第五十七話 天才ガンマン舞さん
射的場は小さいながら市街地をイメージした構成になっている。そこで出てくる的を舞さんは巧みに両手の拳銃を操り次々と撃破していく。なんかたまーにガンカタみたいな動きをしてるのは気のせいでしょうか?
頭を振ってその考えを逃がしてから朱音さんが出したモニターを覗く。今んとこ外したのはゼロ。しかも、ほとんど真ん中近くだ。すご。
さらに、舞さんは腰に予備マガジンを六つ装着してあるが、今のところまだ一回も換えてない。今まで出た一六の的、全部に当ててしまってるからだ。でも、残弾はもう四発のはずだから、そろそろ換えないとダメそう。
そういえば、シューティングゲームも得意だったなあ舞さん。この前は紅魔館のルナティックでおぜうさまの所まで行ってたし。
「すごいわね」
イヴが頭の上で感心したように呟いている。
またひとつの標的を撃ち抜いてから、次の的を探して曲がり角から顔を出す舞さん。奥の行き止まりに的が立てられてたが、
「ひゃあ!?」
いきなりボールの雨霰が降り注ぎ、舞さんは慌てて身を隠した。
「く、くっく、秒間六十発のペイント弾の嵐だ。そこのクリアは苦労するぜ!」
邪悪に笑う刹那くん。だが、
舞さんはペイント弾に当たらないよう壁に隠れながら向かいの壁にある出っ張りを狙って撃つ。弾の軌道はカーブミラーでチェックしながら一発目、兆弾した弾が明後日の方向に飛ぶ。。二発目、的に近づいた。そして、三発目で見事に命中した。
「うそ……」と刹那くんが呟くなか、舞さんは振り返ると満面の笑顔で、
「コルクガンで試したことあったけど、リフレクショットって割と簡単なんだね〜」
などと言いながらマガジンを換えていた。いえ普通は簡単じゃないはずですよ? それに、コルクガンと実銃じゃ条件違いすぎでしょ!?
刹那くんはうなだれながら「俺だって習得苦労したのに」とか何やらブツブツ呟いてから、
「いや、最後の標的のトラップはこれ以上だからきっと止められる!」
なんか復活した。
そして、さらに七つの的を撃ち抜いて、舞さんは車の後ろにある最後の的に近づくと、またペイント弾の雨。今度は慣れたのか驚かずわりと冷静そうに身を隠す。
舞さんは障害物に隠れてから横を見てリフレクショットができるかを確認しているが、当てるのにちょうどいいものがない。
車の中に入って近づこうとするけど、当然鍵がかかっていて、仕方なく車をよじ登ろうとする舞さん。けど、トラップが動いて狙いを舞さんに向け直す。そして、またペイント弾の雨が降り注いだ。慌てて舞さんは下に降りる。しつけーよ!
「く、くく、くくく、あーーーっはっはっは! さすがの倉田さんもここはクリアできないだろう! さすが俺!!」
悪役のように高笑いする刹那くん。いや、そこ誇るべきなのか?
「あほの子がいるわね」
ぼそっとイヴが呟く。と、舞さんが突然まだ右に六、左に七つ残ってるのにマガジンを交換してから腰に下げていた残りの二つを手に取る。そしてこっちに振り返って、
「マガジンっていくらぐらい?」
いきなりの質問。刹那くんはその質問に首を傾げながら、
「そのタイプならそんなにかからないけど?」
返ってきた答えに舞さんの表情が明るくなる。
「なら、二個壊れても大丈夫だよね?」
はい? そうして舞さんはマガジンを持って標的に近づくと、いきなりマガジンを投げた!
そして、空中のマガジンを撃ち抜く。破片と中の弾丸が宙に舞う。そして、
連続して左右十回ずつ、合計二十発の発射音が鳴り響く。その直後にいくつもの火薬が炸裂する音とともに、画面から全ての標的が撃破されたことが知らされた。
僕らは舞さんの行った離れ業に唖然とする。
なにせ舞さんは空中に散った弾丸の雷管に弾当てたのだ。何発かはうまく当たらなかったみたいだけど、結果、その衝撃で薬莢内の火薬が炸裂し、デタラメに飛んだ弾の数発が障害物の向こうにある標的に当たったのだ。えっと、的はたったの十ミリですよ? もう射的が得意どころの話じゃねえ。
「うそ……」
イヴの呟きに僕らの思考はやっと動き出す。
「終わりましたー!」
ぴっと見よう見まねの敬礼をする舞さんを見て、僕と刹那くんは顔を合わせて頷き合う。
一瞬で舞さんの後ろを取った僕が彼女を羽交い締めにし、
「没収」
と、刹那くんが銃を没収した。舞さんには悪いけどこれで安心だ。
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