第三十六話 キツネママ参上!(兄貴もいるよ)
食事の時間になってそれなりに広い部屋に案内される。たぶん、僕の部屋二つ分の広さを持っているだろう。畳の敷かれた和室で真ん中に長いテーブルがあった。奥には掛け軸もかけられていて、旅館に来たんだなあって気になれる。
朱音さんが六人みんなが友達だから一緒にしてくれるよう頼んだため、みんな同じ部屋だ。
「「「おお!」」」
「「「わあ!」」」
部屋に入る前から匂いで予想していたけど色とりどりのご馳走がテーブルに並んでいた。
刺身に天ぷら、ぐつぐつ煮込んでいる鍋などなど。あ、やっべ、よっだれ〜。
すぐにみんな席について、いただきますと……
「ちょっと待って」
そこで刹那くんに止められる。
ハルと龍馬と僕は少し不満げに刹那くんを睨む。
「刹那〜」
「なんで〜」
「止めるの〜?」
龍馬、ハル、僕の順番で文句を言う。
刹那くんは苦笑いして頬をかく。
「ごめん。もうすぐ俺たちの友達がくるから少し待ってくれ」
ふーん。刹那くんの友達が?
どんな人かな?
と、噂をすればなんとやら、襖が開く。
「こーんばーんは!! みんな元気だった?」
そう言って現れたのは……
「か、母さん!?」
「月狐さん!?」
「おばさん!?」
「月狐姉さん!?」
みんな突然現れた人物にびっくりする。
灰色の腰まで届く長い髪と紅い眼の妖狐。相変わらずひらひらふりふりのレースを多用した服が似合う人で、やっぱり二児の親にとても見えない。
母さんは僕らを驚かせたのが嬉しいのか、尻尾をくねらせている。
僕と同じで尻尾は幻術で隠してるんだろうけど、狐の眼には簡単な幻術なら見抜く能力があるから、まるで隠してないように見えてしまいハラハラしてしまう。
付け足すと月狐姉さんと呼んだのは龍馬だ。
子供の頃、見た目が若いから(今の僕と同い年にも見える)僕の姉さんだと思ってたらしい。
まさか、母さんが来るなんて……
!?
直感にしたがって頭を左に振る。と、右耳の横で風を斬る気配がして……
舞さんと頭をぶつけてしまった。
「〜〜!!」
「った〜〜!!」
僕は後頭部を押さえる。
たぶん舞さんも頭を押さえてるのかな。
「七十点。惜しかったよ」
そう言っていきなりの襲撃者が姿を現す。どうやら姿を消す幻術『朔』で隠れてたようだ。
この声、こういうことをする人はあの人だ……
「ひ、久しぶり……兄さん」
「えっ? ぎ、銀さん?」
舞さんが痛そうな声で聞いてくる。
僕は痛む頭を押さえながらも、滲む視界で数年振りに会う兄さんを見る。
僕と母さんの灰色とは違い完全な銀髪と血のように紅い眼。髪は後ろで縛られていて、下に向いてるけどちょっとだけちょんまげに似ている。その手には、鞘に入ったままの刀。たぶんこれで叩こうとしてたんだろう。あぶねーよ!
襲撃が失敗したけど僕にダメージを与えられたのが嬉しいのか兄さんは笑っていた。久しぶりだけど、さっそく殴りたくなる。
「久しぶり。空狐」
と、そこで頭の上に座ってたイヴがトンッと頭を蹴って、兄さんに飛びつく。
「ぎーん!」
「やあ、イヴ」
兄さんは爽やかにイヴに笑いかけて……イヴの眼が光った!
兄さんが思いっきりアゴを殴られる。
悲鳴を上げる暇もなく兄さんは後ろに投げ出された。
地面に大の字で倒れて、
「ワン、ツー、スリー、フォー……」
すぐに刹那くんがカウントを取る。
「ナイン、テン! イヴの勝ち!!」
カンカンカンとゴングが高らかに響いた! (気がした!)
刹那くんは勝者であるイヴの腕を掴んで高く掲げる。
「って、何でいきなり殴るんだよ!?」
すぐに兄さんが復活した。
「「ちっ、しぶとい」」
「イヴ! 空狐まで?!」
兄さんが嘆くけど、ハッキリ言っていきなり襲撃してきた相手を心配する気はさらさらなかった。
「あのねえ銀?」
妖しい微笑みをたたえながらイヴが兄さんの頬に触れる。
う、一瞬くらってきた。
「私はねさっきまで空狐の頭の上に座っていたんだよ?」
つまりね……とイヴが言葉を区切る。
そして、思いっきり息を吸って、
「当たってたら私が大怪我するところだったんだよ!!」
兄さんか耳を押さえて歯を食いしばる。まあ、あんな大声なら耳が痛くなるもんな。
一方、イヴは幾分すっきりしたのか笑顔で僕の肩の上に座り直した。
鈴:「月狐おめでとー。やっと本編に出れたね」
月:「とっても嬉しいわー♪」
刹:「でも、まだまだ新キャラ出んだよな」
鈴:「怒涛の四連撃。内、レギュラー入りは二人」
朱&?「たのしみにしててくださーい!」
鈴:「まだ出るなや!」
次の回でさらに二人追加です。