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狐火!~狐少年の奮闘記~  作者: 鈴雪
第七章 温泉二日目
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第四十一話 月狐VS朱音

 戻ってからすぐに用意しておいた湿布を貼る。手足はできたけど、背中が無理なので舞さんに貼ってもらう。はー、なんかおじいさんみたい。

「空狐、お前、漫画の技とかを真似するのを頑張ったりしてんの?」

 龍馬が聞いてきた。

 その顔はなんか楽しそう。

「うん。昔からそういうのには、けっこーこってるよ」

 子供の頃とかは、よく飛天御剣流の技とか、二重の極みとかの真似をしてたりもしてた。

 この頃は、雷撃系の術式も得意だから千鳥やジェットンバーの再現を頑張っている。イヴに相談したらさすがに、形状変化能力でもカートリッジの真似は無理だとか。残念。

「そういえば、お前、さらに早くなってたなあ」

 刹那くんが思い出したかのように呟く。

 その手には野球とかでよく使うスピードガン。

「そう?」

「おう。瞬間で時速二百キロ前後が何度も出たし。お前新幹線か? 例の秘剣の時は八百越え。音速の半分以上ねえ」

 はっはっは。僕は早さに関してだけは定評があるのだ。まあ、そのかわり防御は紙、よりましだろうけど、段ボール。防御に関して考え直さないとなあ。

 と、こんな風な話をしていたらいつのまにか母さんと朱音さんが柔軟体操をしてるのに気がつくのが遅くなった。。

「何してんの?」

 予想はつくけどとりあえず聞いてみる。

「今度は」

「あたしたちが戦うのよ〜」

 そうでした、この人たちもかなりのバトル好き〜な人たちだったんだっけ。

「それじゃあ、月狐、正々堂々と」

「ええ、お互いの誇りにかけて」

 二人はすごくいい顔で微笑みあうのであった。


 そして、

「はあ!」

「せやあ!」

 鎌と刀がぶつかる。魔力が弾けて火花が散った。

 さらに、数合打ち合う二人。

 すごいな朱音さん。母さんと互角に打ち合ってる。だけど、少しずつ朱音さんが母さんに圧され始めた。

「月狐さんがんばれー!」

「あかねお姉ちゃんがんばってー!」

 舞さんやアルトちゃんが二人を応援する。

 と、そこで朱音さんの鎌が母さんの刀に弾かれて懐に入られる。

「くっ!」

 母さんが強く踏み込み刀を振る。朱音さんが後ろに跳ぶ。微妙に間に合わない!

 しかし、朱音さんは母さんの刀の腹に蹴って軌道を逸らし防いだ。

 さらに朱音さんが退こうとして、

「蛍火」

 母さんの術が追いかける。

 十数個の炎が彼女に迫る。

 朱音さんは直撃コースの炎だけを鎌で弾いて横っ飛びに逃げ!

「朱音さん、そっちはダメだ!」

 朱音さんかはっとした顔になったが、気づいた時には遅かった。

 数十個の炎の矢に囲まれる場所に自分から飛び込んでいた。

「しまった!」

 これが母さんの十八番『鳥籠』

 母さん得意の遠隔発火で離れた場所からでも設置できる罠系の炎術。

 基本、設置系を除き術は手元で発生させる。離れていたとしても、二、三メートルが限界だ。

 しかし、母さんは持ち前の高い術の制御能力と人一倍(妖狐一倍?)強い魔力でかなり広い範囲、だいたい三十メートルほどまで術の発動を出来る。ただし、距離があればあるほど練り辛いのは当然だから主にトラップ系列だ。

「鳥籠」

 母さんがぐっと拳を握って告げると同時に中心にいる朱音さんに向かって炎の矢が跳ぶ。

「ぐっ!」

 朱音さんがガードの構えをとって……着弾!

 爆発で煙が舞う。

「うわあ」

 舞さんが顔をひきつらせる。

「おばさんやりすぎ」

 ハルもちょっと引き気味。

「お姉ちゃんやられちゃった?」

 アルトちゃんは首を捻る。

 しかし、土煙が退くと、そこにまだ朱音さんが立っていた。しかも、昨日見せたリミットオーバー形態。

「相変わらずやるね月狐」

 朱音さんが不敵に笑って構える。

 対して母さんも。

「朱音ちゃんもね」

 お互いに賞賛しあい、走る。

「シューティングスター!」

 朱音さんがいくつもの閃光を撃つ。

「不知火!」

 それを母さんが不知火で撃ち落していく。

 牽制の術が飛びあい、たまに流れ弾がこっちに来て僕と兄さんと刹那くんで撃ち落す。

 さらに二人の術攻撃が激化していって……母さんの剣が伸びた!

