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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第九章 演劇部
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第五十話 文化祭は何をする?

「みなさん。二学期に行われる文化祭について相談したいと思います。何か案がありますか?」

 壇上で委員長の笹瀬川さんが全体を見回す。文化祭かあ。準備を考えて今から考えるらしい。ふむ……笹瀬川さんって、本当に委員長の姿似合っている気がするな。髪を後ろで三つ編みにし、眼鏡をかけている。なんかぴったり過ぎてわざとやってるんじゃないか? と疑いたくなる。

 みんなが「喫茶店!」「たこ焼きの屋台!」などなど、どんどん意見を出していく。僕は……いいや。面白いの思いつかないし。

 そして、舞さんも手を上げて、

「仮装喫茶なんてどうかな?」

 あらら、誰か言うとは思ったけど舞さんが言うとは思わなかった。

「色んな衣装用意すれば、きっと楽しいと思うよ」

 舞さんがチラッと楽しそうに僕を見る。なるほど、僕に女装させる気ですね。わかります。ならば反撃を用意しなければ! 部活に続いてこっちでも女装だけは阻止せねば!

「では、これらの中で反対の意見がある方」

 すかさず僕は手を挙げる。

「はい、木霊君」

 笹瀬川さんが僕を指す。

「仮装喫茶は衣装を借りたりするのにお金がかかりすぎると思います。それに許可がおりますか?」

 決まった。そう確信した。だけど、

「そこで私の出番!」

 朱音さんがトランクを持って教室に入ってきた! なんで?!

「朱音さん!?」

「朱音おねえちゃん!?」

「朱音先生?」

 いきなりの朱音さんの登場に驚く僕ら。んっ? 朱音先生?

 小泉先生が朱音さんに笑顔で近づく。

「お久しぶりです。朱音先生」

 嬉しそうに朱音さんに話しかける先生。えっ? 朱音さんって先生の先生だったの?

 みんなは突然現れた美人に見惚れてからその言葉に驚いていた。

「久しぶりね小泉さん。先生になったって手紙あったけど直接見れて安心したかな」

 朱音さんが先生に微笑みかける。

「はい! ところで、何で先生がここにいるんですか?」

 先生の疑問はもっともでみんなが頷く。

 朱音さんはああっと微笑んで、

「舞ちゃんに衣装頼まれて持ってきたの。それから刹那、何でさっきから視線を明後日の方向に向けてるの?」

 見れば刹那くんは視線があらぬ方向に向いている。どうやら他人の振りをしているみたい。

「いえ、どちらさまでしょうか?」

 視線を戻して刹那くんが首を傾げる。その表情、動作は完璧なまでにあんたのことは知らん。と感じるほどの役者っぷりだが、逆に白々しさ全開な行動であった。

 朱音さんはふむっと頷いてから、スカートの下に手を突っ込んで、ノートを取り出した! 常に携帯してるんだそのノート!

「突然ですが詩の朗読を」

「ごめん朱音。俺が悪かった」

 刹那くんが土下座した! 弱い、弱いよ刹那くん!!

 先生は首を傾げて二人を見比べる。

「あの……先生は天野くんとお知り合いなんですか?」

「「同居人」」

 二人ともほぼ同時だ!

「なんだ、恋人とかじゃないんですか」

「「いやいや」」

 残念そうな先生に二人とも同時に答えて手をひらひらさせる。息あってるなあ。

 さらに先生が続ける。

「でもお二人ともお似合いだと思いますよ。息ぴったりで」

「「そうかなあ?」」

「はい。まるで長年連れ添った夫婦みたいで」

「「……ありがとう」」

 二人ともポリポリと頬をかいてから、似たような引きつった笑顔で視線を逸らす。ここまでいくと漫才を見ているようだ。

「で、では、朱音さん? でしたね。そこで私の出番とはどういうことで?」

 笹瀬川さんがやっと朱音さんに質問する。

「ああっ、衣装ならうちにいくらでもあるって意味だよ。ほら」

 朱音さんがトランクを開けて取り出したのは様々な衣装だった。

 メイド服、ゴスロリ、衛士強化服、ピカチュウ着ぐるみ、etc.etc.トランクに入りきったのか不思議なくらいたくさんの衣装を取り出していく。

「どう?」

 これでは僕の言った衣装の用意云々はなしになって……あれ? いつの間にか席があんな遠くに? それに何か苦しい……

 それもそのはずだった。舞さんが僕の服の襟を掴んでズルズル引きずってんだから……気づけ! 引っ張られた時にすぐ気づけ僕!!

 舞さんは壇上の朱音さんのところまで来ると、「これ借ります」なんて言って、衣装の一つをとった!

「ま、舞さん……一体何を?」

 僕は予想できたけど……舞さんはとてもいい顔で振り向く。

「こんなかわいい服があるなら着せてみなくちゃ!」

 やっぱり〜!

「ま、舞さんさすがに学校でそれは……」

「うふふ。問答無用♪」

「ぎゃあああああああ!!」


 僕はしくしく泣きながら教室に入る。これは、もういじめですよ……

 僕が着ているのはゴスロリメイド服。舞さんの大好きなフリルやレースをたっぷりあしらった一品で、少し大きかったけど、無理やり着せられた。髪にもしっかりウィッグをつけられている。

 教室中でおおっというざわめきが起こる。うう、なんでこんなことに。

「まあ、残念だったな」

 ぽんっと僕の肩を叩く刹那くんはいつの間にやら、僕と同じくウィッグをつけて髪を長くし、髪留めをバッテンにつけて、右と左で長さの違う靴下を履き、腰回りに前が開いたスカートのようなパーツを付けているなのはで登場したキャラ、リィンフォースツヴァイの格好だった。背が高いし、雰囲気は違うが髪と目の色は近いから、まあ似合わなくもない。

「わああ、くうこくんかわいい〜」

 同じくメイド服に着替えたアルトちゃんが抱きついてくる。君もいつの間に着替えたん? 困っていると数名が「萌え〜!」とかいって携帯で撮ってる。朱音さんもいるし!

 なんだなんだ!? ここはいつから夏や冬の有明の会場になったんだ!?

「ま、まったみんな! まだ学校の許可取れるか分からないし」

 そう、こういうものはきっと学校側もうるさいはず。

「許可は私が出そう」

 一瞬だけドアを開けて瀬戸先輩が宣言して、すぐに閉めて出て行った。僕の希望も同時に閉められた気がした。何したかったんだあんた。

 こうして、満場一致でこのクラスは仮装喫茶の出店を決定した。僕の女装とともに……しくしく。


鈴:「ついに五十話!」

刹:「よかったな」

鈴:「これからも応援お願いします!」


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