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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第十三章 コミケ
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第六十八話 コミケの戦い後編

 で、現在、僕はコスプレ広場にいます。なぜか? 企業ブースに入ろうとしたらその手前にあるから捕まったんだよ!!

「うわー! 霞たんだ!!」

「すげー、本物みてえ!!」

「はあはあ、お嬢さん、お兄さんと遊ばない?」

 はい、こういうことです。写真を撮ろうとした人たちに囲まれたんです。あと、僕は男だーー! 誰か気づけよーー! むしろ気づいてくださーい!

 無遠慮に焚かれるフラッシュに僕が困惑していたら……

「こら! あんたたちなにしてるの!? その子怯えてるじゃない!!」

 他のコスプレした人たちが見かねて助け舟を出してくれました。

 その後、大勢の人間にモラルやマナーについて注意されすごすご去っていくオタクたち。た、助かった……

「大丈夫だった? まったく、こういうイベントではちゃんとマナーを守ってほしいよね!」

 すぐにリーダー格らしきお姉さんが声をかけてくる。彼女は心底憤慨しているのか表情も厳しい。

 お姉さんはすらっとした長身で、黒い髪に上から二つほどボタンを外したワイシャツと黒いブレザーと模造刀、ああ姉御ですねわかります。

「あ、大丈夫です。ありがとうございます」

 ぺこりと頭を下げるとお姉さんはいいのよと手を振る。

「コスプレ仲間を助けるのは当然のことよ。まあ、君かわいいからしかたないかもね。そうだ。よかったら」

 ささっとお姉さんがメモに何かを書いて渡してきた。

 これって……

「私が運営してるコスプレサイト『衣装好きの集い』のURLよ。よかったら覗いて見てね」

 それだけ言うとお姉さんはじゃねー、っと去っていく。その颯爽とした後ろ姿はとてもかっこいい。でも僕が男だってしったらどんな顔するかな?

「いい人だね〜」

 横からの舞さんの言葉に頷く。

「ですね。なかなかああいう雰囲気に踏み込むのは勇気が……って、舞さん!?」

 振り向くと髪をツインにして白いバリアジャケットと杖……つまり高町なのはさまの格好をした舞さんがいた。

 髪の色が違うけどあまり違和感がないよ!

 舞さんは楽しそうにやっほーと笑っている。

「な、な、なんで舞さんがいるの!?」

「私が呼んだから♪」

 そう言ったのは、にやにやと底意地の悪そうな笑みの朱音さん! な、なんでここに?

「なんでって、私も参加してるからよ」

 二重でびっくり。あと、久しぶりですが心読まないで。

「あ、朱音さんも?」

「うん。『木漏れ日喫茶店』ってサークル知ってる?」

 またも有名サークル!?

 透明で綺麗な絵を書くことで有名なサークルで、僕も好きでサイトによく行っている。

「まあ、ご苦労様空狐。舞から事情は聞いたわ。ありがとう」

 そう言って朱音さんが肩を叩いてきた。

 それから僕の顔を覗き込んで、

「でも、ここに私がいたのを刹那に話したら……どうなるかわかってるわね?」

 僕は笑顔だけど目が笑ってない朱音さんに必死でこくこくこくこくと首を振る。それに満足そうに笑って、

「じゃあ、早速写真撮影しましょっか」

 楽しそうに、本当に楽しそうに朱音さんが告げて、もちろん逆らえない僕は貴重な休み時間を撮影に消費されることとなった。


 パシャパシャと焚かれるシャッター。

「目線下さい!」

「すいませーん。次こっちお願いします!」

「あ、ポーズもお願いします!」

「決め台詞も!」

 なぜか、カメラのフラッシュ攻撃に晒されていました。後決め台詞ってなんだーー! この子にはそんなものは……はっ!

 僕は悲しげな顔になって、

「絶対、忘れません」

 言った。途端に周りが盛り上がる。ううう、なにしてるんだ僕は? 疲れてるはずなのに、すごく疲れてるのに……

 僕は確か刹那くんの同人制作を手伝っていたはずである。それなのにいつの間にか会場にまで来て、気づくとコスプレさせられてて、ブースではんばいをしていて休憩に行くことになって訪れた先で人の壁にじゃまされていまではこんなところでしゃしんとられて、ウサミミが垂れてて、人類のために憐れにも敵の捕虜になってしまったしょうじょのこころをよんでひとのいいせいねんにしんじつを黙って、くるくるせかいはまわって、かくもうつくしくははかなくそらはめぐって剣を取ってえいえんにたたかいつづけて……

 ぷっつん!

 心の中で何かが切れた。あー、なんかなにもかもがどーでもいーぜ!!

「はーい、みなさーん! ばんばんとっちゃってくださいー!!」

 私はそう言ってポーズを決める。なんか朱音さん驚いてるけどどしたのかなー?

 いろいろポーズを決める私にずっとシャッターは焚かれたのでした。


 しばらくして撮影会が終わってブースにもどってきました。

「お、空狐遅かったな……どうした? やつれてるぞ?」

「あはは~、そんなことないよセツナちゃんは心配性だね~」

 私の言葉にセツナちゃんは首を捻る。

「どうしたんすか? 空狐?」

「む、天馬か。私はなんともないが?」

 天馬のおかしな問いに私は答える。委細問題はないのだが?