 刃がいくつにも分かれ、その間に魔力の糸で繋げている。

 朱音さんが舌打ちする。

 そうだった。母さんの刀『蒼天』は、連結刃に変化する機能があった。イメージとしてはBLEACHの蛇尾丸やなのはのレヴァンティ、シュランゲフォルム。

 一瞬で伸びた刃が朱音さんの鎌を絡めとる。

「っく!」

 朱音さんがすぐに鎌を離す。と同時に絡めた刃から炎が吹き出す。一歩遅れていたら腕を焼からていただろう。

 でも、まずいな。これで、朱音さんの武器がなくなった。となると接近戦に持ち込まれたら素手だとまずい。

 しかし、朱音さんはすぐに後ろに手を回して……背中の翼が展開した!

 中から出てきたのは、どう考えても収納スペースを無視した大きさのパイルバンカーと剣だ! どうなっとんの!?

「あれ、武器収納してんの!?」

 刹那くんとアルトちゃん以外のみんながびびる。

 そして、刹那くんが得意げな顔になった。

「まな。手前側の二本は中に空間拡張のための術式を入れて範囲は見た目の数十倍。いくつかの武器を格納できるようにしてあるぜ」

 すご! どんな技術力だよそれ。

 朱音さんが二つの武器で戦闘を続ける。比較的大きく、絡めとりづらいパイルバンカーを盾にして母さんの連結刃を防ぎ、剣で攻撃をする。

 いつの間にか、術は牽制にしか使ってない。って、あれ?

「あのさあ」

「ん、なに?」

 僕は何気なく刹那くんに聞いてみる。

「朱音さんって中距離戦が得意なんじゃなかったっけ?」

 それが疑問だ。今の朱音さん。どうみても、接近戦に持ち込もうとしている。その顔はすごく楽しそう。

 ああ、と刹那くんは思い出すように語る。

「あくまで得意だって。一芸特化じゃ状況が移りやすい戦場で命取りになるから接近戦もできるようじゃないと」

 なるほど。

 と、そこで、不穏な空気を感じてそちらに向き直る。母さんの刀が帯びている炎。その周りには帯電して、大気をバチバチ鳴らしている雷。

 げっ、あれは……

「雷炎……」

 兄さんが呟く。

 母さんが発生させた炎は大出力の炎に雷を加えて攻撃力を上げた雷炎と言うもの。普通の炎よりずっと威力がある。

 対して朱音さんもあれを使う。彼女の(たぶん)最強技スターダストインパクト。さらに、背中の翼が展開し魔力球の周りを回る。それが魔力球の輝きを高める。

「しかも、こっちはスターダストフルインパクト!?」

 なんかおっかなさげな名前だし。

 まあ、なんつうか……

「あの二つがぶつかったらヤバいよね」

 僕は額から汗が流れるのを感じた。

 雷炎は雷をともなった炎が空高く伸びている。朱音さんの光球も眩しくて直視できない。

「そうだな」

 刹那くんも頷く。その額には大粒の汗。

「確かにヤバい」

 兄さんも引き気味だ。

 みんなもヤバい雰囲気を感じたのか落ち着きがない。今にも逃げ出しそうな雰囲気だ。

 逃げ出さないのはきっと本能的にここが安全だと感じているからだろう。

 まあ、若干安全程度だが。

 そこで刹那くんが結界の術式を書き換え始める。

「俺は結界の維持を優先するから防御は頼んだ」

 めんどそうに呆れた感じで刹那くんが頼んできた。

 あの二人は今、絶対僕らギャラリーのことを忘れてるよな。

「了解」

 僕が前に出る。

 先の戦闘で消耗しているとか甘えを言ってられないなあ。

 苦笑しながら僕は悲鳴を上げる体をねじ伏せて刀を抜く。イヴがとんっと刃の上に乗った。

「イヴ」

「合点承知!」

 イヴが刀の中に入り、刀身が淡い光に包まれる。

 僕は額に刀の峰を押し付ける。

「四ノ太刀『顕現』」

 体が光に包まれた一瞬後には体が作り替えらる。金髪碧眼の美女、イヴの姿。

 すぐに神力を練って術式を展開。

「神術『聖母の箱庭』!」

 防御結界が展開される。

 これは、一定範囲内にイヴの特性を広げることでほぼ完全に術による攻撃を防ぎきれる。

 まあ、強力な分弱点は目白押し。大量の神力を使うから合体時間は短くなるし、使ってる間、維持を続けるためにそこから動くわけにもいかない。だから、接近されて斬られたら一貫の終わりなのだ。

 そして、二人の術が完成して、

「全力全開!」

 母さんが雷炎を纏う刀を振りかぶる。

「一撃入魂!」

 朱音さんがを剣を振りかぶる。

 羽の回転速度が上がった。

 来る!

