第五十六話 魔法教えて
それは何もない休日だったんだけど、僕がゲームをやっていたら、
「ね〜、空狐くん魔法教えて♪」
……はい?
舞さんからのいきなりの頼みごとだった。
僕はゲームをポーズにしてから改めて舞さんの方を向く。
「えっと……舞さん、魔法教えてって言ったの?」
僕は聞き間違えたのかと思い聞き直した。
だが舞さんは嬉しそうに頷く。
「うん♪ 教えて」
はー、僕は額を抑える。
舞さんに魔術を教えるねー。まあ、構わないんだけど、前から感じていたけど舞さんは魔力が非常に強い。もしかしたら僕と同じ位か少し上。その舞さんに魔術を教えた場合を想像してみてしまう。
炎を背景に管理局の白い魔王を彷彿とさせる微笑みを浮かべる彼女の姿。ちょっと背筋が冷えた。
「どうして?」
とりあえず、まずは魔術を学びたい理由を聞いてみる。
「だって、面白そうだから。それに、この前イヴちゃんの出した花火、綺麗だったから自分でも出してみたいなと思ったの」
楽しそうに笑う舞さん。どうやら純粋な興味が理由みたいだ。
まあ、だったら見た目は派手でパーティーの隠し芸になりそうな術程度でいいかな?
「うん、いいですよ」
僕がそう言うと、舞さんは嬉しそうにぱあっと表情を明るくした。
まずは、簡単に術の基礎と制御の仕方を教えてから基礎の術を教えようか。あ、あと魔術使うなら魔具も用意しなくちゃな。
「刹那くんに頼んでみるか……」
この前、ちょくちょく仕事とかで作ってるって言ってたし。
「んっ? 余ってる魔具がないかって?」
早速舞さんと刹那くんの家に訪れた。
家に上がると朱音さんが迎えてくれて、案内してもらった。部屋に刹那くんはいて、その部屋で何かの機械をいじっていた。
「いいよ。試作の魔具や型落ちのものとかあるからそれあげるよ」
そう言って刹那くんはいじっていたものを置いて椅子から腰を上げる。気前がいいね。
部屋を出る刹那くんについていく。そして着いたのは、刹那くんの家の角にある石造りの物置だ。
刹那くんはポケットから鍵を出して扉を開けて入る。それから片づけてあったものの中から魔具を探して、
「おっ、これいいかな?」
そう言って刹那くんが取ってきたのは……拳銃だった。オートマチックタイプのを二丁。
「以前注文された魔具を造った時の試作品。試作だけど十分実用品だよ」
そう言って懐かしそうに銃の状態を確認する刹那くん。外見はベレッタがベースで銀に塗られ横に何か文字が彫られている。えっと、英語で『You will go to hell now』か。物騒な……
「重さはそれほどないし、倉田さんにも使えると思うよ。あと、ギミックとして銃口下にワイヤーを伸ばせるようになってるから」
そう言って舞さんに手渡す。
「ありがとー、私、昔から射的得意なんだー」
と嬉しそうに舞さんが笑う。それから刹那くんが提案してきた。
「地下で試射してみる?」
そして、十分後……
地下で簡易的に作られた射撃場にて、
「嘘でしょ?」
「マジ?」
「すごい……」
僕、刹那くん、朱音さんは目の前で起きていることに驚きを隠せなかった。
なぜならば……
舞さんの持つ銃からパンッと火薬の破裂する音とともに弾丸が放たれる。
その弾丸は真っ直ぐに的の中心に当たる。そして、マガジンを交換。二回マガジンを交換してるから三十発全部当ててることになる。しかも、片手で……
「……拳銃ってさ、反動の小さ目なベレッタでも一般成人女性が両手で撃つものじゃなかったっけ?」
「あそこまで簡単に当てるなんて……」
僕らが舞さんの腕に驚いていると、朱音さんが、
「ものは試しに」
そう言ってパチンと指を慣らすと場所が変化する。なにが始まった?
次々と障害物が現れ、一分後には簡易的ないかにもな訓練所になっていた。
舞さんもいきなりのことにマガジンを変えた状態で動きを止めてしまった。
「舞〜、ここにはいくつかターゲットがあるの。それをできるだけ当ててみて」
そう言われると、舞さんは「は〜い」と返事をして楽しそうに笑う。
「じゃあ、いってみよー!」
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