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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第十三章 コミケ
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第六十七話 コミケの戦い 前編

 そしてイベント当日の日を迎え、八時くらいに僕らは会場に訪れていた。僕が来た理由は刹那くんが販売を手伝ってくれと頼んできたからだ。僕は断ろうかなとも思ったけど手伝ったことだし売れるか気になったから手伝うことになった。

 訪れた会場の前にはすでには多くの猛者がひしめいている。す、すごいな。初めて見たからか余計に強烈な印象だった。

「うわ~、すごい人ね~」

 イヴが呟くのに同意する。

「ほら、さっさと行くぞ」

 大きなトランクを抱えて僕らは会場に入るのだった。


 そして、更衣室で刹那くんが用意した売り子用の服に着替えるけど……

「なんでやねん」

 思わず自分の姿につっこんでしまった。

 最初、スカートを履いた時に首を傾げた。

 そして垂れたウサミミをつけた時に確信した。また女装させられとる! それより問題なのはナチュラルに着替えてた僕だよ!?

「おー、似合ってるな。後は目の色だけだが合格!」

「確かにね~。本当にそういうところには才能あるんだから」

 満足そうに笑う刹那くんの言葉に周りからもお〜、と感嘆の息を吐かれている。あとイヴ、その評価は悲しいからやめて……

 僕の格好はロングのスカートの黒い服に青いネクタイ、そして……ウサミミ。髪はちゃんと持ってきたウィッグでツインテール。

 ようは、『あいとゆうきのおとぎばなし』に出てくる人の心が読めるウサギさんというわけで……ちなみに刹那くんは基本は濃い灰色で縁が水色のスーツと黒いシャツ、縁と同色のネクタイを縛ったつまりは国連軍の制服。

「でもなんでこの格好なのさ!? 説明して!」

「似合うと思ったから!」

 予想通りのその言葉に僕は強く踏み込み体中の螺旋を集めた拳を叩きつける!

 キャラが違うと言うなかれ。きっとホームステイ先から伝授されてるはず! そうあの恋愛原子核を成層圏外まで追放する奥義!!

「どりるみるきぃぱーんち!!」

 だが、渾身の拳は見事刹那くんにキャッチされる。

「ふっ、二度も同じ技で……」

 偉そうに講釈を垂れる刹那くん。だが、彼は忘れていた。もう一つ奥義があることを!

 本家とは違うかもしれぬがあえてこの名で撃とう! そう、封印されし禁断の左……

「どりるみるきぃふぁんとむーー!!」

「ガガーリン!!」

 刹那くんは屋根を突き抜け成層圏まで吹き飛んだ。

「たーまやー」

 イヴの呟きだけが後に残ったのであった。


 結局、僕はあの格好のまま自分たちの席に座っている。他にまともな衣装が少なかったのだ。

 プラグスーツよりぴったりお肌にヒィット、訓練兵は前面すけすけだけど正規兵は色付き、だけどあえて訓練兵の強化装備だとか、最終兵器彼女チックなヒロインの強化装備とか、日本帝国斯衛軍の零式強化装備の赤とか。

 なんだかなあ。最後のにはときめいてしまった時は自分が情けなかったが……

 それからあと二人来るというお手伝いさんを待っていると……

「お待たせしたっす刹那さん」

「ういー、久しぶり天馬」

 ……あっれー? 今聞いたことある声と名前聞いたよ?

 振り向くと、そこに僕と同じくらいの年の背はさほど高くないがっしりした褐色の少年。屈託のない表情を浮かべる顔にスポーツ刈りに刈り上げられた白髪。対して瞳は黒い。服はこれまた国連軍の制服。

 って、君は!

「天馬くん!?」

「んっ? お嬢さんなんでオレの名前知ってるんですか?」

 不思議そうに首を傾げる天馬くん。知り合いにお嬢さんって言われたー!!

 僕はショックで仰け反る。それからぐんっと身体を戻す。

「僕だよ! 空狐、木霊空狐!!」

 少しの間、天馬は反応を返さなかったが、しばらくして目を丸くして大声を上げた。

「あー! 空狐? なんでそんな格好してるんすか!?」

「好きでしてるんじゃない!!」

 彼は烏天狗の天馬。前に母さんと仕事で天狗の里に訪れた時に知り合った相手だ。

 彼が手伝いなのか!

「なんだ知り合いだったのか?」

 まあね……ちょっとショック大きかったけど。


 久しぶりに会った天馬くんとお互い近況について話す。

「でも、男も化けるもんなんすね」

「それ前に聞いたよ……」

 そんな風にしゃべりながらもう一人のお手伝いの人を待っていたら……

 パシャっと写真を撮られた!

「誰! ……って、兄さん!?」

「よっ、空狐」

 ぴっと笑顔で兄さんが片手を上げる。あんたが手伝いか!!

 この前まで数年に一度会う程度の相手だったのに、この頃よく会うなあ……

「はよ〜銀狐」

「おはよ刹那」

 二人が挨拶を交わす。で、これでメンバーが揃った。刹那くんが頷いて立ちあがる。

「あー、本日は集まってくれてみんなありがとう。一度礼を言う。そして、頑張ってこの戦いを成功させよう!」

 刹那くんの言葉にみんな笑って頷く。そして準備をし始める。看板を立てかけ、商品の入った段ボールを開けて並べる。それからそれぞれの役割を確認して準備完了。イヴも衣装に着替えて顕在率を調節し具現化している。ようはフィギュアの代わりとして客引きしているのだ。

 さあ、行くぞ。戦いに!


 結論から言おう。滅茶苦茶しんどい戦いだった。

 流石は壁際、最初はゆるゆるだったが少しずつ人が集まって次第に列が出来上がった。

「こちらサークル黒白の図書館、列は三十分待ちです……」

 僕は看板を持って誘導を手伝う。

 僕の担当は売り子だけでなく看板で列の整理もすることになった。刹那くんと兄さんが販売をして、天馬くんが足りなくなった商品の補充を行う。刹那くんには「キャラの個性を出すため」ということであまりしゃべらないよう言われた。まあ、確かに彼女が饒舌なイメージないし。まるで誘蛾灯に集まる蟲のようにファンが集まったのはびっくり。僕の魅力も捨てたものじゃないね♪ 

 …………すいません。言ってて悲しくなりました。

 そして、買う人の何人かが僕らに「がんばって」「毎回楽しみにしています」「かすみたん、萌え」と励ましくれた。最後のは励ましじゃないし、主に僕だけだけど。

 差し入れといって何かを貰えるのも嬉しかったな。で、お昼時になる頃には少し勢いがなくなってきた。

「にしても、だいぶ減ったなー」

「だね。もうダンボールが半分切ったよ」

 売れ行きは好調で昼を迎えに来る頃にはダンボールは半分以下になっていた。ふむ。思ってたより人気なんだなここ。

「こっからは交代で休憩入るか。空狐、一時間だけ抜けていいぞ」

「えっ、いいの?」

 まだそれなりに人がいるのに? だけど刹那くんは

「いいよ。それにさお前コミケ初めてだろ? ちょっと見て回ってみてこいよ」

 う〜ん、ならお言葉に甘えて!! 僕は一時間だけ回ってみることにした。


コミケ編前半戦。

後半は次です。

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