第六十話 測りまっせ
とうとう、夏休みに入り、昨日朱音さんに言われた通り朝から舞さんと刹那くんのお宅にお邪魔する。
「おはようございます朱音さん」
「朱音さんおはよう」
「おはよう二人とも。刹那も待ってるし上がって」
すでに玄関で待っていてくれた朱音さんに言われて、上がる。
それから、この前刹那くんが作業をしていた部屋に案内されると、すでにそこに上下同じ色のつなぎを着こんだ刹那くんが待っていた。その手にはメジャー。
「おっし、空狐と倉田さん来たな。さっそく測らせてくれ」
はい? いきなりの要求に首を捻る。
「測るって何を?」
「寸法だよ寸法。空狐の新しい式服と倉田さんのアーマードレス作るからさ」
僕の疑問にそう言って楽しそうに笑う刹那くん。あー。あれアーマードレスって言うんだ……ってちょい待ち。
「あー、刹那くん? 僕の式服を作るってどういうこと?」
僕はなにも聞いてないが?
「だから、俺がお前の作るんだよ。ああ、金は気にしなくていいよ。俺たちが出すから」
うん、本当に待って。
式服は非常に高く、まだ見習いの僕だけど二級クラスのを特注で作ってもらった。その式服は維持費込みで百万は下らなかったのだ。まあ、半分は親が出してくれたんだけどね。母さんと兄さんに感謝感謝。
だが、刹那くんはさらっとそんな高いものを作ると言ってるのだ。しかも二人分。いくらなんでもおかしい。
「試作の式服のモニターやって欲しいんだよ頼めないかな?」
僕の疑問を察して刹那くんは答える。
モニター?
「ほら、どんなものだってある程度データがないと信頼なんてできないだろ? だから、空狐と倉田さん、二人に使ってもらって試作の欠陥や弱点を比較して見たいんだよ。だから無償提供。問題出たらすぐにでも返してくれればいいし」
ああ、なるほど。ぽんと僕は納得がいって手を叩く。
「いいよそのくらい」
試作品とはいえ、式服もらえるならむしろ喜んでだ。
「ちゅーわけで測るから」
で、寸法を測り終える。舞さんは服のための寸法だけでなく、杖のために手のサイズなども測られていた。
「うし。じゃあ、後はそれに合わせて調整するだけだ。数日もあればできると思うからちょっち待っててくれ」
そう言って作業に戻ろうとする刹那くん。僕らも部屋を後にしようとして、
「と、ちょっと待った空狐これ見てくれ!」
そう言って刹那くんは丸めた用紙を持ってきた。
「なにこれ?」
ふふ、っと刹那くんが笑う。なんだどうした?
「これはな……今俺が研究している魔導駆動式のロボットの設計図だ! しかも、テストパイロットはお前」
そういってびしっと僕を指さす。
な、な、な……
「なんだってーーーー!!」
なんとロマンあふれる研究! しかも僕がパイロット? どんなのか見たい読みたい! まあ、冗談だろうけど!
僕はわくわくしながら刹那くんから設計図を受け取り、それを広げる。
リアル頭身の機体で、スラリとしたデザインだが、肩や太ももにボリュームがあり、頭には横に二本のアンテナがあり、額から角が伸びている。そして全体的にどこか鎧武者然の印象を受ける姿で色は赤。
ようするに、あいとゆうきのおとぎばなしに出る月詠中尉の武御雷だった。
「武装は主に長刀で」
それを聞いた瞬間、僕は右手を引き絞る。
首、肩、腰、股関節、膝、足首と、関節と言う関節をフルに駆使し、螺旋の力をその拳に集める究極奥義!
「どりるみるきぃぱーんち!!」
「エアバーック!!」
そして、僕の拳を受けた刹那くんは天井を突き抜け、成層圏すら越えて再び地上に落ちてきた。そして、
「ち、地球は青かった……」
その一言を残し、力尽きるのであった……
「って、死ねるかあ!!」
そう叫んで刹那くんは立ち上がる。しぶといなあ。
それから朱音さんに下へ連れられて、いつも入る地下訓練所とは反対の方に入る。
そういえば、前からそこにドアあったけど何があるのかな? 僕と舞さんも続いてそこに入る。
……そこに青空が広がっていた。へ?
周りを見ると、地平線の先まで海があり、僕たちがいるのは何かの塔の頂上だった。後ろにはどこでもドアよろしくはいってきたドアだけがぽつんと立っている。
「ようこそ、当家自慢の『アトリエ』に!」
朱音さんが両手を広げてそう言った。
鈴:「巨大ロボットの建造、冗談だよな?」
刹:「冗談だよ。そんなもの作るのにいったいいくらかかると思ってる?」
鈴:「……金があればやんのか?」
刹:「アハハ……ソンナワケナイダロー」
鈴:「セリフ棒読みになってんぞ」
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