第五十四話 イヴ、バスに乗る
「ただいま」
買い物を終えて帰ってきた家に人の気配がなかった。あれ? イヴが留守番してたよね?
「イヴ〜? イヴちゃ〜ん? どこにいるの?」
買い物袋を台所に置いてから家の中を探索。
台所、いない。リビング、いない。風呂場、いない。トイレ、いない。研究室、鍵かけてるからなし。地下、鍵かけてるからなし。刹那の部屋、いない。私の部屋、これまた鍵かけてるからない。
そうしていくつかの部屋を探したけどイヴはどこにもいなかった。
……どこにいるのかしら?
私が首を捻ってると、
「にゃ〜」
と猫の鳴き声。鳴き声の方を見ると、塀の上に黒猫。
「ああ、シャドウ。いたんだ」
その猫を見て微笑みかける。
シャドウはあの猫に刹那がつけた名前。正式にはシャドウ二世。ノラだったけど昔飼ってた猫に似てると気に入った刹那が餌をやりだして、うちの飼い猫に近い状態。ほとんど外にいるけどね。
首輪も刹那がつけたもの。しかもシャドウ一世の首輪。そうしてみれば確かに似てると思うけど……と、話が横路にそれたね。
「ねえ、シャドウ。イヴちゃん知らない?」
聞いてみたらシャドウは「にゃ〜」と鳴いて塀を降りていった。
まあ、猫の言葉はわからないから冗談で聞いたんだけど……あれ? そう言えば前にイヴって猫とかには見えるって聞いたような……
慌てて探査系の術を発動する。もしかして隠れてるわけじゃなくて……
そしてそれは当たっていた。半径二百メートル以内にイヴの反応はない。
「ま、まずいわね……」
今のイヴは力を使えない。ということは……
「い、急いで探さなきゃ!!」
私は慌てて家を飛び出した。
「う、う〜ん?」
痛む後頭部をさすりながら私は起き上がった。
えーっと、ここは……
周りを見るとダンボールや包装された家具など。あっ、そうだ。黒猫から逃げるためにトラックの中に逃げ込んだんだっけ。
それで急停車した瞬間に投げ出されて荷物にぶつかって気を失ったんだわ。
……けっこう長い間気絶してたわね。今どの辺かしら?
荷台から外を見るとちょうど前に見たことあるお店が見えた。
あっ、あれは前に空狐と舞と一緒に行ったファンシーショップ……てことは、
「ここ、関条寺だわ」
関条寺、だいたい常盤町から駅で一つほど離れている場所。一応常盤町行きのバスもあったよね?
そして、今トラックは駅の方に向かっている。なら、駅に着いたら降りましょうか。
そして駅前、私は信号で止まったトラックから降りた。そして、今はあるおばあちゃんの荷物に腰掛けている。理由は簡単。このおばあちゃんが常盤町の駅に向かう方面のバスに乗ると言っていたからだ。
むふふ、これで楽してお家まで帰れるわ。
そして、おばあちゃんがバスに乗る。よし、あとは常盤町に着くまで待ってればいいわね。私は足をぶらぶらさせながら鼻歌を歌ってのんびりする。そして、
『鳴瀬行き発車します』
……えっ?
ゆっくり、ゆっくりとこのバスの路線を見ると……常盤町と逆の方面に行くバスであった。
……もしかして、おばあちゃんバスを間違えた?
しかし、おばあちゃんはそれに気づかずにのんびりしている。
「お、おばあちゃん、このバス違うわよ! 早く降りないと!」
だけどもう遅かった。バスのドアは閉まってしまう。あー! 運転手さん! 待ってください。この人乗るバス間違えてますよ!!
しかし、無情にもバスは動き出す。
そんな〜!? 楽をしようとしたから罰が当たったの〜〜?!
鈴:「うわ〜」
刹:「かなりのうっかりだな……」
鈴:「はてさて、イヴの運命は?」
刹:「それはまた次回だな。がんばれ作者」
鈴:「了解」
刹:「それではまた次回で」
鈴:「また」