?」

「え? なにかありましたっけ?」

 僕はまったく心当たりがないようなふりをする。少し、心が痛むけど、こんなところでみんなの作戦を水泡に帰すわけにいかない。

 僕は心を鬼にしてそう聞き返した。

「ううん、なんでもないよ。じゃあ、いってらっしゃい」

 寂しそうに僕を送り出す。舞さん。ごめんなさい。


 僕は舞さんのサプライズパーティーの準備をするはみんなと合流する前に頼まれたものを買いに行く。で、必要なものを買って、重みで破けそうなビニール袋を片手に下げながら刹那くんの家に上がる。

 当然ながら中はパーティーの準備でドタバタしていた。刹那くん宅に到着。すぐに台所に食材を持っていくと、そこは……戦場だった。いや、比喩とかじゃなくてさ。

 荒れ狂うガスコンロの火、空中に踊り出す食材、軽快な包丁の音、そして……

「軍曹、次の料理まで、あと何分かかる?」

「あと六分ほどですサー」

「遅い。貴様は新兵か? 時間もない三分で仕上げろ」

「サーイエッサー」

 朱音さんが聞くと、フライ返しを握り、鍋と格闘する刹那くんは料理だけを見て振り返らずに返事を返す。

「アルファ、ブラボー、チャーリー、フォクストロット状況は?」

『アルファ、飾り付け順調です。予定時間内には完了します』

『こちらブラボー、料理盛り付け完了、これよりチャーリーの補助に入る』

『チャーリー、予定ノルマの八割を消化』

『こちらフォクストロット、ターゲットにいまだ動きなし』

 朱音さんの持つレシーバーからハル、龍馬、アルトちゃんの声がした。

「まるで軍隊ね」

 僕の頭の上に座っていたイヴに頷く。

 なんだこの会話? 僕がいないうちに何があった?

「朱音さん、材料ここに置いとくね」

 朱音さんは振り向くと非常に真面目な顔、少なくとも戦場には似合うがパーティーには絶対に似合わないと断定できる表情で頷く。

「たった今デルタが帰還した。軍曹、予定時間になったぞ」

「申し訳ございませんサー、あと一分下さい」

 すると朱音さんはレシーバーを放し、

「このバカ者が!!」

 すごい跳び蹴りをしました!? 刹那くんは吹き飛び、壁にぶち当たって跳ね返ってから地面をバウンドする。そこにさらに朱音さんが背中を踏みつける。

「デルタ、料理が焦げる。すぐに盛り付けろ。軍曹、貴様自分が何をしたのかわかってるのか!?」

 さらに朱音さんはげしげしと刹那くんの背中を蹴る。うわ、やめてあげて。と言いたいけど、怖くて言えない。すまない刹那くん、また僕は君を見捨てるよ。恨むなら自分を恨んで。

 そんな風に心で呼びかけながら僕は中華鍋の中の料理を大皿に盛り付ける。中の料理は野菜炒めで、パリパリのキャベツ、鮮やかなニンジンを初めとした緑黄色野菜にほどよく火の通った豚肉。見てるだけで食欲がわいてくる。少なくとも失敗は見当たらないが?

「わかりません。サー。自分は盛り付けを行ってただけです」

 うわ、まだ軍隊ごっこ続けてるよ。スゴいのかバカなのか判断しかねるが。

 僕はそっちにはむかずに盛り付けをしてから鍋をコンロに戻す。

「貴様は盛り付ける時に皿を取り出しに鍋から離れた。それでは料理が焦げてしまうではないか愚か者!」

 朱音さんはそう言って背中につま先をぐりぐり押しつける。

「このミジンコ、シスコン!」

 容赦のない罵倒の中、

「……いくらなんでも俺泣くよ?」

 いや、もう泣いてるじゃん。何だかなあ……


 そんなこんなでパーティーの準備が完了した。

 刹那くん家の広い庭が会場で、庭に出したテーブルの上に白いマットを引いてその上にはご馳走が並んでいる。一部には見たことがない料理もある。

 その中心には舞さんの誕生花の向日葵が飾られている。

 さらにテーブルから少し離れた場所ではバーベキューの準備も行われている。

「よし、そろそろ舞さんを呼んできて」

 準備が終わったのを確認して刹那くんが僕にそう指示を出した。

「おっけー」

 僕は指を立てて返事をした。


 というわけで僕は家に戻ってきた。ふふふっ舞さん喜んでくれるかな? 僕は驚く舞さんの顔を想像してほくそ笑みながら舞さんの部屋の前につく。

 よし、僕はドアノブに手をかけて、

「舞さ〜ん」

「うふふふふふ、いい考えかも」

 ……はい? 部屋の中心で舞さんが陰気なオーラを垂れ流していた。

 えっと、舞さん? あなたの背後から非常に邪悪なオーラが見えるのですがどうしたのですか?

「ふふふ、色んな人と関わっちゃったから、わたしの誕生日忘れちゃったのかな? なら他の誰も見ないようにわたしだけ見てくれるようにすれば」

 ……ヤンデレになっとる! ヤンデレになっちゃっとる! このままだと誰かが犠牲になる!

 急いで部屋に入る。

「ま、舞さん!」

 バタンと扉を開いて部屋の中に入る。

 すると舞さんはクルッとこっちに向き直りいつもの笑顔で笑いかけてきたが……その手にはロープが握られている。怖い! 怖いよ!!

「あっ、ちょうどよかったあ空狐くん、今縛、会いに逝こうとしたところだったよ」

 なんか、言葉の一部に狂気なるものが混じってたのは気のせいでしょうか? そして、今はその笑顔が逆に怖い。

 僕は恐怖と身の危険に尻尾が縮こまりそうになる。

「あ、なんか弁明ある? 今日が何の日か忘れてたことについて」

 僕は舞さんから感じる威圧感にすぐにでもここから逃げ出したい衝動に駆られながらもなんとか耐える。

 背を向けたら最後であることはわかるから。

「あ、あ、あのね、じゅじゅ準備がでできたたからみみんなが呼んでこいって」

 声を裏返しながら舞さんに伝えると舞さんはきょとんとした表情になる。

「みんなが?」


舞の誕生日イベント。

さて、ここで皆様にお聞きします。今回、舞さんの誕生花として登場した向日葵の花言葉はなんでしょう?

答えは次回です。

それでは、また。

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