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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第十二章 夏休み
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第六十三話 特級の力

 塔に刹那くんが投げた槍が突き刺さり、刹那くんの顔が青くなった。

 ……もしかして、あそこに重要なものがあったのかな?

 すると、刹那くんは猛スピードでその当たった辺りに飛んでいった。

 僕も何があるか気になったので塔に引き返し壁伝いに登る。ビルで言えば四階ほどの高さだからすぐに登りきる。

 だが、途中から妙な匂いに気づく。アルコールのつーんとした匂いとブドウをはじめとした果物の匂い。ん? 米の匂いまで。まさか、

 そして、槍でできた穴から部屋に侵入する。

 そこは……予想通り酒蔵だった。

 レンガでできた壁。大小様々な樽やビン。そして、床に散乱したガラスの破片と……床にぶちまけられた酒。

 そこで刹那くんは膝をついていた。

「おおおお、俺のさ、酒ががががが……」

 その背は小さく震えていた。声も震えている。

 えっと、刹那くんて酒のコレクションが趣味なのか。

「ドンペリ……ロマネ・コンティ……雄町……グラン・クリュ……」

 その右手には割れた酒瓶。

 ドンペリもロマネもかなり高い酒だよな。片やシャンパンの王様、片や安くても三十万は余裕で突破するワインだし……後のも高級だったような? グラン・クリュも一級のワインだし。雄町は知らないけど名前からしてたぶん日本酒かな?

 そして、しばらくすると刹那くんはふらりと立ち上がった。そして、また背筋に悪寒。

 寒くなった背筋に押されて後ろに飛ぶ、というより塔から飛び降りる。と、同時にさっきまで僕が立っていた場所が吹き飛んだ。ほんと直感の鋭い自分を褒めてやりたい。あと、押されてるというのに後ろに飛ぶとはこれ如何に?

「てめー! 逃げんなー!!」

 無茶言うな!! 僕は砂浜で着地してからすぐ海上を走る。

 飛び出してきた刹那くんはさっきの魔力弾を撃ってくる。もちろん全力で回避。範囲はどれもランダムだが、先の戦いで見た中の最大のサイズは越えてないからそれを基準に避けていく。

 にしてもこんなの連射できるなんて……どんだけ魔力持ってるんだ?

 しかし、そのうちのいくつもが水面に着弾して水しぶきを上げ前が見えなくなる。やば……

 上に飛んで逃げると槍が足元を通過した。さらに、

「斬魔閃!」

 長さ二メートル幅五センチほどの黒い魔力の斬撃が飛んでくる! こんなにでかいの兄さんくらいしか見たことない!

 それを足元の空気を固着させて足場を作り、横っ飛びで回避。だが、

「散!」

 目の前で散った!

「くっ!」

 ばらばらになった斬撃を両の刀で弾く。一発の威力は落ちてたからなんとか捌き切る。

 だが、一瞬で間合いを詰めた刹那くんが目の前で剣を振るう。斬撃を二刀で捌くけど、早い!

 そして、五合目で刀を上に跳ね上げられる。そして、刹那くんはまるでバットのように剣を振りかぶる。やば!

 跳ね上がった刀を全力で高速で振るわれる剣に叩きつける。見た目通り重い一撃。ボールのように海に叩きつけられる。腕もしびれる。だが、すぐに腕を振って体勢を立て直し足の裏の水を魔力で固着。それを蹴った瞬間に足の裏を爆発させて一気に水中から脱出する。なにか、刀が鳴いてるような感じがするけど、痺れのせいか?

 しかし、僕が水上に出た時には、たぶん足元の空気を固着させているのだろうか、刹那くんはかなり高い位置におり……かざした手の先にはには闇を集めたようにでかく黒い魔力球。なんかやばい!

 どのくらいであれが発動するかわからない。逃げられるかわからない。だから遠距離用の装備である桜花を発動。最大出力で弓を生成する。

「力よ集え」

「貫け疾風」

 二人同時に口上を述べる。

「シュヴァルツ・ヴァルト」

「桜龍飛翔!」

 刹那くんが魔力球を投げる。僕が魔力を籠めた矢を放つ。二つの攻撃は中間でぶつかり……僕の矢は魔力球を貫いた!

 よし! と思った瞬間、魔力球が大きく広がる。え? なぜ?

 少し考えて……あ、もしかして、術式が破壊されて蓄積された魔力が解放されたとか? 逃げるが正しい選択肢だった?

 迎撃してもあまり意味ないなんてえげつない攻撃だな〜。

「まだあれ飲んでなかったのにーーーー!!」

 君の術のせいだろーーーー!!

 しかし、僕はそんなことも叫べず、闇に包まれた。


 目が覚めるといつかのようにまた舞さんに膝枕してもらっていた。

「あ、起きた?」

「ん、起きました」

 名残惜しいけど僕は舞さんの柔らかな膝から頭を起こす。

 まだ、身体のあちこちが痛いけど、まあ動けないことはない。

「刹那くんは?」

 すっと舞さんが指をさす方向を見ると、正座して朱音さんに説教される刹那くんがいた。

「まったく、ここであんな広範囲術を使うなんて正気!?」

「すいません……でも、お叱りの前に治療をお願いできませんか? 肩に矢が当たったんですよ?」

 あ、本当だ。肩から血が出てるよ刹那くん。

 しかたなく、説教を中断し、刹那くんの傷を見る朱音さん。

「まったく、たかがお酒割れたくらいであんなに怒るなんて」

「何を言うか! あれを集めるために俺がどれだけ金をかけたことか」

 イヴの言葉にキレる刹那くん。しかし、「終わりっと!」と言って傷口を朱音さんに叩かれて悶絶する。

 なんだかなあ……


「では、今日はありがとうございました」

 あの後、二日分の時間僕らは訓練を受けた。主に舞さんは朱音さんに、僕は刹那くんに。

 そして、外に出るとまだ二時間。つまり、外ではまだ十二時ほどだった。

「うん、また明日」

 朱音さんが手を振ってくる。といっても、まだ昼だけど。

「にしても今日はごめんね刹那のせいで」

「ああ、いえ……」

 昨日……じゃなかった、今日はぼっこぼこにされたなー。

「また、明日もびしびし鍛えてあげるからね」

 そういって笑顔でぽんっと肩を叩かれた。

 僕は苦笑を返して、

「お、お手柔らかに〜」

 とだけしか言えなかった。

空狐ぼこぼこにされるの回。

刹那と空狐では今はこのくらいの差があるって表現のためぼこぼこにしました。

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