 だが、兄上まで私に心配げに声をかけてきた。

「いや、キャラが変わってるぞ?」

「あはは~、お兄ちゃんはしんぱいしょうです~。クーコはなんの問題もないですよ~?」

 クーコのキャラが変わってるってどういうことですか~?

 だけどみんなクーコのことを心配そうに見ています。

「ほんとーに、大丈夫なのか?」

「だから大丈夫よ! さっきからなんなのあなたたち?」

 まったく、まるで私がおかしな人間みたいじゃない!

 しかし、私の主張にみんな首を振って、否定する。

「いや、だからキャラが違う。しかもランダムに変わってってるぞ!!」

「あはは~、みんな何言ってるの~? 僕はいつも通りだよ~?」

「いつも通りと思わせて実は別のキャラだろ!? 空狐帰ってこーい!!」

 刹那が叫ぶけど本当に僕は問題はないんだよ?

「……疑惑?」

「くゥこおォォォ!! しっかりしなさアァァァい!」

 こうして僕のコミケは終わって行った。


 後日、天野宅に訪れる僕。

「じゃあ刹那くん、約束のものを」

 僕の言葉に刹那くんは顔をそむける。ふむ……

「刹那くん、君が約束したんだよ? だから早く出すもの出しなよ。HALLY、HALLY、HALLY、HALLY!!」

 僕の言葉に刹那くんは悔しげに顔をしかめながらわかったと返す。そしてタンスの中から一つの箱を取り出す。

 それは黄色い鎧武者のようなデザインのロボット。結衣姫の武御雷。僕はそれを受け取って……

 あることに気づいて返した。

「これはダメ」

「なんで!?」

 刹那くんが目を見開いて叫ぶ。まさか付き返されるとは思わなかったのだろう。

 ダメな理由? ふっ、わかってるだろうに……

「確か君、保存用観賞用に後二つ持ってるっていってたよね?」

 僕の言葉に刹那くんはうっと唸る。そして、

「ほらよ……」

 すぐに諦めて悔しそうに新品同然の箱を差し出してきた。それを受け取りチェック。うむ。傷もないしこれならよし。

 僕は頷く。

「ほら、他の同人誌とイラスト集も」

 刹那くんは反論せずにタンスに向き直ってそれからあっと、呟いた。

「そういえば、空狐、もう何ともないのか?」

 なんともない? なんのことだ?

「なんのこと?」

 僕が問い返すと刹那くんは途端に神妙な顔になる。な、なんだ?

「いや、お前休憩終わった後壊れたじゃん」

 壊れた? ははは、何言ってるのせつなくん? ヒトがそうかんたんに壊れるわけないじゃないじゃないデスカ。

 だけどなんでしょうこの背筋のオカンハ? すごく嫌な予感……

「だって、お前、なんか銀狐の膝の上に座って満足げになってたり、恥ずかしそうに『つ、次もちゃんと来なさいよね!』とか言ったりとか」

「ぬがーーーー!!」

 僕は頭を壁に打ち付ける。突然の奇行に刹那くんはドン引きだ。

「ど、どうした空狐?」

「な、ナンデモナイデスヨー?」

 僕は赤くなった額を押さえながらくるっと刹那くんの方に向き直る。

 まったく刹那くんはおかしなことを言う……

「あと、『あたしアイス食べてーな』って」

「ふおおおおおおお!!」

 知らない! 僕はそんなこと全く知らない!!

 しばらくの間刹那くんの部屋には何かを壁に打ち付ける音が響くのだった。


 そして家に帰ろうとして、玄関まで刹那くんは見送りに来てくれた。

「じゃあな、空狐また明日の訓練で」

「うん、またね刹那くん」

 額に包帯を巻いた僕は刹那くん家から出ようとして、

「あ、まって空狐、これ!」

 朱音さんが駆け寄ってきた。で、なにかを渡される。それは一枚の封筒だった。

 中身は触ってみるとなにか少し硬い紙のような薄いものが入ってるのがわかる。

「部屋で開けてね」

 朱音さんの言葉に頷いて僕は今度こそ家に戻った。


 で、部屋に戻って渡された封筒を開けています。

 何が入ってるのかな? もしかして刹那くんを手伝ったお礼に図書カードとか?

 僕は期待して封筒を開けて……





 ……っは! 僕が気づくとガムテープでぐるぐる巻きになった封筒を持ってタンスの一番下の段を開けていた。

 あ、ありのまま今起こった事を話すぜ。

『僕は封筒を開けて中を見ようとしたら、いつの間にかガムテープでぐるぐる巻きにしていた』

 な……何を言っているのか分からないと思うが、僕も何が起こったのか分からなかった……

 頭がどうにかなりそうだった……催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなものでは断じてない。

 もっと恐ろしいものの片鱗を味わったよ……

 とりあえず僕は自分の直感を信じてその封筒に邪神封印級の処置を施すことにした。これで二度と開けられることはないぜ……

 なぜか隣でイヴがくすくす笑ってたけど僕にはなんなのかぜんぜんわかんなーい。

コミケ編前編後編に分けました。

お疲れ様空狐……

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