 僕らは身を固める。

「疾風炎雷!!」

 母さんが刀を振り下ろす。

 その切っ先から爆発のような雷炎が走る。

「スターダストフルバースト!!」

 朱音さんの剣が振り下ろされる。

 魔力球が炸裂。視界が閃光に満たされる。

 二人の奥義がぶつかり合い……轟音!

 結界内の木々が折れ、砕け、吹き飛んだ。


 爆発が治まると、森はなく、クレーターができていた。

 何ちゅう力だよ。見学だけで命懸けかい。さすがはS級の戦いだ。

 合体を解いて元の姿に戻る。一度変身したため、筋肉痛も治っていた。ちょっとラッキー。

 と、母さんと朱音さんがこっちに歩いてくる。

「やっほー」

 母さんは朗らかに笑っている。

 対して朱音さんは苦笑。

「負けちゃったよ」

 朱音さんが小さく呟いた。

 負けた? 最後の一撃は互角だったと思うけど?

「最後の最後。術を使った直後に後ろに回り込まれてて、気がついたら首筋に刀を突きつけられてたよ」

 あの爆発の中を動いてた? 母さんすごすぎ……

「あ、朱音さん……その腕……」

 舞さんがふるふると指を朱音さんに向ける。僕もそっちを見て、

「え?」

 思考が止まる。

 そこは半分抉れて中が見えていた。

 しかし、赤黒い液体が流れるそこから露出するのは赤い肉でも、血でも、白い骨でもなかった。千切れかけ火花を散らすコード、鋼の骨格。

「ロ、ロボット?」

 ハルが全員の意見を代弁する。

 朱音さんは困ったように頬をかく。

「できれば、アンドロイドって言って欲しいな」

 朱音さんがあははと笑う。

 いや、違うでしょ。

「女性ですからガイノイドでは?」

 僕がツッコミをいれる。

 となりで舞さんが「細かいね」と呟いていた。

 刹那くんがこきこきと肩をならしながら立ち上がる。

「朱音は、前に俺が自衛隊の人外部門に依頼されて造った機械生命体の試作体だよ」

 いや、そんなあっさり言わないでよ。どう考えても今の時代にそぐわないほどの完成度ですよ?

 しかし、それで今までの疑問の一部がようやく解決した。

 たぶん、朱音さんから感じた違和感の正体。それは生きてる人間なら発する匂いの一部が欠けているからなのだろう。よくできているんだろうけど完全には無理であったのだろう。

 ほら、ターミネーターもそういうのがないから、犬が吠えまくるって設定あったし。

「朱音は試作一号機。正式に採用されていたら89式機械天使『朱音』になってたんだけど、コストが馬鹿高くなっちまって結局お蔵入り。しかたなく俺が引き取ったんだよ」

 ふーん、そういえば聞いた事あるな、対人外用兵器を造ったものの問題があって採用されなかったって。

「まあ、できればこの事はあまり知られたくなかったから黙ってたんだけどね」

 朱音さんがさびしげに笑った。

 なんか、あったのかなあ……


鈴:「お知らせがありまーす!」

刹:「いきなりなんだが……なんだ?」

鈴:「狐火に続く投稿小説第二弾を出す事にしましたー!」

刹:「そう、おめでとー(棒読み)」

鈴:「高校時代に作ってみたものを先日発掘してコメディーにしてみようと思い至って作りなおしてみました」

刹:「短絡的だなあ。狐火は大丈夫なのか? どうせなら俺が主人公のを仕立て直せ」

鈴:「さりげに自分の欲求入れてたけどそこは無視して、まあ、交互にやるつもり」

刹:「ちゃんとやれよー。初心者だからってちゃんとやらないとな」

鈴:「OK、しっかりやるよ」

刹:「と、もう時間か……それじゃあ」

鈴:「この番組は、退魔士広報宣伝局と」

刹:「常磐学園生徒会の提供でお送りいたしました」

鈴&刹:「「それではみなさま、よい一日を」」





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