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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第十章 力をなくしたイヴ
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第五十六話 やっと帰ってこれた……

 僕らは朱音さんと合流してから三手に別れて探索済みである家から半径二百メートルの外を探している。で、今は公園の中を探してた。

 普段ならある程度場所がわかるのにイヴは力がなくなってるからわからない。

 匂いで探そうにもイヴの臭いは大通りで途切れちゃってたし! たぶん車かなにかに乗ったもんだと思う。それじゃあさすがに匂いで追跡は無理だし。

 そこでケータイが鳴る。取ると相手は刹那くんだった。

「もしもし?」

『こっちにはいなかった、そっちは?』

「だめ。匂いのかけらもない」

『そうか、じゃ、また』

「うん」

 簡潔にお互い見つからなかったことを告げてから電話を切る。

「たくもう!」

 最後にキョロキョロ見回してからまた次の場所に行く。

 この時、もう少しここで待っていたらニアミスしなかったかもしれない。


 常磐通りでバスを降りた私はひたすら飛び続ける。うう、だいぶ疲れたよ〜。今朝からずっと羽を羽ばたかせてるもの。

 別に普段飛ぶのに羽は使ってないのよね〜。そもそもこの羽は術を使うための補助機関だし。でも、今力が弱まってるから羽ばたくと飛べるって思いこむことで飛んでるの。うう、羽の付け根が痛い……普段使わないところだもの。

 そんなこと考えていたら、あるものが視界に入る。

 あ、あれは確かあれはうちのそばの公園ね。となればだいぶゴールが近い……よっしゃあ、あと少しがんばれば休める!

 思わずガッツポーズ。しかし……それと同時に背筋に悪寒が走った。

 私はゆっくり振り向くと、そこに……犬がいた。そして、目がこっちに向いていて心なしか輝いているように見える。

 ……見えてるのかしら?

 私はすぐに前に向き直って、全力で飛ぶ! と、同時に犬が走り出す音が聞こえる!

 まずい、まずいわ! 普段ならいざ知らず、今の速度だと絶対にこっちのほうが遅いもの! しかも、高く飛んで逃げられないし!

 足音が迫ってくる! 私が振り向けば、もうあと十メートルもない。いやー!きっと私を食べるつもりよこの子!

 私は必死に飛ぶけどスピードは上がらない。そして、もうそこまで……

 もう一度振り向けば飛びかかろうとする犬。ああ、もう駄目、食べられる……って、諦められないわよ!

 私は飛びかかる犬の前足をなんとかかいくぐり、犬が着地した隙をついて、その背にひっついた。ふっふっふ、さすがに背中にまで足を伸ばせないし噛みつくこともできないでしょう!

 私は勝ち誇った。だけど……犬は突然暴れだした。しまった、それがあったわ!

 必死にしがみつくけど、腕力が低下していたせいか私はあっさり背中から投げ出され、地面に叩きつけられた。

 もう、ドレスも身体もぼろぼろで、体の節々が悲鳴を上げている。

 ああ、もう終わりね……私は動けなくなった私に近づく犬を見ながら覚悟した。犬に食べられておしまい。末代までの恥ね。あ、でも私で末代だから恥は私だけね。

 そんなことを考えていたら、

「まって、ダメだよダメ!!」

 聞きなれた声が聞こえた。

 そして、私と犬の間に割って入る影。

「ほら、いい子だから、ね?」

 舞だった。


「もう、朱音さん気を付けてください! 今のイヴちゃんを一人にしたら危ないのわかってたでしょ?!」

 天野邸、客間で正座した朱音が舞に怒られる。あの時、授業が終わって帰宅途中だった舞に拾われて私はやっとお家に帰ることができたのだ。そして、家に着くとすぐに朱音たちを集めてお説教を開始した。

「いや、舞。まさかね買物に連れて行くのも危ないし、だから家に置いて行ったんだけど」

「それでもです! 今日だって私が割り込まなかったら大変だったんですよ!」

 朱音が反論するけど舞は許さなかった。

 そこに私が入る。

「もういいわよ舞。私が不注意だったのも悪かったんだから」

 舞はそこでしぶしぶ引き下がった。まあ、一番悪いのはあの猫と、その飼い主……あれ?

 そこで私は見てしまった。あの猫が庭にいるのに。しかも……刹那が煮干を食べさせていた。

「あ、朱音、あの猫は?」

 朱音は振り向いてああと頷く。

「あの猫は最近飼い始めたの。名前はシャドウだから」

 私はその言葉に爆発するのであった。


 数日後、宝玉だけ修理が終わったということでさっそく刹那宅で対面する。

 先日まで傷だらけだったそれは、見違えるほど美しい光を放っている。よかったあ。

「ほら、イヴ」

 そう言って空狐が促してくれて私は宝玉に触れた。途端に何か衝撃のようなものが私の中を通り過ぎる。

 戻ったのかしら? 試しに拳を軽く握ってみると力が溢れだす感覚が私を襲った。

「も、戻ったわ!!」

 私は空中に飛び上がって魔術を打つ。と言っても見た目だけの花火のようなものだけど。

「よかったな」

 刹那がそう言った瞬間、私はぎらりと目を光らせる。

「ええ……これでやっと復讐ができるのよ!!」

 高く飛び上がり、宙で身を捻りつつ刹那を見ると妙に優しげな笑顔。

 そう、覚悟してたのね。なら思う存分させてもらうわ! 私は刹那を蹴る。そして、倒れた瞬間にマウントポジション(首の上に乗った)で刹那を殴り続けた。

 ドレスをダメにされたのと、ひどい目にあった恨みー! そして、私は刹那がぴくぴく痙攣するまで思う存分殴るのであった。

 それから私はすっきりして怯える空狐の頭の上に腰を下ろすのだった。やっぱりここが一番ね!

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