第三十七話 アルト登場!
「ええ? な、なんで?」
と、そこでハルが僕らの方を見てるのに気づいた。
あ、そうか。今、イヴは打撃のために神力を優先したから、ハルたちにも見えるようになっちゃったのか。
「なんで、お姉さんが小さくなってるの?!」
そういえば、ハルには姉さんってことで誤魔化してたっけ。
すると、イヴは立ち上がった。
「ごめんねハル。あれはウソ」
悪びれた感じをさせずにイヴはぺろりと舌を出す。
そして、一礼。
「改めてこんにちは。私は木霊家と共にある聖霊イヴ。今後ともよろしくね」
イヴは満面の笑みでそう言ったが、ハルは不思議そうに首を捻る。ぴょこんとポニーテールも揺れた。
「この前は私と同じくらいの背でしたよね?」
うわ、一番聞かれたくない事を。
イヴはあはは、と笑って、
「あの時は空狐の体を借りてたからね」
なんだか嫌な視線を感じる。
僕はそっぽをむいた。そして、
「おかま?」
ハルがぽつりと呟く。
だああああ! 一番言われたくない事を!!
「違う! 僕は好きでやってるんじゃない! イヴに頼まれたからやったんだ!!」
立ち上がって猛抗議。
ハルは「そう……」と言って目の前の料理に視線を戻した。
僕は釈然としないまま座りなおす。
と、刹那くんが「そろそろかな?」と言って襖を見る。
? もしかしてまだ誰か来るのかな?
と、そこでタイミングを見計らったように小さな女の子が現れた。
歳はたぶん十歳に届くか届かないかくらいかな? ふりふりのワンピースを着こなして、綺麗な金髪とルビーのように澄んだ紅色の眼をしている。にこにこと笑っている顔は愛らしくて思わずかわいいといってしまいそう。
女の子は朱音さんを見ると満面の笑顔で。
「あかねおねーちゃーん!!」
と抱きついた。
朱音さんもうれしそうに微笑みながら女の子を抱きしめる。
「久し振りアルトちゃん。圭一は元気?」
「うん! ママも元気だよ」
元気に頷くアルトちゃん。
しかし……女なのに圭一って、変な名前。
そして、舞さんとハルに母さんが眼をきらきらさせていた。あー、この三人かわいい物好きだったっけ……
しばらくして朱音さんがその子の肩に手を置いてこっちに向いた。
「紹介するよ。私の友達の娘のアルト・テスタロッサ」
ぺこりとアルトちゃんが頭を下げる。
「アルトです。よろしくおねがいします」
その様子はひじょーに微笑ましいものなのだが……なんだろう。この子も刹那くんや朱音さんのような違和感を感じる。
すぐに舞さんとハルに母さんがアルトちゃんのそばに寄る。
「こんにちはアルトちゃん。わたしは倉田 舞です。よろしく〜」
熔けた笑顔で舞さんが自己紹介をする。
ハルも似たような顔だ。
「あたしはハルっていうの。よろしくね」
「私は木霊 月狐。よろしくアルトちゃん」
僕らもするべきだよな。
「木霊 空狐です。よろしく」
「秋山 龍馬。よろしく」
男側も名乗る。
それからアルトちゃんを囲んでいた舞さんたちが質問をし始めた。
「ねえ、アルトちゃんって何歳?」
舞さんの質問だ。楽しそうににこにこしている。
アルトちゃんはうーん、と考えてから。
「十五歳で〜す」
……はい!?
刹那くんと朱音さんを除いた全員が眼を見開く。
渦中の人物であるアルトちゃんはまだにこにこしている。
「ごめんなさい。まちがえちゃった〜」
えへへ、とアルトちゃんが笑う。
ほ、驚かせないでよ。
僕は胸を撫で下ろす。
「この前誕生日だったから十六歳〜」
アルトちゃんがえへへと頭をかく。
まあ、いるよねそういう人。かくいう僕もそうだし。
そこでパンパンと手を叩く音。そっちを見ると刹那くんが立っていた。
「さてっと、全員揃ったことだし、自己紹介はこの辺にして」
刹那くんが仕切りなおすと、すぐにみんな席につく。
みんな楽しみにしてたんだね。
「それでは……」
刹那くんがパンと手を合わせる。
それにみんなが続いた。
「「「「いただきます!」」」」
全員の声が部屋に響いた。
新キャラ登場です。
月狐と銀狐は温泉編終わったらしばらく登場しませんが、彼女はレギュラー入りです。