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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第九章 演劇部
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第五十一話 初舞台です!

 公演日がやってきた。僕は指示通りこの学校の女子用制服を着ている。スカートを履いても抵抗感がまったくなくなってたな……ううう。

 衣装に着替えてからそっと観客席を覗くと、思ったより人が来ていた。

 舞さんもいるし、演劇部の人間はなかなか粒揃いではあるから予想してはいたけど、ここまでいるなんて……

「すごいね」

 思わずそう呟いてしまう。

「そうだな」

 刹那くんも一緒に覗き込んでいる。

 しばらく様子を観察してから、楽屋裏に引っ込むと、ちょうど桜子先輩が話を始めるところであった。

「いいみんな、いよいよ本番。練習をみっちりして、リハーサルも上手く行った。あとはみんなが頑張れば絶対に上手く行く。だから……」

 そこで桜子先輩が一度切って、

「成功させるよ!」

「「「はい!」」」

 こうして僕の初舞台が始まった。


 この劇の内容は簡単に言うと、吸血鬼になってしまい引きこもってしまった義妹を持つ兄弟が彼女と昔のような関係に戻ろうと努力する話である。

 そして、その一番初めのシーン。姉である忍が妹の遥の部屋に自分が作ったロールキャベツを持って行くところ。

「遥、遥の好きなロールキャベツ作ってみたんだ。お義母さんみたいにおいしくないかもしれないけど、食べてみて」

 僕はそう言いながら震える手で小道具の皿をドアの前に置いて幕の後ろに下がった。

 心臓はバクバクで、人前で演技するということに尻尾がピーンと立ってしまうぐらいに緊張してしまう。

 胸を押さえて呼吸を落ち着かせる。

「大丈夫空狐くん?」

 演技を終えた舞さんが心配そうに聞いてくる。

「はは、さ、さすがに緊張してます」

 正直に話す。隠しても仕方ないしすぐバレるだろうしね。

 すると舞さんが嬉しそうに笑って、次の瞬間、舞さんに、柔らかく抱き締められていた。

 えっ?

 僕が困惑する前に、

「大丈夫、大丈夫だよ」

 ポンポン僕の背中を叩いてくれた。

「ま、舞さん!?」

 かなり恥ずかしい。だけど、そうされていて気づいたことがあった。

 舞さんの心臓もけっこう強く鳴っていたのだ。舞さんも緊張してるんだ。そう思ったら少し心が落ち着いた。

「ほら、そこのバカップル二人の片割れ、もう出番だぞ」

 冷やかすように刹那くんが言うと、舞さんが少し顔を赤くしながら離してくれる。

「ファイトだよ」

 舞さんの言葉に頷く。もう、心は落ち着いていた。

 そして、僕は舞台に向かった。


「おめでとう遥、武」

 僕はウエディングドレス姿の舞さんとタキシード姿の刹那くんに微笑んでみせる。

 困ったような笑みだと賞されたが、忍は義弟の武が好きだという設定があるからこういう表情がいいらしい。

 正直に言えば、忍の気持ちはわかる気がする。

 自分の好きな相手が自分と違う相手と結ばれる姿、僕にも降り懸かるかもしれない姿、その時、僕はどんな表情をするのだろうか?


 幕が閉まり舞台が終わる。そして、

「「「せいこー!!」」」

 みんなで手を叩き合う。

 みんな口々によかったや、楽しかったと感想を言う。

 興奮しながら僕らは片付けを始め、部室に戻る。

「みんなおめでとう! 次の文化祭での公演もこの調子で頑張って行こ!」

 桜子先輩の言葉にみんなおーっと声を上げるのであった。


 次の日、僕らが学校に登校すると……

 一切に人が集まってきた。な、なんだ? 最近はナリを潜めていたMSNか?

 しかし、僕の予測は斜め上に抜けられる。なにせ、九割が女子であったのだ。

 そして……

「木霊くん付き合って!」

 ……はい?

 僕が困惑していると矢継ぎ早に女子が言葉を投げかけられる。

「昨日のかわいかった!」

「ファンになっちゃった!」

「でも、どちらかというとかわいい系が似合うと思うな」

 ええっと、昨日の僕の姿が意外と受けた?

 横では刹那くんが自分を指差して必死にアピールしてたが誰も取り合ってくれなかったので肩を落としていた。

 助けを求めて横を見ると、舞さんは……笑顔だった。しかし、なんだろうこの背筋に走る悪寒は? 前もどこかで感じたような……ああそうだ、朱音さんの笑みだ。笑ってるけど笑ってない笑顔。そして、

「もてるんだね〜くうこくんは」

 棒読みのできうる限り感情を抑えたような声でそう言ってから、僕をしり目に先に行ってしまった。その途中、男子の一人が声をかけたが、すごい顔で睨んでその生徒をビビらしていた。ええっと、どうしよう?

 僕は女子(+少数の男子)に囲まれながら困惑するのであった。


鈴:「おつかれみんな」

刹:「大変だったよ」

鈴:「文化祭も頑張れよ」

刹:「……嫌なこと思い出させないでくれ」

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